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発売日: 2022年4月1日
ジャンル: ダンス・ポップ、エレクトロ・ポップ、ハウス、インディー・ダンス
アルバム全体のレビュー
オーストラリア発のダンス・ポップ・ユニット Confidence Man が、2022年にリリースしたセカンド・アルバム TILT は、前作 Confident Music for Confident People(2018年)のパーティー感をさらに押し上げ、よりダンサブルで洗練された作品となっている。
デビュー作では、シンプルなリフレインとキャッチーなフックが際立っていたが、本作では 90 年代のハウスやレイヴ・ミュージック、さらにはフレンチ・タッチ(Daft Punk、Justice、Cassius など)の影響を色濃く感じさせる。つまり、「とにかく踊らせる」ことに全力を注いだアルバムなのだ。
Confidence Man の音楽は、エレクトロ・ポップの遊び心と、クラブ・ミュージックのエネルギーを融合させたものであり、本作ではそのスタイルがさらに洗練されている。ビートはタイトに、ベースラインはよりファンキーに、そしてボーカルは挑発的でセクシー。すべての要素がアップグレードされており、まるでハイエナジーな DJ セットを聴いているかのような一体感がある。
アルバム全体を通して、Janet Planet(ボーカル)のクールで奔放なヴォーカルと、Sugar Bones(ボーカル)の挑発的なシャウトが絶妙に絡み合い、まるで「ダンスフロアの王者」としての自信に満ち溢れているようだ。このアルバムは、パーティーのピークタイムに流したくなるような楽曲ばかりで、聴くたびに身体が勝手に動き出すようなエネルギーに満ちている。
それでは、各トラックを詳しく見ていこう。
トラックごとのレビュー
1. Woman
アルバムの幕開けを飾るのは、重厚なビートと中毒性のあるシンセが特徴的な一曲。「I’m a woman of many words / But words do not define me」と始まるリリックは、Confidence Man のアイデンティティそのものだ。圧倒的な自信とユーモアに満ちたオープニングトラック。
2. Feels Like A Different Thing
このアルバムの中でも最もハウス色の強い楽曲のひとつ。90年代のレイヴ・シーンを思わせるビートと、Sugar Bones のシャウトが絡み合い、フロア直撃のグルーヴを生み出している。まるで Prodigy のエネルギーと、Basement Jaxx の遊び心をミックスしたようなサウンドだ。
3. What I Like
ベースラインが際立つファンキーなナンバー。タイトル通り、「自分が好きなものを好きなように楽しむ」というテーマが前面に出ており、開放感と自由なエネルギーに満ちた楽曲だ。
4. Toy Boy
セクシーで遊び心のある歌詞と、ミニマルなビートが特徴的なトラック。「I like my toy boy, he plays with me」と繰り返されるリフレインがクセになる。クラブで爆音で聴きたい一曲。
5. Luvin U Is Easy
ポップとハウスのバランスが絶妙なトラック。キャッチーなメロディと浮遊感のあるシンセが、まるでフレンチ・タッチの名曲のような雰囲気を醸し出している。アルバムの中でも特に心地よいグルーヴを持った楽曲。
6. Trumpet Song
まるで Daft Punk や Cassius の楽曲のようなグルーヴ感。タイトル通り、トランペットが印象的に使われており、パーティーのピークタイムにぴったりの高揚感を生み出している。
7. Angry Girl
ガレージ・ロック的なエネルギーを持つ異色の楽曲。Janet Planet のパワフルなヴォーカルと、荒々しいビートが融合し、アルバムの中で最も攻撃的な雰囲気を持っている。
8. Push It Up
まさにフロア仕様のトラック。シンプルなリズムパターンの上に、徐々にビルドアップしていく構成が DJ 的なアプローチを感じさせる。ライブでの盛り上がりは間違いない。
9. Kiss N Tell
ファンキーなベースラインと、囁くようなヴォーカルが特徴的。サウンド的には少しディスコの要素も感じられ、Daft Punk の Discovery を彷彿とさせる。
10. Break It Bought It
ハイエナジーなビートと、鋭いシンセが印象的な楽曲。Confidence Man の「誰もが楽しめるダンスミュージック」というスタンスが詰まった一曲。
11. Relieve The Pressure
アルバムのラストを飾るこの曲は、まるでクールダウンするかのようなリラックスした雰囲気を持つ。それでもビートはしっかりと踊れる仕様になっており、最後までエネルギーを保ちつつ終わるのが心地よい。
アルバムの意義と影響
TILT は、Confidence Man が単なる「ふざけたダンス・ポップ・バンド」ではなく、しっかりとした音楽的ビジョンを持ち、フロアを揺らすためのサウンドデザインを極めていることを証明したアルバムだ。
前作と比較すると、よりエレクトロニックな方向に舵を切り、クラブミュージックとしての完成度が格段に上がっている。2022年のダンス・ミュージック・シーンにおいて、彼らの存在感はますます大きくなりつつあり、このアルバムはその流れを決定づけた作品といえる。
アルバム総評
TILT は、Confidence Man のエネルギーが最高潮に達した作品であり、ダンス・フロアを意識したプロダクションが際立つアルバムだ。フレンチ・ハウス、90年代レイヴ、エレクトロ・ポップがミックスされたこのサウンドは、まさに「踊らずにはいられない」。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Justice – Woman
フレンチ・タッチの影響を強く感じるなら、間違いなく楽しめるアルバム。 - Basement Jaxx – Rooty
彼らの遊び心とダンサブルなグルーヴが Confidence Man に通じるものがある。 - Daft Punk – Discovery
キャッチーなエレクトロ・ポップとダンス・ミュージックの完璧な融合。 - The Chemical Brothers – Surrender
90年代レイヴ感を楽しみたいなら必聴。 - Soulwax – From Deewee
ミニマルでエレクトロなサウンドを求めるなら、このアルバムもオススメ。
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