- 発売日: 1993年2月9日
- ジャンル: オルタナティブロック、グランジ、インディーロック
Dinosaur Jr.の5作目のアルバムWhere You Beenは、1990年代初頭のオルタナティブロックのシーンを代表する重要な作品である。前作Green Mindに続き、J・マスキスがバンドの中心人物としてほぼ全てを手がけているが、今作ではメンバーのマーフがドラムで復帰し、以前よりもバンドとしての一体感が強くなった。また、サウンドもよりスケールが大きく、リッチで洗練されたプロダクションが施されている。
このアルバムは、ノイズロックの荒々しさと、メロディアスでキャッチーな要素が絶妙にブレンドされており、Dinosaur Jr.の特徴である爆発的なギタープレイと、マスキスの飄々としたボーカルが一層引き立っている。特に「Start Choppin」や「Out There」といったシングル曲は、メロディアスでエネルギッシュな楽曲として評価が高く、グランジムーブメントの中でもDinosaur Jr.が唯一無二の存在であることを示している。
トラック解説
1. Out There
アルバムの冒頭を飾る強烈な一曲。J・マスキスのギターが爆発的に響き、シンプルなコード進行が深みを持たせている。歌詞は疎外感や孤独感をテーマにしており、マスキスの淡々としたボーカルが絶妙にマッチしている。スローなテンポで進行し、途中のギターソロが特に圧巻で、楽曲にエモーショナルな迫力を加えている。
2. Start Choppin
アルバムの代表曲にして、Dinosaur Jr.の中でも特に人気の高い一曲。軽快なリフとキャッチーなメロディラインが心地よく、リズムセクションも安定感がある。歌詞では、自己否定や葛藤が描かれており、マスキスの飄々としたボーカルがそのテーマを引き立てている。ギターソロが何度も挿入され、エネルギッシュでポップな要素が詰まっている。
3. What Else Is New
メランコリックなギターメロディが特徴的で、ゆったりとしたテンポで進行する一曲。マスキスのボーカルが淡々とした抑揚で歌うことで、寂しさや喪失感がより際立つ。ギターソロが長く続く後半部分は、感情がむき出しになったかのようで、聴く者に深い余韻を残す。
4. On the Way
テンポが速く、アグレッシブなギターが主役を務める一曲。疾走感のあるリズムが、歌詞に込められた焦燥感や不安を強調している。力強いドラムとベースが一体となり、バンドのエネルギーが存分に発揮されている。
5. Not the Same
アルバムの中でも特に内省的な楽曲で、静かなギターサウンドと控えめなボーカルが特徴。抑えたテンポとメランコリックなメロディが、失恋や自己喪失をテーマにした歌詞と調和し、リスナーに深い感情的なインパクトを与える。
6. Get Me
キャッチーなリフと繊細なメロディラインが際立つ一曲で、アルバムの中でも特にポップなサウンドが魅力。ノイズとメロディのバランスが絶妙で、マスキスのボーカルが優しげに響く。リスナーに切なさと解放感を同時に感じさせる。
7. Drawings
スローテンポで進行し、サウンドが徐々に重厚になる一曲。繰り返されるリフが、まるで自己探求の過程を描いているようで、迷いや孤独感が表現されている。マスキスの抑揚を抑えたボーカルが、曲の持つ内向的な雰囲気を強調している。
8. Hide
疾走感があり、ダイナミックなギターリフが印象的な一曲。リズムの激しさと歌詞の繊細さが対比を成しており、Dinosaur Jr.ならではの個性的なサウンドが際立っている。特にギターソロが冴え渡り、聴く者に強烈なエネルギーを与える。
9. Goin Home
アコースティックサウンドが前面に出たナンバーで、バンドの新しい一面を見せる楽曲。マスキスの柔らかいボーカルとギターが穏やかなムードを作り出し、故郷や過去への郷愁を感じさせる。落ち着いた雰囲気の中に、どこか切なさが漂う。
10. I Ain’t Sayin
アルバムのラストを飾るアップテンポの楽曲で、力強いドラムとギターリフがエネルギーに満ちている。自己主張や強い意志が歌詞に込められており、アルバムのフィナーレにふさわしい力強いエンディングだ。
アルバム総評
Where You Beenは、Dinosaur Jr.がそのサウンドをさらに進化させ、メロディとノイズの融合をより洗練させたアルバムである。特に「Start Choppin」や「Out There」といったシングル曲は、90年代オルタナティブロックの象徴ともいえる完成度を誇り、グランジのシーンにおいても彼らが唯一無二の存在であることを示している。マスキスの独特なボーカルと、荒々しいギタープレイが随所で光り、聴く者に深い感情的なインパクトを与える。アルバム全体に漂うメランコリックなムードと、時に爆発するエネルギーが絶妙なバランスで混ざり合っており、Dinosaur Jr.の集大成ともいえる一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Superunknown by Soundgarden
ヘヴィなギターリフとメランコリックなムードがDinosaur Jr.に通じる。グランジとオルタナティブロックが融合した傑作で、深い感情表現が魅力。 - In Utero by Nirvana
ノイズとメロディが絶妙に交差し、Dinosaur Jr.と共通するエネルギーがある。荒削りなサウンドの中に潜む美しさが印象的。 - Crooked Rain, Crooked Rain by Pavement
メロディアスでありながらもローファイな要素が感じられるアルバム。Dinosaur Jr.のファンには、ポップでキャッチーなサウンドが刺さる。 - Siamese Dream by The Smashing Pumpkins
ギター中心のサウンドが特徴で、メロディアスな楽曲とヘヴィなエネルギーが融合。Dinosaur Jr.のファンには、特にギターワークが楽しめる一枚。 - Bubble and Scrape by Sebadoh
ルー・バーロウの別バンドで、内省的な歌詞とノイズロック的なサウンドが特徴。Dinosaur Jr.とは異なる視点からのオルタナティブロックが楽しめる。
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