発売日: 2016年9月30日
ジャンル: アンビエント / ポストロック / エレクトロニカ
「Epoch」は、Tychoの4作目のスタジオアルバムであり、グラミー賞にもノミネートされた、彼のキャリアの中でも特に評価の高い作品だ。前作「Awake」で確立したバンド編成によるダイナミックなスタイルをさらに深化させつつ、エレクトロニックとオーガニックな要素のバランスが一層洗練されている。本作は、タイトルの「Epoch（時代）」が示す通り、時間や変化、進化をテーマにしたアルバムで、楽曲ごとに異なる情景や感情が広がる。
Tycho（本名: Scott Hansen）の特徴である美しいシンセサウンドと、ギター、ベース、ドラムの絡み合いが絶妙に展開され、アルバム全体に統一感を持たせながらも楽曲ごとの個性を際立たせている。リリースはサプライズ形式で行われ、その意外性と完成度の高さがファンや批評家から大きな注目を集めた。
各トラック解説
1. Glider
アルバムの幕開けを飾るトラックで、柔らかいシンセサウンドとリズミカルなビートが心地よい。広がりのある音響が、タイトル通り滑空するような感覚を与える。
2. Horizon
ギターとシンセの調和が美しいトラックで、広大な地平線をイメージさせる。感情を揺さぶるメロディと前向きなエネルギーが印象的。
3. Slack
ダイナミックなビートと浮遊感のあるシンセが特徴。やや重厚なトーンで、内省的なムードが漂う楽曲。
4. Receiver
軽快なリズムと優雅なメロディが調和したトラック。聴く人を癒しと穏やかな空間へと誘う心地よいサウンドスケープが展開される。
5. Epoch
アルバムのタイトル曲であり、力強いドラムビートとギターリフが印象的な楽曲。アルバム全体の中心を担う一曲で、進化や変化を象徴するようなダイナミックな構成が光る。
6. Division
緊張感のあるビートとシンセサウンドが際立つトラック。夜の都会を彷彿とさせるムーディーな雰囲気が漂う。
7. Source
アンビエント色が強い楽曲で、静寂の中に潜む動きを感じさせるような繊細なサウンド。瞑想的で心を落ち着かせる。
8. Local
テンポの速いリズムと明るいシンセのメロディが印象的な楽曲。エネルギッシュで前向きなトーンが特徴。
9. Rings
ギターとシンセの掛け合いが美しいトラック。タイトルが暗示するように、循環や繰り返しを感じさせるメロディが心地よい。
10. Continuum
アルバムの終盤を彩る壮大なトラック。時間の流れを感じさせるような構成と、徐々に高まる緊張感が見事に表現されている。
11. Field
アルバムのフィナーレを飾る穏やかな楽曲。希望に満ちたシンセのメロディが、リスナーに深い余韻を与えながら幕を閉じる。
アルバム総評
「Epoch」は、Tychoがこれまで培ってきた音楽性を総括しながらも、新たな挑戦を盛り込んだ野心的な作品だ。アンビエント、エレクトロニカ、ポストロックの要素が完璧なバランスで融合し、リスナーに心地よい没入感を提供する。特に「Epoch」や「Horizon」などのトラックは、ダイナミックな構成と感情的な深みを持ち、アルバムのハイライトとなっている。全体としては、変化と進化をテーマにしつつも、Tychoのサウンドの核心部分である癒しと静謐さを失わない一貫性を保っている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Weather by Tycho
次作であり、ボーカルを取り入れるなど、さらなる進化を遂げたTychoの新しい一面を楽しめるアルバム。
The Campfire Headphase by Boards of Canada
アンビエントとメロディックな要素が融合した作品で、Tychoファンに刺さるノスタルジックなサウンド。
Ghostly Swim by Various Artists
Tychoが所属するレーベルGhostly Internationalによるコンピレーションで、同系統のアーティストを楽しめる。
Dive by Tycho
本作の前々作であり、アンビエントサウンドがより強調された彼の代表作のひとつ。
Immunity by Jon Hopkins
ダイナミックなビートとアンビエントサウンドが融合した作品で、Tychoのリズミカルな側面が好きな人におすすめ。
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