発売日: 2010年6月11日
ジャンル: ヘヴィメタル、ハードロック、モダンメタル
概要
『Scream』は、Ozzy Osbourne が2010年に発表した11作目のスタジオアルバムであり、
Zakk Wylde から Gus G.（Firewind）へとギタリストが交代した最初の作品である。
Zakk Wylde のブルージーで泥臭いメタルギターから、
Gus G. のテクニカルで鋭く、スピード感のある欧州メタル寄りのスタイルへ。
このギター交代は、Ozzy サウンドに大きな変化をもたらし、
サウンドは よりモダンでクリスプ、そしてパワフル な方向へと進化した。
プロデュースは前作『Black Rain』に続き Kevin Churko。
冷たくタイトなリズム、分厚いギター、デジタル感のあるミックスが特徴で、
“21世紀のOzzy”の完成形とも言えるモダン・ヘヴィネスが前面に出ている。
歌詞テーマは、
怒り、混乱、孤独、再生、世界への失望 といった、Ozzy特有の内面と社会批評のミックス。
00年代よりもやや個人的で、情緒的なラインが強い。
全曲レビュー
1. Let It Die
静かなイントロから、突然爆発するヘヴィリフへ。
Gus G. の攻撃的なギターが一発で分かる強烈なオープニング。
2. Let Me Hear You Scream
アルバム最大のシングル。
疾走感があり、スポーツ番組でも使用されるほどの“アリーナ型メタル”。
タイトルどおり叫ぶようなエネルギーに満ちている。
3. Soul Sucker
ダークで重い世界観。
コーラスはキャッチーだが、サウンドは深く沈む重厚さがある。
4. Life Won’t Wait
本作随一のメロディックバラード。
“それでも人生は続いていく”というメッセージが優しく響く。
ポップな側面が光る1曲。
5. Diggin’ Me Down
オリエンタルな雰囲気を持つイントロから大きく展開する大作。
ギターソロの構築力が素晴らしく、Gus G. の技量が炸裂する。
6. Crucify
攻撃的でスピード感のある曲。
サビのメロディは重厚だがキャッチーで耳に残る。
7. Fearless
ミッドテンポの王道ヘヴィメタル。
硬いギターとタイトなリズムが印象的。
8. Time
繊細で内省的なバラード。
暗い雰囲気を持ちながらも、温かい余韻が残る。
9. I Want It More
モダンメタルの要素が強い力強い楽曲。
サウンドの厚みとスピードが爽快。
10. Latimer’s Mercy
陰鬱なムードを持つミッドテンポ曲。
ストーリーテリングの濃い歌詞が特徴。
11. I Love You All
1分程度の静かなアウトロ。
ファンへの感謝を込めたメッセージのような曲で、
アルバムを優しく閉じる。
総評
『Scream』は、Ozzy Osbourne のキャリアの中で
最もモダンでクリアなメタル作品とも言える重要作である。
ギタリストの交代により、
サウンドは明確に方向性を変え、
Zakk Wylde のブルースメタルから、
Gus G. のスピーディで正確な欧州メタル的アプローチへと刷新された。
これにより、
音の密度は高くなり、全体のキレが増し、
“2010年代のメタル”らしいシャープな構造が生まれている。
一方で、歌詞やテーマは引き続きOzzyらしい影と弱さが濃く、
モダンな音像と古典的なヘヴィメタル精神が同居する点が魅力でもある。
『Black Rain』が持っていた黒い社会批評性に比べて、
本作は個人の感情・決意・再生に焦点が当たっており、
より感情的でアグレッシブな印象が強い。
総じて、
“新時代のOzzyの姿を刻みつけたアルバム” として
非常に重要であり、技術的にもサウンド的にも完成度が高い。
おすすめアルバム（5枚）
- Black Rain / Ozzy Osbourne
サウンドデザインの連続性が最も強い。 - Down to Earth / Ozzy Osbourne
モダン化の流れの前段階として比較が面白い。 - No More Tears / Ozzy Osbourne
よりドラマティックでメロディアスなOzzyを味わいたい人向け。 - Firewind / The Premonition
Gus G. のプレイスタイルを深く理解できる。 - Black Sabbath / 13
モダンヘヴィネスと伝統的暗黒美の接点を知るのに最適。
制作の裏側
『Scream』の制作中、
Ozzy は新たなギタリストを探しつつ、
サウンドのアップデートを強く意識していた。
Gus G. の加入は大きな賭けだったが、
Firewind での彼の評価が高かったこと、
そして“若く技術的な血”を取り入れたいというOzzy自身の意向が重なり、
最終的に抜擢された。
プロデューサー Kevin Churko は、
Zakk Wylde 時代にはなかった“デジタル的な鋭さ”を積極的に導入し、
より現代的で冷たい質感を持つヘヴィサウンドを構築した。
『Scream』は、
Ozzy が2010年代へ突入するための“サウンド刷新”を実現した重要作であり、
メタルの歴史における転換点のひとつでもある。
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