発売日: 2014年7月15日
ジャンル: オルタナティブロック、インディーロック
World Peace Is None of Your Businessは、モリッシーの10作目のスタジオアルバムであり、彼の政治的・社会的な視点が色濃く反映された作品だ。タイトルからして、彼が現代の政治や社会に対して持つ強い批判の姿勢が明確に示されている。アルバム全体を通して、モリッシーは世界情勢や社会の偽善、個人の苦悩に深く切り込んでおり、彼特有のアイロニーとシニカルなユーモアが散りばめられている。音楽的には、フラメンコやボサノバの要素を取り入れた多様なサウンドが展開されており、モリッシーのメッセージを支える強力なバックグラウンドとなっている。
各曲ごとの解説:
- World Peace Is None of Your Business
アルバムのタイトル曲であり、グローバルな政治に対する辛辣なコメントを含んだ楽曲。落ち着いたギターフレーズとスペーシーなサウンドが、モリッシーの批判的な歌詞を引き立てている。政府や支配者層に対する無力感がテーマとなっており、モリッシーの厭世的な視点が強く感じられる。 - Neal Cassady Drops Dead
ビート・ジェネレーションの象徴的な人物であるニール・キャサディを題材にした曲。緊張感のあるリズムと挑発的な歌詞が絡み合い、社会の表裏に対するモリッシーの批判が浮き彫りにされている。リズミカルなギターリフが耳に残る一曲。 - I’m Not a Man
モリッシーの自己省察的な曲で、伝統的な男性性の概念に対する挑戦がテーマ。壮大でドラマティックなサウンドが、彼の内面の葛藤を象徴しており、ジェンダーに対する彼の複雑な視点を強調している。約7分という長さで、重厚なアレンジとともに深いメッセージが込められている。 - Istanbul
フラメンコのリズムとオリエンタルなメロディが融合したエキゾチックな楽曲。モリッシーはイスタンブールを舞台に、父親と息子の物語を紡ぎながら、失われた希望や家族の絆を描く。美しいメロディラインと豊かな楽器アレンジが印象的。 - Earth Is the Loneliest Planet
アコースティックギターとボサノバ風のリズムが特徴的な曲で、地球上での孤独感を描いている。モリッシー特有の悲観的な視点と、地球という舞台での人間の孤立感をテーマにした深い歌詞が際立つ。 - Staircase at the University
大学生活のプレッシャーと自殺を扱った衝撃的な楽曲。ポップで軽快なサウンドとは裏腹に、厳しい現実とプレッシャーに押し潰される学生の姿が描かれている。対照的な明るいメロディが、歌詞の暗さをより際立たせている。 - The Bullfighter Dies
動物愛護をテーマにした短い楽曲で、モリッシーの菜食主義者としての信念が反映されている。軽快なテンポとストレートな歌詞が特徴で、牛追いをテーマにしながら、動物虐待に対する強いメッセージを込めている。 - Kiss Me a Lot
ラブソングのように聞こえるが、皮肉やモリッシーらしいユーモアが込められた一曲。フラメンコギターが鮮やかに響き、ポップなメロディとリズムが印象的な楽曲で、アルバムの中では軽快なトーンを持っている。 - Smiler with Knife
静かで不穏なムードを持つバラードで、愛と裏切りの物語を描いている。アコースティックなアレンジが際立ち、モリッシーのボーカルが感情的に響く。暗く神秘的な雰囲気が、曲全体を包み込んでいる。 - Kick the Bride Down the Aisle
皮肉に満ちた歌詞で、結婚制度や伝統的な価値観に対する批判を込めた曲。ミッドテンポのロックサウンドに乗せて、モリッシーは社会の期待に逆らう姿勢を貫いている。 - Mountjoy
アイルランドの刑務所「マウントジョイ刑務所」をテーマにした曲。人生の虚しさや自由の欠如を描いた暗いトーンの楽曲で、モリッシーの厳しい世界観が反映されている。静かなギターの伴奏が、曲の悲哀感を引き立てている。 - Oboe Concerto
アルバムのラストを飾るこの楽曲は、優雅なオーボエの旋律が印象的なバラード。死と孤独をテーマにした歌詞が、静かながらも深い余韻を残す。モリッシーの独特の感傷的な表現が詩的に展開され、アルバムを締めくくるにふさわしい一曲。
アルバム総評:
World Peace Is None of Your Businessは、モリッシーの政治的・社会的な視点が強く表れた作品であり、彼のキャリアの中でも特に挑戦的なアルバムだ。タイトル曲や「The Bullfighter Dies」など、彼の信念や批判的な視点が明確に示されており、リスナーに強い印象を与える。音楽的には、フラメンコやボサノバといった多様な影響を取り入れた豊かなアレンジが特徴で、彼のメッセージ性をより際立たせている。アルバム全体を通して、モリッシーは自己表現と社会批判を巧妙に織り交ぜ、現代社会への鋭い洞察を提供している。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Years of Refusal by Morrissey
モリッシーの2009年のアルバムで、力強いロックサウンドと彼特有の皮肉と感傷が詰まっている。World Peace Is None of Your Businessと同様、個人的な苦悩と社会批判が交錯している。 - The Holy Bible by Manic Street Preachers
政治的・社会的テーマを扱ったオルタナティブロックの名作。モリッシーのシニカルな視点に共鳴する内容で、深刻なテーマを扱いつつも、メロディが印象的。 - The Good Son by Nick Cave & The Bad Seeds
哀愁と神秘性を帯びたニック・ケイヴの名作。モリッシーの内省的でメランコリックなトーンを好むリスナーにとって、感情的な深みとドラマティックな展開が共通している。 - The Queen Is Dead by The Smiths
ザ・スミス時代の名盤で、モリッシーの風刺的で詩的な歌詞が光る。社会批判と個人の内面的な苦悩がテーマとなっており、World Peace Is None of Your Businessと通じる部分が多い。 - Humbug by Arctic Monkeys
ダークでシリアスなトーンが特徴のアルバム。政治や社会への批判的視点が含まれており、モリッシーの作品に通じる知的な一面が感じられる。
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