発売日: 1970年9月23日
ジャンル: ラテンロック、ブルースロック、ジャズロック
Santanaの2枚目のアルバム『Abraxas』は、バンドの代表作としてだけでなく、ラテンロックというジャンルを確立し、世界中のリスナーに影響を与えた名盤だ。カルロス・サンタナの情熱的なギターワーク、リズムセクションの複雑なラテンパーカッション、そしてブルースやジャズの要素が見事に融合した本作は、彼らの音楽的な進化を証明する作品である。
アルバムのタイトル「Abraxas」は、ヘルマン・ヘッセの小説『デミアン』から取られており、善と悪、創造と破壊などの相反する概念を統合する存在を意味している。この哲学的なテーマは、アルバム全体の音楽性やエネルギーにも反映されており、躍動感と内省的な要素が共存するサウンドスケープを生み出している。
ウッドストック後の熱狂を受け、サンタナはこのアルバムで「Black Magic Woman」や「Oye Como Va」といった代表曲を生み出し、ラテンロックの金字塔として音楽史にその名を刻んだ。
各曲解説
1. Singing Winds, Crying Beasts
アルバムの幕開けを飾るインストゥルメンタル。ミステリアスなパーカッションと幻想的なキーボードが、アルバム全体の神秘的な雰囲気をセットアップする。
2. Black Magic Woman/Gypsy Queen
ピーター・グリーン(フリートウッド・マック)の楽曲をサンタナ流にアレンジした名曲。ラテンリズムとサンタナの情熱的なギターソロが融合し、オリジナルを超えた魅力を持つ。また、「Gypsy Queen」では、ジャズギタリストのガボール・ザボにインスパイアされたフレーズが見事に展開される。
3. Oye Como Va
ティト・プエンテのクラシックを大胆にロックアレンジしたトラック。ラテン音楽のエッセンスが詰まった楽曲で、パーカッションとオルガンのリズムがダンサブルな高揚感を生む。今なおパーティーやラテン音楽のシーンで愛される一曲。
4. Incident at Neshabur
ジャズとロックが融合した複雑なインストゥルメンタルで、バンドの実力が際立つ楽曲。即興的なセクションとスリリングな展開が聴きどころ。
5. Se Acabó
スペイン語の歌詞をフィーチャーしたトラックで、ラテン音楽への深いリスペクトが感じられる。リズミカルな演奏と情熱的なボーカルが耳に残る。
6. Mother’s Daughter
アルバムの中ではロック色が強い一曲。ギターリフと歌詞が直球でエネルギッシュな印象を与える。
7. Samba Pa Ti
サンタナのギターワークが存分に発揮されたインストゥルメンタルの名曲。抒情的なメロディと感情的なソロが心に響き、バラードとしても広く愛されている。
8. Hope You’re Feeling Better
サイケデリックなオルガンと攻撃的なボーカルが印象的なトラック。ブルースロックの影響が色濃く表れている。
9. El Nicoya
陽気なラテンリズムでアルバムを締めくくる短いトラック。アルバム全体のテーマを軽やかに振り返るような楽曲だ。
アルバム総評
『Abraxas』は、サンタナが音楽的に成熟し、ラテン音楽とロック、ブルース、ジャズを見事に融合させたアルバムだ。「Black Magic Woman」や「Oye Como Va」といった代表曲をはじめ、アルバム全体が多様なジャンルを探索しつつも一貫したエネルギーを持っている。カルロス・サンタナのギタープレイとバンドの息の合った演奏は、音楽の枠を超えた普遍的な魅力を持っており、ラテンロックの礎を築いた名盤として今なお輝き続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Santana by Santana
デビューアルバムで、ラテンロックの原点ともいえる作品。エネルギッシュな演奏とジャンル横断的なサウンドが魅力。
Supernatural by Santana
1999年にリリースされたグラミー賞受賞アルバム。「Smooth」などのヒット曲を収録し、モダンなサウンドを展開。
Bitches Brew by Miles Davis
ジャズとロックの融合を追求した革命的な作品で、サンタナが影響を受けた一枚。
Disraeli Gears by Cream
ブルースロックの名盤で、ギターワークとジャンルを超えたサウンドが『Abraxas』と共鳴する。
Led Zeppelin II by Led Zeppelin
ハードロックの名盤で、ギターリフの魅力とエネルギーがサンタナファンにも響く一枚。
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