Adored by Royel Otis（2024）楽曲解説

楽曲レビュー

2025.05.08

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. “誰かの特別でありたい”──Royel Otisが紡ぐ、静かな祈り

1. 歌詞の概要

「Adored」は、Royel Otisが2024年にリリースしたアルバム『PRATTS & PAIN』に収録された、ひたむきな愛情と憧れを繊細に描き出す楽曲である。

タイトルの「Adored（愛される、敬愛される）」という言葉が象徴するように、この曲は、誰かに心から認められたい、愛されたいという純粋な願望を、優しく、どこか痛みを帯びたトーンで表現している。
しかし、単なる幸福感にとどまらず、その「愛されたい」という気持ちの裏に潜む不安や孤独、そして「愛されるに値するのか？」という自己への問いかけも滲ませているのが、Royel Otisらしい。

ドリーミーなギターのアルペジオ、空間的なシンセの重なり、ふわりと漂うようなヴォーカル──そのすべてが、切なさと温かさが同時に胸に押し寄せる、特別な質感を作り上げている。

2. 歌詞のバックグラウンド

Royel Otisは、インディーポップ、ドリームポップ、サーフロックといったジャンルを横断しながら、いつも「感情の隙間」を繊細にすくい取ってきたデュオである。
「Adored」も、そんな彼らの音楽性がよく表れた一曲であり、『PRATTS & PAIN』というアルバム全体に流れる「不安定な幸福」「甘く切ないノスタルジー」というテーマを、端的に象徴している。

制作にあたっては、90年代のオルタナティブやシティポップの柔らかい影響を感じさせるサウンドを取り入れつつ、リバーブ感たっぷりのプロダクションで浮遊感を演出。
それによって、現実と夢の境界が曖昧になったかのような、不思議な没入感が生まれている。

「Adored」は、シンプルな言葉と構成でありながら、聴き手に深い余韻を残す力を持った楽曲なのである。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「Adored」の印象的なフレーズを抜粋し、和訳とともに紹介する。

“I just wanna be adored by you”
ただ、君に愛されたいだけ

“Tell me I’m enough for you”
僕が君にとって十分な存在だって言ってほしい

“Hold me in the way you do”
君だけのやり方で、僕を抱きしめて

“Don’t let me slip away”
この手から、僕を離さないで

これらのフレーズは、愛されたいという願いと、その裏にある「失われることへの怖れ」が、素直な言葉でまっすぐに表現されている。

※歌詞引用元：Genius Lyrics

4. 歌詞の考察

「Adored」は、愛されることを求める感情を、きわめてストレートに、しかし極端に甘ったるくすることなく描いている。
それは、誰もが心の奥でひそかに抱えている、ありふれたけれど痛切な欲望だ。

“I just wanna be adored by you”──このシンプルな願いの中には、「誰かの特別でありたい」という、普遍的で切実な想いが詰まっている。
そして、”Tell me I’m enough for you”というラインには、自己肯定感の揺れが滲んでいる。
ただ愛されたい、ではない。「十分な存在だと言ってほしい」という、この微妙なニュアンスこそが、Royel Otisの描く愛のリアリティなのである。

また、”Don’t let me slip away”（僕を離さないで）というフレーズは、愛を求める一方で、それがどれほど脆いものかを知っている者の声のようにも聞こえる。
愛は絶対的なものではない。いつか失われるかもしれない──それを知りながら、それでもなお手を伸ばす。
そんな矛盾と純粋さが、この曲の魅力を一層深めている。