発売日: 1996年7月2日
ジャンル: メロディック・ハードコア、パンクロック
政治と個人の葛藤を鋭く描いた、Good Riddanceの決定的名作
1996年、カリフォルニアのメロディック・ハードコアバンドGood Riddanceが放った2ndアルバムA Comprehensive Guide to Modern Rebellionは、バンドの代表作のひとつであり、90年代のメロディック・パンク／ハードコアの最重要作品のひとつに数えられる。本作は、デビューアルバムFor God and Country（1995年）の勢いをそのままに、よりダークで、より攻撃的なサウンドと、鋭い社会的メッセージを前面に押し出したアルバムとなっている。
本作の特徴は、政治的なテーマと個人的な葛藤のバランスだ。ボーカルの**ラス・ランキン（Russ Rankin）**は、社会不正、戦争、資本主義の欺瞞などを鋭く批判しながらも、個人の内面的な苦悩や、人間関係の問題についても歌っている。サウンド面では、前作よりもアグレッシブで、曲ごとの構成もより緻密になっている。速いテンポのハードコアパンクと、メロディアスなコーラスの融合が、このアルバムを特別なものにしている。
Good Riddanceは、Fat Wreck Chordsのメロディック・ハードコアシーンを代表するバンドのひとつだが、その中でも本作は特に強烈なインパクトを放っている。
全曲レビュー
1. Weight of the World
オープニングからスピード全開のナンバー。リフの鋭さとランキンの攻撃的なボーカルが特徴的で、まさにアルバムの幕開けにふさわしい。歌詞は、社会の不平等や抑圧についてのメッセージが込められており、バンドの思想が色濃く表れている。
2. Steps
疾走感のある楽曲ながら、どこか哀愁を感じさせるメロディが印象的。個人の選択と社会的プレッシャーについて歌われており、リスナーに深く響く内容となっている。
3. A Credit to His Gender
Good Riddanceの楽曲の中でも特に重要な一曲。女性の権利や社会のジェンダー問題をテーマにしたパンクソングで、当時のシーンでは非常にユニークな立ち位置を持っていた。怒りと哀しみが入り混じったランキンのボーカルが圧巻。
4. Trophy
ヘヴィなリフと、エモーショナルなボーカルが特徴の楽曲。メロディック・パンクの持つキャッチーさと、ハードコアの攻撃性を絶妙に融合させた一曲で、アルバムのハイライトのひとつ。
5. Up & Away
シンプルながらも力強いパンクロックナンバー。個人的な失敗や後悔をテーマにした歌詞が、リスナーの共感を呼ぶ。
6. Last Believer
メロディック・ハードコアの王道とも言える一曲。テンポの速いドラミングと、印象的なコーラスが特徴的で、Good Riddanceの持つエネルギーを存分に味わえる。
7. Static
ヘヴィなベースラインから始まり、次第にテンポが上がる楽曲。歌詞は、メディアの偏向報道や情報操作について批判しており、Good Riddanceの社会批判的な側面が強く出ている。
8. Favorite Son
ハードコア・パンクのスタイルを継承しながら、メロディを活かした楽曲。キャッチーなフックがありつつも、歌詞はかなりシリアスな内容。
9. West End Memorial
アルバムの中でも異色の楽曲。ミッドテンポで、より深みのある歌詞が印象的。Good Riddanceの音楽的な幅広さが感じられる一曲。
10. This Is the Light
ハードなギターリフとスピーディーな展開が特徴。アルバムの中でも特にパワフルな楽曲で、ライブでの盛り上がりも必至。
11. Bittersweet
メロディックな要素が強く、感情的なボーカルが際立つナンバー。アルバム全体の中で、一息つくような瞬間を提供する曲だ。
12. Token Idiot
痛烈な社会風刺が込められた楽曲。スピーディーなパンクサウンドと皮肉たっぷりの歌詞が印象的で、Good Riddanceの特徴がよく表れている。
13. Come Dancing
アルバムのラストを締めくくる楽曲。ダークなトーンを持ちながらも、希望を感じさせるようなメロディが印象的。Good Riddanceの音楽的な進化を示す一曲。
総評
A Comprehensive Guide to Modern Rebellionは、単なるパンクアルバムではなく、90年代の社会不安や個人の苦悩を鋭く切り取った作品である。Good Riddanceは、このアルバムを通じて、政治的メッセージを持つパンクが持つ可能性を拡張し、メロディック・ハードコアというジャンルを一段高いレベルへと押し上げた。
音楽的には、速いビート、鋭いギターリフ、エモーショナルなメロディが絶妙に組み合わさり、まさに90年代Fat Wreck Chordsサウンドの完成形といえるだろう。
特に、「A Credit to His Gender」や「Weight of the World」などの楽曲は、今聴いても色褪せることなく、現代社会にも通じるメッセージを持っている。社会的な怒りと、個人的な苦悩をパンクロックという形で昇華させた本作は、Good Riddanceのキャリアの中でも最も影響力のあるアルバムの一つだ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Bad Religion – Suffer（1988年）
メロディック・ハードコアの元祖的な作品。社会批判とキャッチーなメロディがGood Riddanceと共通する。 - Propagandhi – Less Talk, More Rock（1996年）
政治的なメッセージが強いパンクバンド。Good Riddanceの思想に共感するなら必聴。 - Pennywise – Full Circle（1997年）
メロディック・パンクの傑作。Good Riddanceの攻撃性とメロディアスな要素を併せ持つ。 - Strike Anywhere – Change is a Sound（2001年）
ポリティカル・パンクの名盤。Good Riddanceの精神を受け継ぐバンドの一つ。 - Rise Against – The Unraveling（2001年）
メロディック・ハードコアの進化形。Good Riddanceの影響を色濃く受けたサウンド。
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