発売日: 2013年4月9日
ジャンル: インディーロック、フォークロック、サイケデリックロック
Wakin on a Pretty Dazeは、カート・ヴァイルがソロアーティストとしての地位を確固たるものにしたアルバムであり、彼の音楽的な成熟を示す6枚目のスタジオアルバムである。この作品では、独特のリラックスした雰囲気とメロウなギターサウンドが全編を支配し、アルバムの約70分間を通じて彼の飾らない、流れるような音楽世界が展開される。カート・ヴァイルは、内省的でありながらも希望に満ちた歌詞と、ゆったりとしたテンポのギターワークを駆使して、聴く者を穏やかな旅へと誘うようなサウンドを作り上げている。
このアルバムは、彼のバンド「The Violators」との共同作業によって生み出されたもので、プロデューサーにはジョン・アニエロが参加している。ローファイなサウンドを保ちながらも、洗練されたアレンジが施され、彼の特有のサイケデリックな側面が色濃く反映されている。収録曲「Wakin on a Pretty Day」や「KV Crimes」は、カート・ヴァイルの音楽的なレンジの広さと、リスナーを包み込む心地よいメロディを持つ代表的な楽曲であり、彼のファンのみならず、フォークロックやサイケデリックロックを愛するリスナーにも強くアピールする。
トラックごとの解説
1. Wakin on a Pretty Day
アルバムを象徴する長尺のオープニングトラックで、リラックスしたギターとメランコリックなムードが漂う。11分以上のランタイムがあり、ゆったりとしたテンポが聴く者をリラックスさせる。
2. KV Crimes
エネルギッシュでポップなリズムが特徴的なナンバーで、アルバムの中で最もキャッチーな楽曲のひとつ。軽快なギターリフと開放感のあるメロディが印象的で、ライブでも盛り上がる一曲。
3. Was All Talk
シンセサイザーを取り入れたサウンドが特徴的な曲で、メロディの中に浮遊感が漂う。アコースティックギターとエレクトロニックなビートの組み合わせが斬新。
4. Girl Called Alex
ゆったりとしたリズムとシンプルなギターのアルペジオが美しいバラード。歌詞には個人的な思いが込められており、カート・ヴァイルの優しいボーカルが曲に深みを与えている。
5. Never Run Away
明るく軽快なトラックで、彼の音楽の中では比較的ポップな楽曲。前向きな歌詞とシンガロングしやすいメロディが特徴で、アルバムの中でもひときわキャッチー。
6. Pure Pain
ブルージーでメランコリックなトーンが漂うトラックで、内省的な歌詞が際立つ。ギターのリフが繊細で、曲全体にどこか切ない雰囲気をもたらしている。
7. Too Hard
穏やかなテンポと落ち着いたギターのアルペジオが印象的で、自己探求や人生の不安に触れる歌詞が深みを与えている。心地よいリズムと柔らかいボーカルがリスナーを包み込むような一曲。
8. Shame Chamber
ファンキーなビートとエネルギッシュなギターリフが特徴の楽曲で、アルバムの中でも特にテンポが早い。カート・ヴァイルの遊び心が垣間見える明るいナンバー。
9. Snowflakes Are Dancing
幻想的なサウンドスケープが広がる、冬の静けさを思わせるトラック。繊細なギタープレイと柔らかなボーカルが合わさり、アルバムの中でも特にドリーミーな雰囲気を持っている。
10. Air Bud
シンプルなギターリフが繰り返されるミディアムテンポのナンバーで、静かなエネルギーが曲全体に漂う。カート・ヴァイルの内省的な一面が感じられる。
11. Goldtone
アルバムのフィナーレを飾る長尺の楽曲で、サイケデリックなムードが満載。エフェクトのかかったボーカルとリズミカルなギターが心地よく、壮大で瞑想的な雰囲気を持つ。
アルバム総評
Wakin on a Pretty Dazeは、カート・ヴァイルが自身の音楽スタイルを洗練し、インディーロックとフォークロックの中で独自の地位を築いた作品である。リラックスしたサウンドと詩的な歌詞が、長尺の曲にもかかわらず飽きさせない魅力を放ち、ヴァイルの内省的な一面と楽観的な視点が絶妙に融合している。プロデューサーのジョン・アニエロとともに、緻密なアレンジとリッチなサウンドスケープが施されており、彼の音楽的な成熟を感じさせる。Wakin on a Pretty Dazeは、カート・ヴァイルのキャリアの中でひとつの頂点を示し、リスナーを心地よい音楽の旅へと誘う名盤である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Lost in the Dream by The War on Drugs
カート・ヴァイルの元バンドメイト、アダム・グランデュシエルによる作品で、広がりのあるサウンドとメランコリックなムードが共通している。
Fear Fun by Father John Misty
フォークとロックが融合したアルバムで、詩的で内省的な歌詞が魅力。ヴァイルのシンプルでメランコリックなサウンドが好きなリスナーにおすすめ。
Sky Blue Sky by Wilco
シンプルで親しみやすいフォークロックの名盤。ヴァイルのリラックスしたサウンドと共通点が多く、ゆったりとした雰囲気が心地よい。
Benji by Sun Kil Moon
感情的でローファイなアルバムで、内省的な歌詞とメロディが共鳴する作品。カート・ヴァイルの静かなエネルギーを感じるリスナーにぴったり。
Ashes & Fire by Ryan Adams
フォークとロックの調和が美しい一枚で、カート・ヴァイルのメランコリックなギターサウンドと共通する要素が多い。心に染み入る歌詞とメロディが特徴的。
コメント