
発売日: 2007年5月22日
ジャンル: ヘヴィメタル、ハードロック、オルタナティヴ・メタル
概要
『Black Rain』は、Ozzy Osbourne が2007年に発表した10作目のスタジオアルバムであり、
21世紀のOzzy像を決定づけた“モダン・ヘヴィメタル”の重要作である。
本作は、ギタリスト Zakk Wylde の最後のフル参加作でもあり、
その荒々しいリフとブルージーな魂は、
アルバム全体に“重く黒い雲”のような存在感をもたらしている。
歌詞のテーマは、
戦争・政治批判・社会の崩壊・自分自身の影・依存・喪失 といった
シリアスで現代的な内容が中心。
これは、2000年代半ばの世界情勢の不穏さを強く反映したものでもある。
サウンドは大幅にモダン化され、
分厚いギターレイヤー、低くタイトなリズム、
そして冷たい電子音のテクスチャーが時折顔を出す。
“伝統的ヘヴィメタルの重さ”と
“00年代的な現代性”が共存した一枚である。
全曲レビュー
1. Not Going Away
「俺はどこにも行かない」という決意を込めた力強いオープニング。
Zakk の分厚いギターが炸裂し、
Ozzy の存在感を改めて示す一曲。
2. I Don’t Wanna Stop
スピード感ある攻撃的なナンバー。
00年代Ozzyの代表曲で、
“止まらない意志”を叫ぶようなエネルギーが詰まっている。
3. Black Rain
アルバムの象徴的タイトル曲。
戦争・腐敗した世界・虚無感をテーマにした重苦しい一曲。
サウンドは陰鬱だが、メロディは美しくドラマティック。
4. Lay Your World on Me
内省的で哀しみを帯びたバラード。
弱さや痛みをさらけ出すOzzyの歌が胸を締め付ける。
5. The Almighty Dollar
資本主義社会・金への執着を批判した社会派ナンバー。
00年代の世界情勢を反映した鋭いテーマ性が光る。
6. 11 Silver
軽いスピード感と鋭い動きを持つ楽曲。
リフが強烈で、Zakkのギターの特徴がよく現れている。
7. Civilize the Universe
壮大な構成のミッドテンポ曲。
“人類の行く末”を俯瞰するようなスケール感がある。
8. Here for You
感謝と愛をテーマにした優しいトラック。
アルバムの重さの中で唯一柔らかな光を放つバラード。
9. Countdown’s Begun
世界の崩壊・戦争・混乱を描いた重苦しいヘヴィソング。
サウンドの圧力が非常に強い。
10. Trap Door
皮肉と怒りを湛えたラストナンバー。
00年代後半の社会情勢の暗さが象徴的に描かれる。
総評
『Black Rain』は、Ozzy Osbourne の作品群の中でも
最も“時代の暗さ”をそのまま音に閉じ込めたアルバムである。
Zakk Wylde の最後のフル参加作として、
リフはこれまで以上に太く重く、
ブルージーな情念が音の奥深くまで刻まれている。
また、歌詞は政治的・社会的な内容が多く、
Ozzy の中ではかなり“社会批評的な作品”として異彩を放つ。
サウンドは分厚く現代的で、
“00年代メタルの黒い影”が特徴的。
同時にメロディは非常に洗練され、
“暗いのに聴きやすい”というバランスを保っている。
『Black Rain』は、
キャリア後期のOzzy を語る上で避けて通れない、
重く深い、現代型ヘヴィメタルの中核作である。
おすすめアルバム(5枚)
- Down to Earth / Ozzy Osbourne
世界観の連続性が最も強い。 - Ozzmosis / Ozzy Osbourne
暗い内省と重いサウンドの源流となる作品。 - No More Tears / Ozzy Osbourne
よりドラマティックで豪華なOzzyを楽しめる。 - Black Sabbath / 13
現代的サバスの重厚サウンドと共通点が多い。 - Alice in Chains / The Devil Put Dinosaurs Here
00年代以降の“暗いヘヴィネス”を深掘りするなら最適。
制作の裏側
『Black Rain』の制作時、世界は政治的緊張と社会不安に満ちており、
その空気が楽曲の多くに反映されている。
プロデューサー Kevin Churko は、
分厚いメタルサウンドと冷たいモダンエッジを融合させ、
2000年代的な“暗黒メタル”を構築した。
一方で、Zakk Wylde はこの作品を最後にバンドを離れることになり、
そのため本作にはZakk特有の“ブルース魂”が最も強く刻まれている。
“重さ”と“痛み”と“現代性”。
それらを三位一体で閉じ込めたのが、『Black Rain』なのである。



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