
発売日:2020年2月7日
ジャンル:シンセポップ、エレクトロポップ、ニュー・ディスコ、ダンス・ポップ、インディー・ポップ
概要
La Rouxの『Supervision』は、2020年に発表された通算3作目のスタジオ・アルバムであり、Elly JacksonがLa Rouxという名義をほぼ単独のソロ・プロジェクトとして再定義した作品である。2009年のデビュー作『La Roux』は、「Bulletproof」「In for the Kill」などのヒットによって、2000年代末のエレクトロポップ・リバイバルを代表する作品となった。その後、2014年の『Trouble in Paradise』では、80年代シンセポップやニュー・ウェイヴの硬質な質感から、よりファンク、ディスコ、ソフト・ロック、AOR的な滑らかさへと音楽性を拡張した。『Supervision』は、その流れをさらに簡潔で明るい方向へ進めたアルバムである。
本作の背景には、La Rouxというプロジェクトの大きな変化がある。初期La Rouxは、Elly JacksonとBen Langmaidによるデュオとして始まり、鋭いシンセ・サウンド、80年代的な音色、Jacksonの中性的で高く伸びる声によって強い個性を確立した。しかし『Trouble in Paradise』期以降、Langmaidとの共同体制は解消され、Elly JacksonがLa Rouxの中心として活動するようになった。『Supervision』は、その意味で、La Rouxという名前を引き受け直すアルバムでもある。
タイトルの「Supervision」は、「監督」「見守り」「管理」といった意味を持つ。だが、本作では外部から管理されるというより、自分自身の視界を取り戻す、あるいは自分の音楽を自分で見渡すという意味合いが強い。『La Roux』の成功によるイメージの固定化、『Trouble in Paradise』の制作上の困難、そして長い沈黙を経て、Elly Jacksonはここで非常にシンプルで開かれたポップ・アルバムを作っている。複雑なコンセプトや過剰なプロダクションではなく、軽快なグルーヴ、明るいシンセ、すっきりしたメロディ、そして彼女の声の個性が中心に置かれる。
音楽的には、『Supervision』は1980年代のシンセポップ、ニュー・ディスコ、エレクトロ・ファンク、軽やかなダンス・ポップを基調としている。デビュー作にあった鋭く冷たいシンセの攻撃性は薄れ、代わりに温かく、乾いた、風通しのよいサウンドが前面に出ている。『Trouble in Paradise』で提示されたトロピカルでファンク的な方向性を継承しながら、本作ではさらに音数が整理され、曲ごとの構造も明快になっている。
ただし、本作は単なるレトロ趣味のアルバムではない。確かに、シンセの音色、ベースライン、リズムの処理には80年代的な感覚が強く、Prince、Eurythmics、Depeche Mode、Yazoo、The Human League、Scritti Politti、そしてChic以降のディスコ的な影響を感じることができる。しかしLa Rouxの音楽は、それらを単に再現するのではなく、現代のインディー・ポップ的な軽さと結びつけている。音は比較的薄く、過剰に巨大化しない。そこに、2020年代前後のポップとしての距離感がある。
歌詞面では、恋愛、欲望、距離、誤解、自由、自分らしさ、視線の回復がテーマとなる。『Supervision』は、深刻な内省を重く語るアルバムではないが、軽快な音の背後には、関係の中で自分を失わないこと、相手の期待に飲み込まれないこと、自分の判断を取り戻すことへの意識がある。Elly Jacksonの歌詞は、派手なドラマよりも、恋愛や人間関係における微妙な距離感を扱う。音楽の明るさと、歌詞に含まれる少し冷めた視線が、本作の魅力になっている。
La Rouxのキャリアにおいて『Supervision』は、商業的な大成功を狙った作品というより、自分のペースでポップを鳴らすための再出発のような作品である。デビュー作のような時代を代表する巨大なシングルはないが、アルバム全体には統一された軽快さがある。シンセポップの硬さ、ディスコのグルーヴ、インディー・ポップの親しみやすさが、非常にコンパクトにまとめられている。
日本のリスナーにとって本作は、80年代ポップへの親しみと現代的なダンス・ポップの聴きやすさを同時に味わえるアルバムである。派手なEDM的な盛り上がりや、重いベース・ミュージックの圧力ではなく、軽い身体の動き、明るいシンセの質感、少しノスタルジックなメロディを楽しむ作品である。『Supervision』は、La Rouxが過去の成功から距離を取り、よりリラックスした形で自分のポップ感覚を提示したアルバムといえる。
全曲レビュー
1. 21st Century
オープニング曲「21st Century」は、アルバムの幕開けとして非常に象徴的な楽曲である。タイトルは「21世紀」を意味するが、サウンドはむしろ1980年代シンセポップやエレクトロ・ファンクを強く想起させる。この過去と現在のズレが、La Rouxらしい魅力である。未来を歌いながら、音楽的にはレトロな質感を用いることで、現代のポップが常に過去のイメージと共存していることを示している。
音楽的には、明るいシンセ・リフと軽快なビートが中心である。曲は非常に風通しがよく、デビュー作の鋭いシンセの圧力よりも、軽やかなグルーヴを重視している。Elly Jacksonのヴォーカルは、相変わらず高く、やや中性的で、感情を過剰に込めすぎない。そのクールな声が、曲のポップさに少し距離を与えている。
歌詞では、現代的な恋愛や時代感覚が描かれる。21世紀という言葉は、技術や進歩だけでなく、関係の複雑化、自己表現の自由、そして過去の価値観からの脱出を示しているようにも響く。La Rouxの音楽には、常に「自分の立場を保つ」感覚があるが、この曲でも、時代の中で自分をどう見せ、どう守るかが背景にある。
「21st Century」は、『Supervision』全体の方向性をよく示している。重く深刻に始まるのではなく、軽やかに、明るく、しかし少し皮肉を含んで始まる。La Rouxが本作で目指した、踊れるが過剰ではないシンセポップの美学が、最初からはっきり表れている。
2. Do You Feel
「Do You Feel」は、タイトル通り「感じているのか」と問いかける楽曲であり、感情の確認、相手との距離、身体的な反応をテーマにしている。La Rouxの音楽における恋愛は、しばしば感情を全面的にさらけ出すものではなく、相手の反応を観察しながら、自分の距離を測るものとして描かれる。この曲も、その特徴を持っている。
サウンドは、ディスコ的な軽快さとシンセポップの明快さが結びついている。ベースラインは弾むように動き、リズムはダンス・ミュージックとして機能するが、全体の音像は過度に厚くない。音数は整理されており、各パートがはっきり聴こえる。これにより、曲は非常にスマートで洗練された印象を持つ。
歌詞では、相手が本当に同じ感情を持っているのか、自分と同じように感じているのかが問いかけられる。この問いは恋愛における普遍的な不安である。相手の言葉を信じてよいのか、身体の反応は本物なのか、関係は一方通行ではないのか。La Rouxはそれを重く歌うのではなく、軽いグルーヴの中で提示する。
「Do You Feel」は、本作のダンス・ポップ的な魅力をよく示す曲である。感情の不確かさを扱いながら、音楽は前向きに動き続ける。La Rouxにおいて、踊ることは感情から逃げることではなく、感情を問い直すための方法でもある。この曲は、そのバランスをうまく示している。
3. Automatic Driver
「Automatic Driver」は、『Supervision』の中でも特に印象的なシングル曲であり、アルバムの中心的な楽曲のひとつである。タイトルは「自動運転者」を意味し、自分の意思ではなく、何かに流されて進んでしまう状態を示しているように読める。恋愛や人生の中で、自分が主導権を持っていると思いながら、実際には自動的に動かされている。そのような感覚が曲の背景にある。
音楽的には、非常にキャッチーで洗練されたシンセポップである。ベースとリズムは軽快で、シンセの音色は明るく、サビには強いフックがある。デビュー作の「Bulletproof」にあった鋭い自己防衛のポップ感覚とは異なり、ここではより柔らかく、余裕のあるダンス感が前面に出ている。しかし、メロディの芯にはLa Rouxらしい少し冷たい輪郭が残っている。
歌詞では、関係の中で自分がどう動いているのか、相手にどう影響されているのかが問われる。自動運転という比喩は、現代的で非常に有効である。人は自分で選んでいるつもりでも、習慣、欲望、相手からの期待、過去のパターンによって動かされることがある。La Rouxはその状態を、明るいポップ・ソングの形で描いている。
「Automatic Driver」は、『Supervision』の魅力を最も分かりやすく示す曲である。軽快で聴きやすく、踊れるが、歌詞には自己制御と関係性への疑問がある。La Rouxのポップは、表面的には明るくても、常に少し距離を置いた自己観察を含んでいる。この曲はその典型である。
4. International Woman of Leisure
「International Woman of Leisure」は、本作の中でも特にキャラクター性が強い楽曲である。タイトルは「国際的な余暇の女性」といった意味で、労働や義務から距離を取り、自分の快楽や自由を優先する人物像を思わせる。そこには、アイロニー、自己演出、自由への憧れが含まれている。
音楽的には、軽快なグルーヴと明るいシンセが中心で、どこかリゾート感や都会的な余裕を感じさせる。曲は重くならず、非常にカラフルである。La Rouxの過去作と比べても、ここには『Trouble in Paradise』以降のトロピカルでファンク的な感覚が強く表れている。
歌詞では、自分の時間を自分のものとして楽しむ女性像が描かれる。これは単なる享楽の歌ではなく、他人の期待や労働的な義務から離れ、自分の生活を自分で演出する姿勢として読める。タイトルの少し大げさな言い回しには、自己神話化のユーモアもある。La Rouxはここで、ポップ・スターとしての自分を軽く戯画化しているようにも見える。
「International Woman of Leisure」は、『Supervision』の中でアルバムに遊び心を与える曲である。深刻な自己分析よりも、軽いステップと洒落た言葉で自由を表現する。La Rouxのポップ・センスが、最もリラックスした形で表れた楽曲のひとつである。
5. Everything I Live For
「Everything I Live For」は、タイトルからして大きな感情を持つ楽曲である。「自分が生きるすべて」と訳せるこの言葉は、恋愛、創作、自由、自己実現といった複数の対象へ向けられる。『Supervision』の中では、比較的メロディアスで、感情の温度が高い曲である。
音楽的には、シンセポップを基盤としながら、ややAOR的な滑らかさも感じられる。ビートは強く押し出すのではなく、曲全体を自然に前へ運ぶ。シンセの音色は温かく、Elly Jacksonの声はいつもより少し柔らかく響く。アルバムの中盤に置かれることで、作品に感情的な厚みを加えている。
歌詞では、自分にとって重要なもの、人生を動かすものへの思いが歌われる。La Rouxの歌詞は、恋愛の言葉を使いながらも、それが必ずしも相手への依存だけを意味しない場合が多い。この曲でも、相手を求める気持ちと、自分自身の生き方を確かめる感覚が重なっている。
「Everything I Live For」は、La Rouxのポップ・ソングライターとしての能力を示す楽曲である。派手なシングル向けの即効性よりも、じわりと広がるメロディの強さがある。本作の軽快な流れの中で、少しだけ感情を深く掘る役割を担っている。
6. Otherside
「Otherside」は、タイトルが示す通り、別の側、向こう側、今いる場所とは異なる状態をテーマにした楽曲である。La Rouxの音楽には、しばしば関係のこちら側と向こう側、自分と相手、過去と未来の境界が現れる。この曲も、そうした境界を意識した作品といえる。
サウンドは、やや落ち着いたトーンを持ち、アルバムの前半に比べると少し影がある。シンセは明るすぎず、リズムも過度に弾まない。全体として、少し内省的なダンス・ポップとして機能している。Elly Jacksonの声は、ここでは距離感を保ちながら、相手や別の状態へ向けて伸びていく。
歌詞では、向こう側へ行くこと、別の視点から物事を見ること、あるいは関係の違う段階へ進むことが暗示される。「otherside」という言葉は、逃避でもあり、変化でもあり、解放でもある。La Rouxはそれを過度にドラマティックにせず、淡い感覚として表現している。
「Otherside」は、『Supervision』の中で中盤以降の空気を少し変える曲である。明るいポップ・ソングが続いた後に、少しだけ視界が広がり、内側へ沈む。このバランスによって、アルバムは単調なダンス・ポップ集にならず、感情の陰影を持つ作品になっている。
7. He Rides
「He Rides」は、アルバムの中でもやや物語的な雰囲気を持つ楽曲である。タイトルの「彼は乗る」「彼は進む」という表現は、移動、逃避、自由、あるいは自分の道を進む人物像を連想させる。La Rouxの楽曲では、人物が象徴的に描かれることが多く、この曲もその一例である。
音楽的には、滑らかなシンセ・グルーヴを持ちながら、どこか少し陰りがある。ベースとビートは軽く動き、シンセは曲に広がりを与える。派手な爆発はないが、曲全体には一定の推進力がある。タイトルの「rides」という言葉が示すように、音楽もゆるやかに走り続ける。
歌詞では、ある男性像、あるいは外へ向かう存在が描かれる。彼は自由に見えるかもしれないが、その自由には距離や孤独も含まれているように響く。La Rouxの視点は、相手を完全に理想化するのではなく、少し観察者として距離を置いている。この観察の冷静さが、曲に独特の雰囲気を与えている。
「He Rides」は、『Supervision』の中では控えめな曲だが、アルバムの世界に物語的な奥行きを加える役割を持つ。単純なダンス・トラックではなく、移動する人物の影を描くような楽曲であり、La Rouxの少し映画的な側面が出ている。
8. Gullible Fool
アルバムの最後を飾る「Gullible Fool」は、『Supervision』の終曲として非常に重要な楽曲である。タイトルは「だまされやすい愚か者」を意味し、自分自身を少し突き放して見るような言葉である。恋愛や関係の中で、信じすぎたこと、相手を見誤ったこと、自分の弱さを認める感覚が含まれている。
音楽的には、アルバムの終盤にふさわしく、少し落ち着いたトーンを持つ。ビートは軽快さを保ちながらも、前半の曲ほど明るくはない。シンセの音色には柔らかさと寂しさがあり、Elly Jacksonの声も少し内省的に響く。終曲として、アルバム全体を静かにまとめる役割を果たしている。
歌詞では、自分が相手を信じすぎたこと、あるいは関係の中で判断を誤ったことが示される。しかし、この曲は自己憐憫に沈むものではない。むしろ、自分の愚かさを認めることで、そこから距離を取ろうとしている。La Rouxの歌詞には、傷ついた自分を冷静に見る視点があり、この曲ではそれが特に明確である。
「Gullible Fool」は、『Supervision』の結論として効果的である。アルバムは、現代、感情、自由、自己演出、向こう側への移動を描いてきた。そして最後に、自分が信じやすく、間違いやすい存在であることを認める。これは弱さの告白であると同時に、自己認識の回復でもある。終曲として、軽快なアルバムに静かな余韻を残す。
総評
『Supervision』は、La Rouxにとって再出発のアルバムであり、Elly Jacksonが自分自身のポップ感覚をより明確に、より軽やかに提示した作品である。デビュー作『La Roux』の鋭いエレクトロポップや、『Trouble in Paradise』の洗練されたファンク/ニュー・ディスコ路線を経て、本作では音楽がさらにシンプルになっている。過剰な装飾を避け、明るいシンセ、軽いグルーヴ、コンパクトなメロディによって、非常に聴きやすいポップ・アルバムが作られている。
本作の魅力は、音の軽さにある。ここでの軽さは、内容の薄さではない。むしろ、重く語りすぎないことで、La Rouxの個性が自然に浮かび上がっている。シンセの音はクリアで、リズムは踊れるが過剰ではなく、声は感情を押しつけない。全体に余裕があり、風通しがよい。これは、2009年のエレクトロポップ・ブームの鋭さとは異なる、成熟したシンセポップの形である。
Elly Jacksonのヴォーカルは、本作でも中心的な魅力である。彼女の声は、一般的なポップ・シンガーのように柔らかく感情を包み込むタイプではない。やや硬く、細く、直線的で、中性的な響きを持つ。その声が、明るいダンス・ポップの中に少し冷たい輪郭を与える。『Supervision』が単なるレトロ・ポップにならないのは、この声の個性によるところが大きい。
歌詞面では、恋愛や人間関係の中での自己認識が重要なテーマになっている。「Automatic Driver」では自分が自動的に動かされている感覚が、「Do You Feel」では相手の感情への疑問が、「Gullible Fool」では自分の信じやすさへの認識が描かれる。つまり本作は、恋愛を単純な幸福や失恋としてではなく、自分の判断、欲望、自由をめぐる場として扱っている。
『Supervision』は、80年代シンセポップの影響を強く持つ作品である。だが、過去の音をそのまま再現するだけではない。La Rouxは、80年代のシンセ、ディスコ、エレクトロ・ファンクの質感を、現代的なインディー・ポップの軽さで再配置している。そのため、音は懐かしいが、過剰にノスタルジックではない。過去を見ながらも、現在のリスナーが気軽に聴けるポップとして成立している。
一方で、本作には弱点もある。アルバム全体が非常にコンパクトで統一感がある反面、デビュー作の「Bulletproof」のような強烈な一撃や、『Trouble in Paradise』の一部にあった濃密なアレンジの深さは控えめである。曲によっては、あまりに軽やかで、印象が淡くなる瞬間もある。そのため、大きなドラマや革新的な展開を期待すると、やや物足りなく感じられる可能性がある。
しかし、その控えめな作りこそが本作の意図でもある。『Supervision』は、La Rouxが巨大な成功や時代の代表作を再び作ろうとするアルバムではない。むしろ、過去の期待や外部の視線から少し離れ、自分が楽しく鳴らせるシンセポップを取り戻すアルバムである。タイトルの「Supervision」は、他者による監視ではなく、自分自身の音楽を自分で見通すこととして響く。
日本のリスナーにとっては、80年代ポップの明るさ、シンセの質感、ニュー・ディスコの軽快さを楽しめる作品である。YMO以降のシンセポップ、80年代洋楽、近年のレトロ・ポップ、ダンス・ポップに親しみがあるリスナーには入りやすい。特に、派手なクラブ・ミュージックよりも、部屋や街歩きの中で自然に流れる洗練されたポップを好む場合、本作は非常に聴きやすい。
La Rouxのディスコグラフィの中で、『Supervision』は最もリラックスした作品といえる。デビュー作のような鋭い衝撃、前作のような制作上の緊張感は薄い。その代わり、ポップ・ミュージックを鳴らす喜びがある。明るく、短く、軽く、しかしElly Jacksonらしい距離感と観察眼を持つ。これは、長いキャリアの中でアーティストが自分の音を無理なく再構築したアルバムである。
総じて、『Supervision』は、La Rouxがシンセポップの原点に戻りつつ、より自由で軽やかな形へ進んだ作品である。強い革新性よりも、洗練、明快さ、グルーヴ、自己回復が中心にある。80年代的な輝きと、現代的な余白を持つ、コンパクトで心地よいダンス・ポップ・アルバムである。
おすすめアルバム
1. La Roux – La Roux
La Rouxのデビュー作であり、「Bulletproof」「In for the Kill」を収録した代表作。鋭いシンセ、硬質なビート、Elly Jacksonの中性的なヴォーカルが強く前面に出ている。『Supervision』の軽やかさと比較することで、彼女の音楽性の変化がよく分かる。
2. La Roux – Trouble in Paradise
『Supervision』の前作であり、ファンク、ディスコ、ソフト・ロック的な要素を取り入れた重要作。デビュー作のエレクトロポップから、より滑らかでトロピカルなサウンドへ移行した作品である。『Supervision』の音楽的な土台を理解するうえで欠かせない。
3. Eurythmics – Sweet Dreams (Are Made of This)
80年代シンセポップの重要作。冷たいシンセ、強いメロディ、中性的なヴォーカル表現という点でLa Rouxと関連性が高い。『Supervision』の背後にある80年代的なシンセポップの文脈を理解するために有効なアルバムである。
4. Robyn – Body Talk
現代エレクトロポップ/ダンス・ポップの重要作。La Rouxよりも感情の爆発力が強いが、シンセポップを現代的な自己表現へ変換している点で共通する。踊れるポップの中に孤独や自己防衛を織り込む感覚を比較して聴ける作品である。
5. Jessie Ware – What’s Your Pleasure?
ニュー・ディスコ、シンセポップ、80年代的なダンス・ミュージックを現代的に洗練させた作品。『Supervision』よりも官能的で豪華な音像だが、レトロなダンス・ミュージックを現代ポップとして再構築する姿勢に共通点がある。現代の大人向けディスコ・ポップとして関連性が高い。

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