発売日: 1977年6月22日
ジャンル: ソフトロック、フォーク、シンガーソングライター
1977年にリリースされたJames Taylorのアルバム『JT』は、彼のキャリアにおいて新たなフェーズを切り開いた作品である。Columbia Records移籍後初のアルバムであり、Taylorの成熟した音楽性と幅広いスタイルが集約されている。収録曲の中には「Handy Man」や「Your Smiling Face」といったポップなヒット曲が含まれており、Taylorがより幅広いリスナー層にアピールした一枚となった。
プロデューサーはPeter Asherが引き続き担当し、Taylorのアコースティックギターを中心に、洗練されたアレンジとスタジオミュージシャンの緻密な演奏が融合したサウンドを作り上げている。アルバム全体を通して、愛や喜び、家族といった普遍的なテーマが温かみのある語り口で描かれており、リスナーにTaylorの人間味あふれる魅力を感じさせる内容となっている。
トラック解説
1. Your Smiling Face
アルバム冒頭を飾る明るく軽快なナンバー。アップテンポなリズムとTaylorの伸びやかなボーカルが心地よく、リスナーを笑顔にさせる一曲だ。歌詞には愛する人への賛美が込められており、幸福感に満ちた楽曲となっている。
2. There We Are
柔らかいメロディーとシンプルなアレンジが際立つバラード。歌詞では、愛とパートナーシップの安定感が表現されており、Taylorのボーカルがそのメッセージを親密に伝える。
3. Honey Don’t Leave L.A.
ファンキーで都会的なサウンドが特徴の楽曲。ブルースやソウルの影響を感じさせるギターリフと、Taylorの抑制されたボーカルが絶妙なバランスを生み出している。これまでの彼のフォーク中心のスタイルとは一線を画す一曲だ。
4. Another Grey Morning
人生の中の憂鬱な瞬間を描いた静かなバラード。ピアノの伴奏が印象的で、Taylorの優しい声が深い感情を伝える。どこか沈んだトーンの中にも希望が感じられる歌詞が心に残る。
5. Bartender’s Blues
カントリーの要素を取り入れた楽曲で、Taylorの幅広い音楽性を示す一曲。孤独をテーマにした歌詞がカントリーテイストのメロディーと見事に調和している。エモーショナルな歌声が胸に響く。
6. Secret O’ Life
人生の意味を探求する哲学的な一曲。アコースティックギターと穏やかなメロディーがTaylorらしい親密な雰囲気を作り出している。「人生の秘密は楽しむことだ」というメッセージが、聴く者に静かな感動を与える。
7. Handy Man
アルバムの代表曲であり、Jimmy Jonesのカバー。Taylorのアレンジによって、オリジナルとは異なる温かさと親しみやすさが加わっている。軽快なリズムとTaylorの穏やかな歌声が耳に心地よく、1978年にグラミー賞を受賞した名曲。
8. I Was Only Telling a Lie
軽やかなロック調の楽曲で、Taylorのユーモアが光る一曲。リズミカルなギターと楽しい歌詞が印象的で、アルバムに彩りを添えている。
9. Looking for Love on Broadway
ジャズの要素を取り入れた実験的な楽曲。Taylorの柔軟な音楽性が感じられる一曲で、ニューヨークの街並みが目に浮かぶような情景的な歌詞が魅力だ。
10. Terra Nova
美しいハーモニーと静謐なアレンジが特徴のバラード。Taylorの弟であるLivingston Taylorとの共作で、家族的な温かさが楽曲全体を包み込んでいる。
11. Traffic Jam
タイトル通り、都会の喧騒を描いたテンポの速い楽曲。ファンキーなギターリフとユーモラスな歌詞が楽しく、Taylorの遊び心を感じられる。
12. If I Keep My Heart Out of Sight
アルバムを締めくくる穏やかでロマンチックな楽曲。アコースティックギターとTaylorの柔らかい歌声が絶妙にマッチしており、静かに余韻を残す。
アルバム総評
『JT』は、James Taylorの音楽的成熟を示すアルバムであり、彼が新たなステージに進んだことを象徴している。ポップなヒット曲から内省的なバラード、実験的なジャズ調の楽曲まで、多様なスタイルを取り入れたこのアルバムは、Taylorの多才さを証明する一枚だ。特に「Handy Man」や「Your Smiling Face」のような楽曲は、Taylorの明るさと親しみやすさを体現しており、リスナーに深い印象を残す。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Tapestry by Carole King
明るいポップなメロディーと感情豊かな歌詞が魅力的で、Taylorファンに親しみやすい作品。
Blue by Joni Mitchell
内省的で繊細な感情が表現されたアルバム。Taylorの優しさと誠実さを好むリスナーには共感を呼ぶ。
Silk Degrees by Boz Scaggs
ソウルフルで洗練されたポップサウンドが特徴。Taylorのポップな一面を気に入った人におすすめ。
Rumours by Fleetwood Mac
Taylorの軽快なポップ感が好きな人には、このアルバムのドラマチックでキャッチーな楽曲も響くだろう。
After the Gold Rush by Neil Young
Taylorのフォーク調の楽曲に共通する繊細な歌詞とアコースティックサウンドが楽しめる名盤。
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