発売日: 1968年4月19日
ジャンル: バロックポップ、サイケデリックポップ
The Zombiesが1968年にリリースした『Odessey and Oracle』は、彼らのキャリアにおける最重要作品であると同時に、1960年代後半のポップミュージックを代表する名盤のひとつである。このアルバムは、リリース当時の商業的成功には恵まれなかったが、後に高い評価を得て、現在では「カルトクラシック」としてロック史にその名を刻んでいる。トラックは、ロンドンのアビー・ロード・スタジオをはじめとする複数のスタジオで録音され、メンバーのRod ArgentとChris Whiteが楽曲を分担して作曲した。特徴的なタイトルは、デザイナーのミススペルによって「Odyssey」ではなく「Odessey」となったが、それすらもアルバムの神秘性を高めている。
アルバム全体を通じて、バロック風の美しいアレンジと幻想的な歌詞が際立ち、サイケデリック時代のピークにふさわしい作品となっている。Colin Blunstoneの繊細なボーカルとRod Argentの鍵盤を中心としたアンサンブルが、洗練されたメロディーと豊かなハーモニーを生み出している。また、1960年代の英国的な憂いと夢幻的な雰囲気が色濃く反映されたアルバムとして、今なお多くのリスナーを魅了している。
トラック解説
1. Care of Cell 44
アルバムの幕開けを飾る明るいポップソングで、手紙を書く恋人の視点から語られるユニークな歌詞が特徴。ピアノとハーモニーが生き生きとしており、軽快なリズムが全体を彩る。希望に満ちたメロディーと対照的に、テーマには少し切なさも含まれている。
2. A Rose for Emily
静かで美しいバラードで、William Faulknerの小説にインスパイアされた一曲。ピアノとボーカルを中心にしたシンプルな構成が、孤独や時間の流れを表現している。Colin Blunstoneの感情豊かな歌声が胸を締めつける。
3. Maybe After He’s Gone
別れた恋人を忘れられない男性の心情を歌った楽曲。切ないメロディーとハーモニーが曲に深い感情を与えており、サビの盛り上がりが感動的だ。
4. Beechwood Park
郷愁をテーマにしたナンバーで、Chris Whiteによる詩的な歌詞が際立つ。オルガンとアコースティックギターの柔らかな音色が、過去の美しい記憶を思い起こさせるようなムードを作り出している。
5. Brief Candles
それぞれのキャラクターが独自の感情を抱える群像劇を描いた楽曲。楽曲の中で異なる感情が交錯し、ドラマチックな展開を生み出している。バンドのハーモニーが特に美しい一曲。
6. Hung Up on a Dream
幻想的な雰囲気を持つ楽曲で、夢のような体験を語る歌詞が印象的。ロッド・アージェントのキーボードが曲を導き、壮大でシネマティックなアレンジが魅力だ。
7. Changes
ピアノとコーラスが中心となるシンプルな構成の楽曲。人生の移り変わりを静かに受け入れるテーマが、The Zombies特有の哲学的な側面を際立たせている。
8. I Want Her She Wants Me
ロッド・アージェントがリードボーカルを務める軽快な楽曲。ポップで明るいメロディーが印象的で、アルバムの中でもひときわカラフルな一曲となっている。
9. This Will Be Our Year
トランペットの温かみのあるサウンドが特徴的な楽曲で、アルバムの中で最も希望に満ちた曲のひとつ。愛と新しい始まりをテーマにした歌詞が、前向きな気持ちにさせてくれる。
10. Butcher’s Tale (Western Front 1914)
第一次世界大戦をテーマにした実験的な楽曲で、Chris Whiteがリードボーカルを務める。オルガンの不気味なサウンドと陰鬱な歌詞が、アルバムの中でも異彩を放っている。
11. Friends of Mine
友情をテーマにした陽気な楽曲で、軽快なリズムとポジティブなエネルギーが特徴的。アルバムの中でも明るいアクセントとなっている一曲。
12. Time of the Season
アルバムを締めくくるThe Zombiesの代表曲で、特有のスウィング感とジャジーなアレンジが際立つ。歌詞は愛と自由をテーマにしており、Colin BlunstoneのボーカルとRod Argentのオルガンが曲の魅力を最大限に引き出している。後に多くの映画やテレビ番組で使用され、時代を超えた名曲となった。
アルバム総評
『Odessey and Oracle』は、The Zombiesの音楽的完成度の高さと創造性を証明するアルバムである。アルバム全体が一貫したテーマとムードで構成されており、1960年代後半のサイケデリックポップの頂点ともいえる内容を持っている。特に「Time of the Season」や「Care of Cell 44」は、現在でも多くのリスナーに愛されており、その普遍的な魅力を感じさせる。アルバムの中のどの楽曲も緻密に作り込まれており、The Zombiesの繊細で洗練された音楽性が凝縮された名作だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Pet Sounds by The Beach Boys
『Odessey and Oracle』の繊細なアレンジやメロディーセンスに共通する、ポップミュージックの金字塔的作品。
Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band by The Beatles
サイケデリック時代の象徴ともいえるアルバムで、実験的でありながらポップな要素が多い点で似ている。
Forever Changes by Love
幻想的な歌詞と多彩なアレンジが特徴のアルバム。『Odessey and Oracle』のファンにはぜひ聴いてほしい作品。
Days of Future Passed by The Moody Blues
クラシカルなアプローチと幻想的なムードが共通するプログレッシブな名盤。
Something Else by The Kinks by The Kinks
牧歌的な雰囲気とメロディックな楽曲が『Odessey and Oracle』に通じる一枚。ブリティッシュポップの名作。
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