発売日: 2017年2月24日
ジャンル: サイケデリックロック、アナトリアンロック、エクスペリメンタルロック、ガレージロック
King Gizzard & the Lizard Wizardの「Flying Microtonal Banana」は、バンドの2017年にリリースした5枚のアルバムのうちの1作目であり、彼らの音楽的実験精神が見事に表現された作品である。このアルバムの最大の特徴は、マイクロトーナル(微分音)を取り入れたサウンドで、バンドが特別にカスタマイズした楽器を使用している点だ。従来の西洋音楽の12平均律ではなく、トルコや中東の音楽に影響を受けた24分割の音階が使われており、独特の緊張感とエキゾチックな響きを生み出している。
「Flying Microtonal Banana」は、アナトリアンロックやサイケデリックロックといった要素が混ざり合い、異国情緒あふれるサウンドスケープを描き出す。通常のロックバンドでは聴けない新しい音階が不思議な浮遊感を生み、リスナーを未知の世界へと誘う。本作を通じてKing Gizzard & the Lizard Wizardは、実験的かつ聴きやすい音楽の可能性を示し、バンドの音楽的進化を象徴する作品となっている。
各曲解説
1. Rattlesnake
アルバムの幕開けを飾る「Rattlesnake」は、反復的なリフとドラムがトランス感を生み出す長尺ナンバー。シャウト調のボーカルとミニマルなビートが特徴で、バンドのエネルギーが溢れ出ている。繰り返される「Rattlesnake」というフレーズが中毒性を持ち、聴く者を一気に引き込む。
2. Melting
エキゾチックなメロディが魅力の「Melting」は、マイクロトーナルなギターが曲全体を支配し、聴く者に異国の地を彷彿とさせる。メロディとビートが絡み合い、夢のようなサウンドが広がる。
3. Open Water
「Open Water」は、力強いドラムと歪んだギターリフが展開される、ダークで重厚な一曲。波が押し寄せるような迫力のあるサウンドが、サイケデリックな浮遊感を強調している。危険な深海に引き込まれるような緊張感が漂う。
4. Sleep Drifter
ゆったりとしたテンポで進行する「Sleep Drifter」は、メロディアスでドリーミーな雰囲気が漂う一曲。マイクロトーナルな響きが、眠りと覚醒の狭間にいるような感覚を生み出し、柔らかで浮遊感のあるサウンドが特徴。
5. Billabong Valley
エキゾチックなイントロが印象的な「Billabong Valley」は、アナトリアンロックに影響を受けたサウンドとリズムが融合している。トルコの民族音楽を思わせるメロディが神秘的で、冒険心を掻き立てられるような一曲だ。
6. Anoxia
激しいリズムが特徴の「Anoxia」は、ミニマルな構成でトランス感を生み出す。ギターリフとビートが繰り返され、息苦しさと高揚感が交錯する。マイクロトーナルなエフェクトが緊迫感を強調し、独特の音響空間が広がる。
7. Doom City
「Doom City」は、ヘヴィなギターリフとダークなボーカルが印象的なトラックで、タイトル通りの不吉なムードが漂う。ディストーションが効いたギターサウンドと、反復されるメロディが聴く者を圧倒する。
8. Nuclear Fusion
サイケデリックなビートが特徴の「Nuclear Fusion」は、リズムが耳に残るファンキーな一曲。シンセサウンドが不思議な空気を漂わせ、軽快ながらもどこかミステリアスな雰囲気が楽しめる。
9. Flying Microtonal Banana
アルバムのタイトル曲「Flying Microtonal Banana」は、ゆったりとしたテンポの中にサイケデリックな要素が散りばめられたインストゥルメンタル。アルバム全体の総括ともいえるこの曲は、ミニマルで反復的なリフが印象的で、アルバムを締めくくる壮大なフィナーレを飾る。
アルバム総評
「Flying Microtonal Banana」は、King Gizzard & the Lizard Wizardの実験的な音楽性が存分に発揮された一枚であり、バンドの多様なサウンド探求が感じられる。マイクロトーナルの音階によって異国情緒あふれるサウンドスケープが生み出され、通常のロック音楽では味わえない独特の音響体験を提供する。サイケデリックでありながらも聴きやすいリズムとメロディが、リスナーを夢のような音の旅へと誘う。「Flying Microtonal Banana」は、バンドの音楽的な探究心と創造力が集約された作品であり、King Gizzard & the Lizard Wizardの幅広い音楽性を知る上で必聴の一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
You’re Dead! by Flying Lotus
実験的な音楽構成とエキゾチックなサウンドが共通しており、サイケデリックでミステリアスな雰囲気が「Flying Microtonal Banana」と響き合う。
Electric Mud by Muddy Waters
ブルースとサイケデリックが融合したユニークな作品。異なるジャンルを融合する姿勢がKing Gizzardの実験性に共通する。
Inspiration Information by Shuggie Otis
サイケデリックとソウルの融合が特徴で、独特の浮遊感とエキゾチックな雰囲気が「Flying Microtonal Banana」と通じる。
Volume 7 by Turkish Freakout
トルコ音楽とサイケデリックのミックスが楽しめる一枚。アナトリアンロックの影響があるKing Gizzardファンにとっても新鮮に感じられる。
Axis: Bold as Love by The Jimi Hendrix Experience
サイケデリックロックの名盤で、ギターとエフェクトの多様な音使いが「Flying Microtonal Banana」に通じる。新しいサウンドに挑戦する精神が共通。
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