発売日: 2007年6月15日
ジャンル: ガレージロック、ブルースロック、オルタナティブロック
Icky Thumpは、The White Stripesがリリースした6作目のアルバムであり、結果的にバンド最後のスタジオアルバムとなった。過去の作品に比べて、より幅広い音楽的実験が施され、アメリカ南部のブルースからケルト音楽、さらにはメキシコの音楽文化に至るまで、多様な要素が織り込まれている。また、これまで使用を避けてきたプロツールを使用して制作され、より洗練されたサウンドプロダクションが特徴的だ。
タイトル曲「Icky Thump」のヒットを含め、アルバムは批評家とリスナーから高く評価され、グラミー賞も受賞。シンプルな二人編成ながらも、サウンドの多様性と厚みでリスナーを驚かせる作品となっている。
トラック解説
1. Icky Thump
アルバムのタイトル曲であり、強烈なギターリフと電子オルガンの音色が特徴的な楽曲。歌詞は移民政策への皮肉を込めた内容で、ジャック・ホワイトの鋭い視点が反映されている。パワフルで政治的メッセージも強い一曲。
2. You Don’t Know What Love Is (You Just Do as You’re Told)
ミッドテンポのブルースロックナンバー。歌詞には愛に対する皮肉と諦念が込められており、キャッチーなメロディが印象的。ジャックのギターソロが楽曲のエモーショナルな核となっている。
3. 300 M.P.H. Torrential Outpour Blues
ゆったりとしたブルースサウンドで始まり、激しいギターリフへと切り替わるダイナミックな楽曲。歌詞には孤独や無力感が描かれており、音楽の緩急がその感情を効果的に伝えている。
4. Conquest
パッツィ・クラインの曲をカバーした一曲で、マリアッチ風のトランペットが特徴的。歌詞には勝利と敗北がテーマとして描かれ、The White Stripesらしい大胆な解釈が光る。
5. Bone Broke
荒々しいガレージロックの一曲。重厚なギターリフとメグ・ホワイトの力強いドラムが楽曲全体を支えている。短くも激しいエネルギーが詰まったナンバー。
6. Prickly Thorn, But Sweetly Worn
ケルト音楽の影響を受けたトラックで、バグパイプが印象的。独特な雰囲気を持ちながらも、The White Stripesのエッセンスが感じられる。伝統音楽への敬意を感じる一曲。
7. St. Andrew (This Battle Is in the Air)
前曲の流れを引き継ぐ、実験的なトラック。メグの不思議な詩の朗読とサイケデリックなアレンジが、アルバム全体に異質な空気を加えている。
8. Little Cream Soda
ノイジーなギターリフが印象的な攻撃的なロックナンバー。歌詞には消費文化への皮肉が込められており、ジャックの鋭い批評精神が感じられる。
9. Rag and Bone
ジャックとメグが会話形式で進行するユニークな楽曲。リサイクルや廃品収集をテーマにしており、軽快なギターリフと二人の掛け合いが楽しめる。
10. I’m Slowly Turning Into You
サイケデリックな要素が取り入れられた実験的な楽曲。シンプルなリフと反復的なメロディが中毒性を生み出している。タイトル通り、変化や融合がテーマ。
11. A Martyr for My Love for You
ジャックの繊細なボーカルが際立つバラード風のトラック。愛の犠牲をテーマにした歌詞が感情的で、ギターの静と動のコントラストが美しい。
12. Catch Hell Blues
純粋なブルースの影響を受けたトラック。ジャックのギターが曲の中心を占め、ブルースの即興的な要素が強調されている。
13. Effect and Cause
軽快でフォーク調のトラック。ジャックのウィットに富んだ歌詞が楽曲を彩り、アルバムの最後を明るく締めくくる。
アルバム総評
Icky Thumpは、The White Stripesが最後にして最も多様な音楽的挑戦を行ったアルバムである。ブルースやロックのルーツを保ちながらも、ケルト音楽やマリアッチなど多文化的な要素を取り入れることで、これまでの作品にはない広がりを見せた。また、政治的なメッセージを含む歌詞も多く、バンドとしての成熟を感じさせる。
タイトル曲「Icky Thump」をはじめ、「Conquest」や「You Don’t Know What Love Is」のような楽曲がアルバム全体を引き締めており、荒々しいガレージロックから実験的なトラックまで、幅広い楽曲が揃っている。本作は、The White Stripesの音楽的な頂点を示すとともに、彼らのキャリアを象徴する傑作だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Raconteurs – Consolers of the Lonely
ジャック・ホワイトがThe Raconteursとして発表した作品で、Icky Thumpの多様性とエネルギーを共有している。
Queens of the Stone Age – …Like Clockwork
大胆なサウンド実験とエモーショナルな楽曲が、Icky Thumpのファンに響く。
Led Zeppelin – Physical Graffiti
多文化的な要素とブルースロックの融合が、Icky Thumpのスピリットに通じる。
Black Keys – Brothers
シンプルな編成ながらも豊かなサウンドを作り上げたアルバムで、Icky Thumpのファンにおすすめ。
Pixies – Trompe le Monde
ジャンルを越えた実験的なサウンドが、Icky Thumpの冒険的な一面を思わせる。
コメント