発売日: 1997年10月22日(日本) / 1998年3月23日(イギリス)
ジャンル: トリップホップ / オルタナティブポップ / エレクトロニカ
『Impossible Princess』は、カイリー・ミノーグが音楽的に大きな挑戦を試みたアルバムであり、彼女のキャリアの中でも異彩を放つ作品である。1990年代後半、音楽業界におけるポップの定型を超えた多くの実験的なアルバムが登場する中で、本作もまたカイリーのアーティストとしての成熟と進化を示す一枚となった。
このアルバムは、トリップホップやエレクトロニカ、ロックといったジャンルの影響を強く受け、カイリー自身が全曲でソングライティングに関与している点が特徴的だ。歌詞には内省的なテーマや個人的な感情が込められており、これまでの華やかなダンスポップのイメージを一新する作品となっている。
リリース当初は商業的には賛否が分かれたが、現在ではカイリーのキャリアの中で最もアーティスティックで挑戦的なアルバムとして再評価されている。
トラック解説
1. Too Far
アルバムのオープニングを飾るエネルギッシュなトラック。ドラムンベースのリズムと不安定なメロディが、内面的な混乱を表現している。カイリーのボーカルが感情的で鋭い。
2. Cowboy Style
エスニックなリズムとストリングスが融合したトラック。歌詞には恋愛と自己発見の要素が盛り込まれ、実験的なサウンドが印象的。
3. Some Kind of Bliss
ロックバンドManic Street Preachersのメンバーと共作した曲で、ギターが主導するポップロックの楽曲。キャッチーなメロディが耳に残り、アルバムの中でも親しみやすいトラック。
4. Did It Again
攻撃的でアイロニカルな歌詞が特徴の楽曲。ミュージックビデオでは複数のカイリーが登場し、彼女のキャリアの様々な面を象徴する演出が話題となった。
5. Breathe
エレクトロニカとアンビエントの影響を受けた繊細なトラック。静かなビートと浮遊感のあるメロディが、リラックスしながらも感情を揺さぶる。
6. Say Hey
ミニマルなサウンドが特徴的な実験的な楽曲。カイリーの囁くようなボーカルが不思議な魅力を放ち、アルバム全体の中でも独特な存在感を持つ。
7. Drunk
トリップホップの要素が色濃く反映された楽曲で、複雑な感情と混乱を描写している。低音の効いたサウンドとカイリーのボーカルが印象的。
8. I Don’t Need Anyone
ギターポップとロックを融合させたエネルギッシュなトラック。独立心と自己肯定をテーマにしており、ポジティブなメッセージが込められている。
9. Jump
アコースティックギターとエレクトロニカを融合した実験的な楽曲。シンプルなアレンジがカイリーのボーカルを引き立てている。
10. Limbo
激しいビートと挑発的な歌詞が特徴のダンストラック。アルバムの中でも特にエネルギッシュで、クラブでの再生を意識したサウンド。
11. Through the Years
静かで内省的な楽曲。アンビエントサウンドと控えめなアレンジが、歌詞の感情的な深みを際立たせている。
12. Dreams
アルバムを締めくくる壮大なバラード。夢と現実、希望と絶望をテーマにした歌詞が印象的で、カイリーの感情的なボーカルが聴きどころ。
アルバム総評
『Impossible Princess』は、カイリー・ミノーグの音楽的冒険心が凝縮されたアルバムであり、従来のポップアイコンとしてのイメージを覆す作品である。トリップホップやオルタナティブポップといったジャンルの要素を取り入れ、内省的な歌詞と多彩なサウンドが融合したこのアルバムは、リリース当初の評価を超え、現在ではカイリーの最も重要な作品の一つとして位置づけられている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Homogenic by Björk
実験的なエレクトロニカと深い感情表現が楽しめるアルバムで、『Impossible Princess』のファンに響く要素が多い。
Ray of Light by Madonna
エレクトロニカとポップを融合させた傑作で、カイリーの本作と同じ時代の革新性を感じられる。
Debut by Björk
トリップホップとエレクトロニカの要素をポップに仕上げたアルバムで、カイリーの実験的な作品に共鳴する。
Post by Björk
異なるジャンルを大胆に融合したアルバムで、カイリーの『Impossible Princess』と同様に挑戦的な一枚。
Mechanical Animals by Marilyn Manson
ロックとエレクトロニカを融合させたアルバムで、アーティスティックな表現が『Impossible Princess』のファンにおすすめ。
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