発売日: 1984年
ジャンル: カウパンク、オルタナティブロック
『Meat Puppets II』は、Meat Puppetsが1984年にリリースした2枚目のアルバムであり、カウパンク（カントリーとパンクの融合）のジャンルを代表する作品として知られている。このアルバムでは、デビュー作の荒々しいハードコア・パンクのエネルギーを保ちながらも、よりメロディックで感情的なサウンドに進化を遂げている。
前作でのノイズとスピード一辺倒のサウンドから一転して、カントリーやフォーク、サイケデリックといった要素を積極的に取り入れ、ジャンルを越えた音楽的冒険が繰り広げられる。この変化は、特にギタリスト兼ボーカリストのカート・カークウッドの作曲センスが大きく開花したことに起因している。また、録音にはDIY的なアプローチが取られたことで、ラフな質感を残しつつも、各楽器の音がクリアに引き立っている点が印象的だ。
このアルバムの重要性は、単なるパンクの枠を超えた表現力にあり、後のオルタナティブロックやグランジの台頭にも大きな影響を与えた。特にNirvanaのカート・コバーンが『Meat Puppets II』を愛聴し、「Lake of Fire」や「Plateau」といった楽曲を「MTV Unplugged」でカバーしたことは有名だ。
1. Split Myself in Two
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、パンチの効いたギターリフとカートの独特なボーカルが印象的だ。カントリーのリズムとパンクの疾走感が絶妙に融合し、「自分を二つに引き裂く」という歌詞が激しい感情を反映している。
2. Magic Toy Missing
この曲はミッドテンポで進行し、不気味な雰囲気を醸し出している。サイケデリックなギターとルーズなリズムセクションが、奇妙な魅力を生み出している。歌詞には寓話的な要素が含まれ、聴き手の想像力を刺激する。
3. Lost
カントリーフォーク的なギターラインが心地よく響く楽曲。タイトル通り、「迷子」になる感覚が歌詞と音楽に表現されている。カートの歌声にはどこか疲れたような憂いがあり、物語性を感じさせる一曲だ。
4. Plateau
アルバムの中でも特に有名な楽曲で、後にNirvanaがカバーしたことでも知られる。アコースティックギターを主体としたシンプルなアレンジだが、歌詞には深い哲学的な意味が込められている。静かでありながら、強い存在感を放つ。
5. Aurora Borealis
インストゥルメンタル曲で、幻想的な雰囲気が漂う。北極光（オーロラ）を思わせるようなサウンドスケープは、アルバム全体の多様性を象徴している。
6. We’re Here
アップテンポのこの曲は、明るいカントリーロックの要素が強く、アルバム中で比較的軽快な一曲。ポップなメロディが特徴で、Meat Puppetsの遊び心を感じさせる。
7. Climbing
アコースティックギターが中心のこの曲は、フォークに近いシンプルなアレンジが特徴だ。歌詞には自己成長や挑戦といったポジティブなメッセージが込められている。
8. New Gods
激しいギターリフと不協和音が絡み合うエネルギッシュな一曲。歌詞では社会や権力への疑問が投げかけられ、Meat Puppetsの反骨精神が感じられる。
9. Oh, Me
「Plateau」と並ぶアルバムの名曲で、Nirvanaもカバーしたことで広く知られる。アコースティックギターの温かみのあるサウンドと、控えめながら感情的なボーカルが絶妙に調和している。歌詞には自己発見と内面的な問いが反映されており、リスナーを深い思索へと誘う。
10. Lake of Fire
アルバムの中でも特に暗く、ドラマチックな雰囲気を持つ楽曲。「人は死んだらどこへ行くのか？」という問いを投げかける歌詞が印象的で、悲しみと希望が入り混じった独特の感情を呼び起こす。サビのコーラスが特に力強い。
11. I’m a Mindless Idiot
スローでメランコリックな楽曲。タイトルに反して、美しいギターラインが中心で、アルバムの中でも特に感傷的な一曲だ。歌詞には諦念と再生が織り込まれている。
12. The Whistling Song
アルバムを締めくくる楽曲で、軽快なホイッスルが特徴的だ。陽気な雰囲気が漂い、アルバム全体の旅を楽観的に終わらせるような構成になっている。
アルバム総評
『Meat Puppets II』は、ジャンルを越えた音楽的な多様性と深い感情的な表現力を持つ作品である。ハードコア・パンクから始まり、フォークやカントリー、サイケデリックといった要素を大胆に取り入れたこのアルバムは、当時の音楽シーンにおいて革新的な挑戦だった。その影響力は計り知れず、現在でもオルタナティブロックの歴史における重要作として語り継がれている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
MTV Unplugged in New York by Nirvana
『Meat Puppets II』の影響が色濃く反映された名作ライブアルバム。「Plateau」や「Lake of Fire」のカバーが収録されている。
Double Nickels on the Dime by Minutemen
カントリーやファンクを取り入れたポストパンクの名盤。ジャンルを越えた自由なアプローチが共通点。
Surfer Rosa by Pixies
ノイズとメロディの融合が特徴で、Meat Puppets IIの多様性に共鳴する作品。
Desertshore by Nico
サイケデリックで内省的な要素が『Meat Puppets II』と共通し、美しいギターと感情的なボーカルが魅力。
Automatic for the People by R.E.M.
フォークロックとオルタナティブの融合を探求した名作。感情的な深みと広がりが似ている。
コメント