発売日: 2019年6月21日
ジャンル: エレクトロポップ、シンセポップ、ダンスミュージック
Hot Chipの7作目のスタジオアルバム『A Bath Full of Ecstasy』は、これまでのキャリアを総括しつつ、新たな音楽的な方向性を示した一枚だ。本作では、彼らの代名詞であるエモーショナルでダンサブルなサウンドに加え、よりポップで洗練された要素が加わり、リスナーを新たな音楽体験へと誘う。
フランスのプロデューサー、フィリップ・ズダール（PhoenixやCassiusを手掛けた）と、リング・ゴー・スタールター（Kylie MinogueやRobynとの仕事で知られる）を迎え、ポップとエレクトロニカのバランスを絶妙に保ったサウンドが完成している。歌詞は愛、喪失、喜びといった普遍的なテーマを掘り下げ、感情的な深みを増している。アルバム全体を通して、ダンスフロアにぴったりのエネルギーと内省的な瞬間が交錯する。
以下、各トラックの詳細を解説する。
1. Melody of Love
アルバムのオープニングを飾るトラックで、高揚感のあるビートと美しいメロディが印象的。愛の力を歌った歌詞と、壮大なサウンドスケープが融合している。
2. Spell
ポップなメロディと軽快なリズムが特徴の一曲。恋愛の魔法をテーマにした歌詞が、楽曲の明るい雰囲気とマッチしている。
3. Bath Full of Ecstasy
アルバムのタイトル曲で、優雅なシンセサウンドと心地よいリズムが調和する。幸福感とメランコリーが同居するような深い感情が伝わる楽曲。
4. Echo
シンプルながらも中毒性のあるビートと繊細なメロディが融合した楽曲。記憶や感情が反響する様子を表現した歌詞が印象的だ。
5. Hungry Child
ダンサブルでエネルギッシュなトラックで、アルバムの中でも特にライブ映えする一曲。キャッチーなフックとファンキーなビートが特徴的。
6. Positive
内省的な歌詞と、穏やかなシンセトーンが際立つトラック。悲しみと希望の間で揺れる感情を、緻密なアレンジで表現している。
7. Why Does My Mind
ポップで爽やかなメロディが印象的な楽曲。シンプルなリズムと切ない歌詞が、リスナーに静かな感動を与える。
8. Clear Blue Skies
ミニマルなビートと夢のようなシンセサウンドが融合した楽曲。広がりのあるアレンジが、リスナーを包み込む。
9. No God
アルバムの締めくくりにふさわしいトラックで、宗教や信念についての内省的なテーマを描く。壮大なアレンジと静かな余韻が、心に深い印象を残す。
アルバム総評
『A Bath Full of Ecstasy』は、Hot Chipがこれまでのキャリアで培ったエレクトロポップの技法をさらに進化させた作品だ。ダンサブルなビートと感情的な歌詞が、アルバム全体を通してバランスよく配置され、聴き手に様々な感情を喚起させる。特に「Hungry Child」や「Melody of Love」のようなトラックは、ライブでも定番となるだろう。
また、プロデューサー陣の貢献により、よりポップで洗練されたサウンドが実現され、Hot Chipの音楽が新しいリスナー層にもアピールできる形になっている。本作は、バンドの音楽的成熟と創造性が発揮された傑作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Phoenix – Wolfgang Amadeus Phoenix
キャッチーなメロディと洗練されたサウンドが、『A Bath Full of Ecstasy』のポップな面に共通する。
Robyn – Honey
感情的で内省的な歌詞とダンサブルなビートが、Hot Chipの最新作と響き合う。
Metronomy – Summer 08
ポップでエレクトロニックなアプローチが、『A Bath Full of Ecstasy』の雰囲気に似ている。
Caribou – Suddenly
温かみのあるエレクトロニックサウンドと感情的な深みが共通するアルバム。
LCD Soundsystem – American Dream
ダンスフロア向けのエネルギーと内省的な歌詞が融合した一枚で、Hot Chipの新しい方向性と共鳴する。
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