発売日: 2015年9月25日
ジャンル: インディーロック、フォークロック、サイケデリックフォーク
カート・ヴァイルの6枚目のスタジオアルバムであるb’lieve i’m goin down…は、彼の音楽スタイルがさらに深化した作品であり、特に内省的でダークなテーマが漂う作品である。このアルバムでは、ピアノやバンジョーといった新しい楽器を積極的に取り入れ、これまでのアコースティックギター中心のサウンドに新鮮な風を吹き込んでいる。また、ヴァイルの特徴的なリラックスしたボーカルと歌詞が際立ち、彼自身が抱える不安や孤独感がリアルに伝わってくる。
アルバム全体には、アメリカーナの影響が感じられ、サイケデリックでありながらも親しみやすいサウンドが特徴だ。「Pretty Pimpin」や「Life Like This」などのシングル曲は、カート・ヴァイルの音楽的進化を象徴する楽曲であり、彼の成長したソングライティングの魅力が詰まっている。b’lieve i’m goin down…は、彼のキャリアにおける新たな挑戦と熟練が感じられる作品であり、リスナーを彼の深い音楽的な旅へと誘う一枚だ。
トラックごとの解説
1. Pretty Pimpin
アルバムのオープニングトラックであり、彼の代表曲の一つ。軽快なギターリフと共に、アイデンティティの喪失と自分探しがテーマとなっている。キャッチーなメロディと詩的な歌詞が見事に融合している。
2. I’m an Outlaw
バンジョーが主役となる珍しい楽曲で、アメリカーナの影響が色濃い。アウトローとしての自己イメージがユーモラスに描かれており、ダークなテーマと軽快なサウンドの対比が面白い。
3. Dust Bunnies
リズミカルなピアノが特徴的で、明るいサウンドながらも、歌詞には孤独や不安が滲み出ている。エレクトリックピアノが曲にドリーミーな雰囲気を加えている。
4. That’s Life, Tho (Almost Hate to Say)
ミディアムテンポで、柔らかなギターと控えめなボーカルが印象的。人生の浮き沈みを穏やかに受け入れる姿勢が感じられ、彼の成熟した視点が表れている。
5. Wheelhouse
アルバムの中でも特に長尺で、メランコリックなギターと内省的なリリックが特徴的。ゆったりとしたテンポで、リスナーに深い余韻を残す。
6. Life Like This
ピアノを主軸にしたリズムが軽快なトラックで、シンプルながらも洗練されたアレンジが光る。日常の小さな瞬間を描いた歌詞が印象的で、リラックスした雰囲気に包まれている。
7. All in a Daze Work
ブルージーでゆったりとしたテンポの楽曲で、日常生活の憂鬱を表現している。ヴァイルの語るようなボーカルが、詩的で深い味わいを与えている。
8. Lost my Head there
ファンキーでグルーヴィーなピアノリフが特徴的な一曲で、ユニークな展開が面白い。リズムセクションがしっかりと楽曲を支え、アルバムの中でひときわ目立つ存在。
9. Stand Inside
内省的でシンプルなギターサウンドが印象的で、瞑想的な雰囲気が漂う。ヴァイルの静かなボーカルが、リスナーを彼の心の深い部分へと引き込む。
10. Bad Omens
アルバムの中でも特にダークな楽曲で、悪い予兆や不安感を描いている。ギターのリフが幽玄なムードを生み出し、幻想的な雰囲気に包まれている。
11. Kidding Around
軽快でリズミカルなサウンドが特徴のトラックで、アメリカーナの要素が強い。リリックには若干の皮肉が込められ、ヴァイルのユーモアが感じられる。
12. Wild Imagination
アルバムのフィナーレを飾る、メロウでゆったりとしたナンバー。人生の複雑さや人間関係の深さがテーマとなり、ヴァイルの静かな歌声が余韻を残すエンディングにふさわしい。
アルバム総評
b’lieve i’m goin down…は、カート・ヴァイルがフォークロックやアメリカーナに新たなアプローチを加え、さらに成長した姿を見せた作品である。ピアノやバンジョーといった新しい楽器を用いることで、サウンドの幅が広がり、彼の音楽がさらに立体的に感じられる。人生の憂鬱や孤独、不安といった普遍的なテーマがヴァイルの独特な語り口で表現され、リスナーを彼の内面的な世界に引き込む。キャッチーな「Pretty Pimpin」から内省的な「Wild Imagination」まで、アルバム全体を通じてヴァイルの音楽的な魅力が詰まっている。b’lieve i’m goin down…は、ヴァイルの音楽の深さと彼の個性が見事に融合した傑作であり、彼のファンにとっても新たなリスナーにとってもおすすめの一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Lost in the Dream by The War on Drugs
カート・ヴァイルの元バンドメイト、アダム・グランデュシエル率いる作品で、広がりのあるサウンドとメランコリックなムードが共通している。
Fear Fun by Father John Misty
フォークとロックが融合したアルバムで、詩的で内省的な歌詞が魅力。ヴァイルのシンプルでメランコリックなサウンドが好きなリスナーにおすすめ。
Ashes & Fire by Ryan Adams
フォークとロックの調和が美しい一枚で、カート・ヴァイルのメランコリックなギターサウンドと共通する要素が多い。心に染み入る歌詞とメロディが特徴的。
Pink Moon by Nick Drake
アコースティックなサウンドと内省的な歌詞が響き合う名盤。シンプルで感情に訴えかけるサウンドが、ヴァイルの世界観と共鳴する。
Strangers Almanac by Whiskeytown
アメリカーナとフォークロックの調和が魅力のアルバムで、カート・ヴァイルの音楽性に近い空気を持っている。ノスタルジックで情感豊かな一枚。
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