発売日: 1985年
ジャンル: サイケデリックロック、カウパンク、オルタナティブロック
『Up on the Sun』は、Meat Puppetsが1985年にリリースした3枚目のアルバムであり、前作『Meat Puppets II』で確立したサウンドをさらに洗練させ、彼らの音楽的進化を象徴する作品である。このアルバムでは、ハードコア・パンクの激しさをほとんど取り除き、サイケデリックロックやカントリー、フォークといった要素を大胆に組み合わせ、カラフルで夢のようなサウンドスケープを生み出している。
ボーカリスト兼ギタリストのカート・カークウッドの卓越したソングライティングが光るこのアルバムは、リズムセクションも非常にタイトで、楽曲全体に流れるグルーヴ感が心地よい。特にカートのギターリフと、クリス・カークウッドのベースラインが織りなす緻密なアンサンブルは、リスナーをリラックスした旅へと誘うような感覚を与える。
アルバムのテーマは「日常の中にある超越的な瞬間」を捉えることであり、その詩的な歌詞とサウンドは、開放感とノスタルジーを同時に喚起する。メロディアスで親しみやすい楽曲が並ぶ一方、サイケデリックな即興性も健在で、聴くたびに新しい発見がある。『Up on the Sun』は、Meat Puppetsの代表作として評価されるだけでなく、オルタナティブロック全盛期の基礎を築いた重要な一枚である。
1. Up on the Sun
アルバムのタイトル曲であり、オープニングを飾るこの楽曲は、輝くようなギターリフとリラックスしたテンポが特徴だ。歌詞は、太陽の光に包まれた解放感と、心の静寂を描いている。カートのボーカルは優しく、まるで穏やかな日差しに身を委ねるような感覚をリスナーに与える。
2. Maiden’s Milk
明るいカントリー調のメロディが心地よく、軽快なギターリフが耳に残る楽曲。クリス・カークウッドの遊び心あふれるベースラインが曲全体にリズムの躍動感をもたらしている。軽やかなサウンドとは裏腹に、歌詞には皮肉が効いている。
3. Away
穏やかなイントロから徐々に盛り上がる構成が印象的な一曲。歌詞には、束縛からの解放や旅立ちをテーマにしたメッセージが込められている。サイケデリックなギターソロが曲の終盤に展開され、浮遊感を高めている。
4. Animal Kingdom
ファンキーなベースラインが楽曲を牽引するユニークな一曲。動物たちが織り成す世界を比喩的に描いた歌詞は、どこか牧歌的でありながらも哲学的だ。軽快なリズムとキャッチーなメロディが魅力的。
5. Hot Pink
疾走感のあるギターリフとリズムが特徴的なインストゥルメンタル曲。曲の短さにもかかわらず、エネルギーとユーモアが詰まっており、アルバムの中でアクセントとなる一曲だ。
6. Swimming Ground
牧歌的な雰囲気を持つ楽曲で、歌詞には自然との一体感が描かれている。カートの柔らかい歌声とギターリフが調和し、リスナーに穏やかな風景を思い起こさせる。夏の午後を思わせる爽やかな一曲。
7. Buckethead
ポップなメロディとリズミカルな演奏が楽しい一曲。歌詞の奇妙なイメージは、カート・カークウッドの独創性を感じさせる。軽快でありながら、どこかノスタルジックな感覚を呼び起こす。
8. Enchanted Porkfist
サイケデリックなムードが漂うインストゥルメンタルで、複雑なギターラインとリズムの変化が魅力的だ。この曲は、アルバム全体の流れを中断することなく、聴き手をさらなる音楽的な冒険へと誘う。
9. Seal Whales
柔らかいアルペジオが特徴的なスローテンポの楽曲。歌詞は、海の生物を通じて、自然界の美しさや神秘を描いている。シンプルながらも深い余韻を残す一曲。
10. Two Rivers
フォークの要素が強く感じられる楽曲で、流れるようなギターのリフとクリスの穏やかなベースラインが調和している。歌詞は、交わる二つの川をメタファーに、人間関係や選択について語っている。
11. Creator
アルバムの中でも特にサイケデリックな一曲。ゆったりとしたリズムの中でギターが自由に展開し、終始夢幻的な雰囲気が漂う。聴き手を現実から切り離し、別世界へと誘うような楽曲だ。
12. Mother American Marshmallow
軽快でポップなメロディが楽しい一曲。歌詞には皮肉やユーモアが含まれており、バンドの遊び心が伝わってくる。明るいサウンドの中にもどこか感傷的な響きがある。
13. Sunrise
アルバムのラストを飾る壮大な楽曲。ゆったりとしたテンポで始まり、徐々に感情が高まる構成が印象的だ。夜明けの情景を描いた詩的な歌詞とサウンドが美しく、アルバムを穏やかに締めくくる。
アルバム総評
『Up on the Sun』は、Meat Puppetsがサイケデリックロックやフォーク、カントリーの要素を巧みに取り入れ、ハードコア・パンクの影響を脱して新しい音楽的地平を切り開いた作品である。明るく牧歌的なサウンドが全体を包み込みながらも、深みのある歌詞や複雑な楽器のアレンジが聴き手を飽きさせない。メロディアスで親しみやすいが、同時に挑戦的なこのアルバムは、バンドのキャリアを代表する一枚として、多くのリスナーに影響を与え続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Green Mind by Dinosaur Jr.
ギター中心のメロディアスなサウンドが共通し、牧歌的な雰囲気が『Up on the Sun』と似ている。
Surfer Rosa by Pixies
ノスタルジックなメロディと自由奔放なアレンジが共通するオルタナティブロックの名盤。
Automatic for the People by R.E.M.
美しいアコースティックサウンドと詩的な歌詞が共通点。穏やかなアルバムを好むリスナーにおすすめ。
Sweet Oblivion by Screaming Trees
サイケデリックとフォークの融合が特徴で、『Up on the Sun』のファンに響く作品。
Desert Sessions Vol. 3 & 4 by Josh Homme and Friends
カントリーとサイケデリックの要素が混ざり合った実験的な音楽が、Meat Puppetsのスピリットに近い。
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