発売日: 1996年10月29日
ジャンル: ドリームポップ、オルタナティブロック、サイケデリックフォーク
『Among My Swan』は、Mazzy Starの3枚目のアルバムであり、バンドのキャリアにおける重要な転換点となった作品だ。このアルバムは、前作『So Tonight That I Might See』のサイケデリックでドリーミーなサウンドを引き継ぎつつ、より内省的でフォーク調の楽曲が増えている。ホープ・サンドヴァルの控えめで儚げなボーカルと、デヴィッド・ロバックのエコーがかったギターが織り成す、静かで美しいサウンドスケープが特徴的。アルバム全体を通して、シンプルなアレンジとメランコリックなムードが支配しており、Mazzy Starならではの夢幻的な世界観が展開されている。
各曲ごとの解説:
- Disappear
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、ゆったりとしたギターのリフとホープ・サンドヴァルの囁くようなボーカルが印象的。サイケデリックな雰囲気と内省的な歌詞が、リスナーをすぐにMazzy Starの世界へと引き込む。 - Flowers in December
アルバムのリードシングルで、シンプルなアコースティックギターとホープの切ないボーカルが心に残る一曲。恋愛と失望をテーマにした歌詞が美しく、控えめなアレンジが感情を際立たせている。フォーク的な要素が強調された、Mazzy Starのバラードの中でも特に人気の高い楽曲だ。 - Rhymes of an Hour
この曲は、スローテンポで静かなメロディが特徴で、ホープのボーカルがゆっくりと感情を溶かすように響く。シンプルなギターパターンとエコーの効いたサウンドスケープが幻想的な雰囲気を作り出している。 - Cry, Cry
ブルースの影響が感じられる曲で、ホープ・サンドヴァルの低く抑えたボーカルが印象的。曲全体に漂う哀愁と、シンプルなギターリフが感情を強調し、アルバムの中でも特に内省的な楽曲だ。 - Take Everything
サイケデリックなギターとホープの冷静なボーカルが絡み合う、少しダークな雰囲気の楽曲。浮遊感のあるサウンドが、彼女の静かな怒りや失望を巧みに表現しており、アルバムの中でも深みを持つトラックとなっている。 - Still Cold
メランコリックで静かなトラックで、Mazzy Starの特徴的なミニマルなサウンドと詩的な歌詞が際立つ。ホープの声が曲全体を包み込み、リスナーを静かな感情の旅へと誘う。抑制された感情表現が美しい。 - All Your Sisters
暗くて重いサウンドが特徴の曲で、サイケデリックロックとフォークの要素が融合している。デヴィッド・ロバックのギターが強く印象に残り、ホープのボーカルが楽曲に冷たい美しさを加えている。 - I’ve Been Let Down
この曲は、アルバムの中でも特にフォークの影響が強く、アコースティックギターとホープの柔らかいボーカルがシンプルに絡み合っている。タイトル通り、失望や痛みをテーマにした歌詞が心に残る。 - Roseblood
「Roseblood」は、ギターのリフが繊細で美しく、ホープのボーカルが曲全体を包み込むように優しく響く。メロディはシンプルだが、繰り返しのリズムと浮遊感のあるサウンドスケープが独特の余韻を生み出している。 - Happy
淡々としたギターと、ホープの感情を抑えたボーカルが中心のこの曲は、アルバム全体のメランコリックなムードを強調するトラック。皮肉なタイトルとは裏腹に、曲のトーンはどこか憂鬱で、冷たさが漂っている。 - Umbilical
静かで、どこか夢幻的な雰囲気が漂うこの曲は、アルバムの中でも特に深い瞑想的なムードを持つ。ホープの声は、エコーに包まれ、リスナーを静かに引き込む。 - Look on Down from the Bridge
アルバムの最後を締めくくる曲で、シンプルなピアノとギターの伴奏に、ホープ・サンドヴァルの静かなボーカルが重なる。別れと喪失をテーマにした歌詞が美しく、アルバム全体を静かに締めくくる感動的なトラックだ。
アルバム総評:
『Among My Swan』は、Mazzy Starのこれまでの作品の中でも特にフォーク的な要素が強く、シンプルでメランコリックなアレンジが印象的なアルバムだ。ホープ・サンドヴァルの囁くようなボーカルと、デヴィッド・ロバックの幻想的なギターが、夢幻的で内省的なサウンドスケープを作り出している。特に「Flowers in December」や「Look on Down from the Bridge」といった楽曲は、Mazzy Starの持つ美しさと儚さを象徴しており、聴き手に深い感情的な余韻を残す。全体的に控えめで静かなトーンが続き、アルバム全体を通じて一貫したムードが漂う作品となっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- She Hangs Brightly by Mazzy Star
Mazzy Starのデビューアルバムで、ドリームポップとサイケデリックロックの要素が色濃く反映された作品。『Among My Swan』の静けさとメランコリーに通じる部分が多い。 - Moon Pix by Cat Power
内省的でフォーク色の強いアルバムで、感情豊かなボーカルとシンプルなギターが特徴。Mazzy Starのファンにとっても共感できるメランコリックな作品。 - The Trinity Session by Cowboy Junkies
フォークとカントリーの要素が融合したアルバムで、スローテンポで落ち着いたサウンドが特徴。Mazzy Starのゆったりとしたムードを好むリスナーにおすすめ。 - Horses by Patti Smith
詩的でメランコリックな雰囲気を持つアルバムで、内省的なリリックとシンプルなアレンジが印象的。Mazzy Starの感情表現に共通するものが感じられる。 - Strange Mercy by St. Vincent
ダークで幻想的なサウンドスケープと、内省的なテーマを探求したアルバム。『Among My Swan』のメランコリックなムードを好むリスナーにおすすめの一枚。
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