発売日: 2014年5月19日
ジャンル: フォークロック、ポップロック
より深みを増したサウンドとアーティスト性の確立
2012年のデビューアルバム The World from the Side of the Moon で大ヒットを記録した Phillip Phillips が、2年後にリリースしたセカンドアルバム Behind the Light は、より成熟したサウンドと音楽的挑戦を感じさせる作品だ。
デビュー作の延長線上にあるフォークロックのスタイルを維持しながらも、より複雑な楽曲構成や、エレクトリックギターを取り入れたダイナミックなサウンドが特徴的。Phillipsのギタープレイも際立ち、ポップ寄りだった前作と比べて、よりオルタナティブ・ロックやプログレッシブな要素を取り入れているのが印象的だ。
リリース当時は、American Idol 出身のアーティストという枠を超え、アーティストとしての地位を確立するための試みが見られた作品として注目された。
全曲レビュー
1. Searchlight
オープニングを飾る力強い楽曲。ギターのアルペジオとストリングスのアレンジが壮大な雰囲気を醸し出し、Phillipsのエモーショナルなボーカルが際立つ。
2. Raging Fire
アルバムのリードシングル。キャッチーで情熱的な楽曲で、Phillipsの持ち味であるアコースティックサウンドにロックのエネルギーを加えたナンバー。サビの力強いメロディが印象的で、ライブ映えする一曲。
3. Trigger
エレクトリックギターが前面に出た、ダークで緊張感のある楽曲。フォークロックの枠を超えた新しいアプローチが感じられる。
4. Lead On
アコースティックなギターとリズムの軽快さが特徴的なミドルテンポの楽曲。Phillipsらしい温かみのあるメロディが心地よい。
5. Alive Again
ドラマティックな構成の楽曲で、オルタナティブロックの影響を感じさせる。静と動のコントラストが際立ち、アルバムの中でも特に実験的なナンバー。
6. Open Your Eyes
ゆったりとしたテンポながら、壮大なサウンドスケープを持つ楽曲。映画のサウンドトラックのような雰囲気があり、Phillipsのボーカルが感情的に響く。
7. Fool for You
アコースティックな要素を前面に出したバラード。切ない歌詞と美しいギターの旋律が、シンプルながらも深みのある楽曲に仕上がっている。
8. Thicket
エネルギッシュなアレンジと独特なリズムが特徴のトラック。Phillipsのギターの技巧が光る一曲で、彼の音楽的探求心が感じられる。
9. Fly
シンプルなイントロから始まり、次第に壮大なサウンドへと展開する楽曲。アレンジの緻密さとドラマティックな展開がアルバムの中でも際立つ。
10. Unpack Your Heart
アルバムの中でも特にポップ寄りの楽曲で、キャッチーなメロディと前向きな歌詞が特徴。Phillipsの親しみやすい音楽性が表れている。
11. Face
ミステリアスな雰囲気を持つ楽曲。シンプルながらも内省的な歌詞が印象的で、アルバムの中でも異色の存在。
12. Midnight Sun
テンポの速いロックナンバー。Phillipsのギターが炸裂し、ダイナミックな展開が楽しめる楽曲。
13. My Boy
アルバムを締めくくる穏やかなバラード。親子の愛をテーマにした感動的な歌詞が特徴で、Phillipsの温かい歌声が染み渡る。
総評
Behind the Light は、Phillip Phillipsがデビュー作から大きく成長し、より深みのある音楽を追求したアルバムだ。シンプルなアコースティックフォークの枠を超え、エレクトリックギターや壮大なアレンジを取り入れたことで、よりロック寄りのサウンドへと進化 している。
また、楽曲のテーマもより幅広くなり、恋愛だけでなく人生や自己探求を描いた曲が多くなっている。デビュー作のようなキャッチーなヒット曲は少ないが、全体的な完成度は高く、聴き込むほどに味わいが増すアルバムだ。
おすすめのリスナー:
- The World from the Side of the Moon を気に入った人で、よりロック寄りのサウンドを求める人
- Dave Matthews BandやMumford & Sonsのようなフォークロック系アーティストが好きな人
- シンプルなポップロックではなく、深みのあるサウンドを好む人
おすすめアルバム
1. Dave Matthews Band – Big Whiskey and the GrooGrux King (2009)
Phillipsが強く影響を受けたバンドの一枚。ジャムバンド的な要素が強く、フォークとロックの融合が楽しめる。
2. Mumford & Sons – Wilder Mind (2015)
フォークロックからオルタナティブロックへとシフトした作品で、Phillipsの進化と通じる部分がある。
3. John Mayer – Battle Studies (2009)
ギタープレイと叙情的な歌詞が特徴的で、Phillipsの音楽と共鳴する要素が多い。
4. Vance Joy – Nation of Two (2018)
アコースティックを基調としたフォークポップで、Phillipsの持つ温かみのあるサウンドと親和性が高い。
5. The Lumineers – III (2019)
物語性のあるフォークロック作品で、Phillipsの音楽と同じく、シンプルながらも深みのある楽曲が揃っている。
Behind the Light は、Phillip Phillipsのアーティストとしての成長を示す作品であり、フォークロックの可能性を広げた意欲作だ。よりエネルギッシュな楽曲が増え、サウンドの厚みが増したことで、彼の音楽の新たな魅力を発見できるアルバムとなっている。
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