発売日: 2015年9月4日
ジャンル: ドリームポップ、フォークロック、スロウコア
All Yoursは、Widowspeakの3作目のスタジオアルバムであり、バンドの柔らかく繊細な音楽性をさらに洗練させた作品である。前作Almanacの広がりのあるサウンドスケープから一転して、All Yoursはミニマルで親密なアレンジを採用し、リスナーに穏やかな安心感をもたらす。アルバム全体に漂うリラックスした雰囲気とノスタルジックなトーンは、まるで黄昏時の静けさを音楽で表現したかのようだ。
モリー・ハミルトンの甘く囁くようなボーカルと、ロバート・アール・トーマスの優しいギタープレイが、アルバム全体の基調を作り上げている。歌詞には愛、喪失、郷愁といったテーマが描かれ、日常の中に潜む深い感情を掘り下げている。
トラック解説
1. All Yours
アルバムのタイトル曲で、控えめなギターと心地よいリズムが特徴的な楽曲。歌詞には恋愛における受容と献身が描かれており、モリーの優しい歌声が印象的だ。
2. Narrows
ゆったりとしたテンポで進行し、リフレインが耳に残る一曲。ギターの繊細なアルペジオと歌詞の内省的なトーンが美しく調和している。
3. Dead Love (So Still)
アルバムの中で最も切なく、静謐な楽曲。喪失と孤独をテーマにした歌詞が、シンプルなアレンジによって際立っている。
4. Stoned
アルバムの中でもややアップテンポな楽曲。軽やかなギターリフとリラックスしたボーカルが特徴で、自由と解放感を感じさせる。
5. Girls
メランコリックなムードが漂う一曲。歌詞には友情や青春時代の思い出が描かれており、モリーのボーカルが特に感情的に響く。
6. Borrowed World
ミニマルなリズムとドリーミーなギターワークが心地よい楽曲。歌詞には、日常の中に見いだされる儚さや美しさが込められている。
7. Cocaine Sweet
幻想的なギターの音色が楽曲を彩る。タイトルに反して落ち着いたトーンで進行し、アルバムの中でも特に詩的な一曲となっている。
8. Hands
軽快なリズムが特徴の楽曲。ギターとボーカルが織りなすシンプルなハーモニーが心地よく、リスナーを穏やかな気分にさせる。
9. My Baby’s Gonna Carry On
アルバムの中で特にフォーク色の強い楽曲。親しみやすいメロディと歌詞が、どこか懐かしさを感じさせる。
10. Harvest Moon
アルバムを締めくくる感動的なバラード。歌詞には季節の移ろいと共に変わりゆく感情が描かれており、アルバム全体を優しくまとめ上げる。
アルバム総評
All Yoursは、Widowspeakがこれまでの作品で培った美学をシンプルな形で表現した作品である。前作Almanacに比べると控えめで親密なアレンジが中心だが、その分、リスナーに直接語りかけるような感覚を与える。特にタイトル曲「All Yours」や「Dead Love (So Still)」は、バンドの持つ静かで感情的な魅力を存分に引き出している。
黄昏時や夜の静かなひとときにぴったりのアルバムであり、静けさとノスタルジアを求めるリスナーにとって、心地よい避難所のような作品となるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Mazzy Star – So Tonight That I Might See
Widowspeakと同じく、柔らかく夢幻的なボーカルとノスタルジックなムードが特徴の名盤。
Beach House – Depression Cherry
リラックスした雰囲気とドリーミーなサウンドが、All Yoursの穏やかなトーンに通じる。
Angel Olsen – Half Way Home
親密で感情的なフォークロックが、Widowspeakのファンにも響く。
Hope Sandoval and the Warm Inventions – Through the Devil Softly
静けさの中に潜む感情の深みが、All Yoursと重なる。
Weyes Blood – Titanic Rising
メランコリックで広がりのあるサウンドが、Widowspeakの音楽性と共鳴する。
コメント