発売日: 1995年10月24日
ジャンル: ヘヴィメタル、ハードロック、オルタナティヴ・メタル
概要
『Ozzmosis』は、Ozzy Osbourne が1995年に発表した7作目のスタジオアルバムであり、
90年代メタルの空気・ダークな内省・重厚なサウンドが複雑に混ざり合う、
Ozzy のキャリアの中でも異色の作品である。
ギタリストは引き続き Zakk Wylde。
本作でも彼の太く歪んだリフとブルージーなギターが中心にあるが、
そこに90年代特有の陰鬱さ・浮遊感・電子的質感が加わり、
過去の作品とは一線を画す“黒いモダン・ヘヴィネス”が形成されている。
さらに本作には、Black Sabbath の盟友 Geezer Butler がベースで参加。
これにより、“Sabbath譲りの重心の低さ”と“90年代らしい湿った美学”が
絶妙に交差したサウンドが誕生している。
テーマは、
自己破壊、内省、精神的混乱、孤独、喪失、依存。
『No More Tears』（1991）のドラマティックなメタルから進化し、
より静かで、苦しみを内側に抱え込むような世界観へ踏み込んだ作品と言える。
全曲レビュー
1. Perry Mason
壮大なストリングスと重いリフが交差する名曲。
オープニングから“劇場型メタル”の迫力が炸裂し、
Zakk のリフがこれでもかと重さを刻む。
Ozzy の歌唱も深く、影をまとっている。
2. I Just Want You
ロックバラードの名曲。
混乱した感情を吐露するような歌詞と、
大きく広がるサビが心を掴む。
感情表現の鋭さではアルバム屈指。
3. Ghost Behind My Eyes
“心の背後に潜む影”のような、内省的で陰の強い曲。
ギターは粘りつくように重く、
Ozzy の歌が不安を漂わせる。
4. Thunder Underground
Geezer Butler のベースが地鳴りのように響くヘヴィナンバー。
アルバムで最も“Sabbath的”といえる曲で、
重厚感が圧倒的。
5. See You on the Other Side
静と動のドラマ性が美しいバラード。
喪失・死への向き合い方をテーマにしており、
Ozzy の優しさと悲しみが共存する名曲である。
6. Tomorrow
“いつかは良くなる”という希望と諦観の間に揺れる楽曲。
90年代的な陰と光のバランスが絶妙。
7. Denial
タイトルどおり“否認”がテーマ。
攻撃的なギターと感情剥き出しの歌唱が噛み合う。
8. My Little Man
Ozzy が息子に向けて歌った感情深いバラード。
過去の過ち、親としての後悔、愛情が織り込まれた痛切な一曲。
9. My Jekyll Doesn’t Hide
自己破壊性をテーマにした攻撃的なナンバー。
Zakk のリフが荒々しく、歌詞もまた強烈。
10. Old L.A. Tonight
アルバムを静かに締めくくるバラード。
90年代ロックらしい郷愁と哀感が漂い、
曲全体が薄暗い光のような余韻を残す。
総評
『Ozzmosis』は、Ozzy Osbourne の作品の中でも
もっとも“90年代の影”を背負ったアルバムである。
『No More Tears』ほどの派手さはない。
『The Ultimate Sin』ほどグラマラスでもない。
しかし本作には、それらにはない 精神的深さ・暗闇のリアリティ・重力のようなヘヴィネス がある。
Zakk Wylde のギターは分厚く、
Geezer Butler のベースがサウンドの底を支え、
Ozzy は弱さ・苦しみ・孤独を剥き出しにする。
結果として本作は、
“最も人間的で、感情的に沈んだOzzy” を記録した作品となっている。
90年代ロックの湿った空気、
メタルの重厚さ、
Sabbath的な暗黒美、
そしてOzzyの私的な痛み——
それらが一つに収束した異形の名盤である。
おすすめアルバム（5枚）
- No More Tears / Ozzy Osbourne
前作との流れを比較すると、本作の内向性がより明確になる。 - No Rest for the Wicked / Ozzy Osbourne
Zakk Wylde 期の始まりとして必聴。 - Black Sabbath / Dehumanizer
90年代型Sabbathの暗黒美が本作と共通。 - Alice in Chains / Jar of Flies
陰鬱さ・静かな痛みというテーマが近い。 - Soundgarden / Down on the Upside
90年代のオルタナティヴな“暗さと重さ”という文脈で相性が良い。
制作の裏側
『Ozzmosis』の制作は、
Ozzy の精神状態の揺れ・過去の依存問題・家族との葛藤 が濃く影響した時期に行われた。
当初はプロデューサーにMichael Wagenerが起用されたが、
サウンド方向をめぐって交代が発生し、
最終的に Michael Beinhorn が引き継ぐことで、
90年代らしい“暗く重い空気”がアルバム全体に宿った。
BPMは遅めに設定され、
音の間を強調したミックスが採用され、
“静かな重さ”が作品の核となった。
また、Geezer Butler の参加によって、
“Zakk Wylde のモダンヘヴィネス × Sabbath直系の暗黒感”という
唯一無二の組み合わせが成立している点も重要である。
『Ozzmosis』は、
Ozzy Osbourne のキャリアの中でも特に痛みと深さを抱えた、
黒く美しい90年代メタルの到達点である。
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