1. 歌詞の概要
「War」は、イギリスのポストパンクバンドIDLES(アイドルズ)が2020年にリリースした3rdアルバム『Ultra Mono』のオープニングトラックであり、バンドの持つ激しさと社会的メッセージをさらに推し進めた楽曲です。
この曲は、タイトル通り「戦争(War)」という言葉を象徴的に使用し、混沌と暴力に満ちた現代社会を表現しています。しかし、ここで描かれる「戦争」は単なる戦場の戦いではなく、**社会の不安、抑圧、個人の内面の闘争を含む、より広義の「戦争」**です。
楽曲全体を通して、絶え間ないノイズ、攻撃的なボーカル、そしてパニックのようなエネルギーが渦巻き、リスナーを一瞬でIDLESの世界へと引きずり込むオープニング曲となっています。
2. 歌詞のバックグラウンド
『Ultra Mono』は、IDLESがこれまでの攻撃的なポストパンク・スタイルをさらに押し進め、政治的・社会的なメッセージをより前面に押し出したアルバムです。「War」はその中でも最も荒々しく、圧倒的なエネルギーを持つ楽曲であり、アルバムの幕開けとして、リスナーを激しい世界へと引き込む役割を果たしています。
ボーカルのジョー・タルボット(Joe Talbot)は、インタビューでこの曲について、「混乱と怒りが支配する現代社会の現実を、戦争のメタファーとして描いた」と語っています。また、この楽曲はライブでのエネルギーを意識して作られたものであり、実際にライブでは観客が一斉にモッシュピットを作るほどの爆発力を持っています。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に「War」の歌詞の一部を抜粋し、日本語訳を添えます。
原文:
Wa-ching!
That’s the sound of the sword going in
和訳:
ザクッ!
それは剣が突き刺さる音だ
原文:
Crack a smile like a broken man
Ask me how my day is
和訳:
壊れた男みたいに 笑ってみせろ
「今日はどう?」って聞いてくれよ
原文:
Wa-ching!
That’s the sound of the drone going overhead
和訳:
ズオォォン!
それはドローンが頭上を飛ぶ音だ
原文:
Wa-ching!
That’s the sound of the children laughing
和訳:
キャハハ!
それは子供たちの笑い声だ
歌詞の完全版は こちら で確認できます。
4. 歌詞の考察
「War」の歌詞は、戦争の音(剣の音、ドローンの飛行音、子供の笑い声)をシンボリックに並べることで、現代社会の暴力や混沌を表現しています。
特に、「**Wa-ching!(ザクッ!)」**という擬音は、戦場での殺戮や、社会に蔓延する暴力を象徴しているとも解釈できます。一方で、「**That’s the sound of the children laughing(それは子供たちの笑い声だ)」**というラインは、戦争や暴力が日常と化した世界の皮肉として響きます。
また、「**Crack a smile like a broken man(壊れた男みたいに笑ってみせろ)」**というラインは、社会の抑圧や精神的な消耗を象徴しているようにも感じられます。
この曲の最大の特徴は、歌詞の断片的なフレーズが、戦争や社会の混沌を象徴する音として配置され、楽曲全体に不安定で攻撃的な雰囲気を生み出している点です。これは、まるでニュースの断片や、爆発の音、銃声のエコーが入り混じるような効果を生み出し、リスナーに圧倒的な没入感を与える仕掛けとなっています。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Grounds” by IDLES
抑圧と権力に対する怒りをテーマにした、重厚なビートの楽曲。 - “Never Fight a Man with a Perm” by IDLES
男性社会のマッチョ文化を痛烈に批判した楽曲。 - “Shame” by Fontaines D.C.
ポストパンクの荒々しいエネルギーと社会批判が詰まった楽曲。 - “Know Your Enemy” by Rage Against the Machine
政治的なメッセージを込めた攻撃的なサウンドが共通する楽曲。
6. 「War」の影響と評価
「War」は、アルバム『Ultra Mono』のオープニングとして、リスナーを一気にバンドの世界観へと引き込む役割を果たす楽曲であり、その圧倒的なエネルギーと混沌とした音像が話題を呼びました。
『Ultra Mono』は、IDLESにとって最も成功したアルバムのひとつであり、全英アルバムチャートで1位を獲得するなど、商業的にも大きな成功を収めました。その中でも「War」は、ライブでの定番曲となり、観客のモッシュピットを誘発する象徴的な楽曲となっています。
また、批評家からも「これまでのIDLESの作品の中でも最も攻撃的で、アート的な実験性を持つ楽曲」として評価されました。NMEやThe Guardianなどの音楽メディアは、「IDLESが持つ政治的なメッセージと、ポストパンクのカオスを完璧に融合させた作品」と称賛しています。
ライブでは、この曲の冒頭で観客が一斉に飛び跳ね、タルボットが「Wa-ching!」と叫ぶ瞬間が最大の盛り上がりを見せるシーンとなっており、IDLESのライブパフォーマンスを象徴する楽曲のひとつとなっています。
まとめ
「War」は、IDLESの最も攻撃的で混沌とした楽曲のひとつであり、現代社会の暴力や混乱を戦争のメタファーとして描いた作品。断片的なフレーズとノイズに満ちたサウンドがリスナーに圧倒的な没入感を与え、アルバム『Ultra Mono』のオープニングとしてバンドのエネルギーを最大限に表現する。ライブでの爆発的な盛り上がりと、社会批判の鋭さが融合した、IDLESを象徴する楽曲のひとつである。」
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