発売日: 1969年8月5日
ジャンル: ガレージロック / プロトパンク
The StoogesのセルフタイトルデビューアルバムThe Stoogesは、パンクロックの原点ともいえる作品だ。1969年というロックがまだサイケデリック全盛だった時代に、荒削りで原始的なサウンドを披露し、後の音楽シーンに革命的な影響を与えた。フロントマンのイギー・ポップのカリスマ性と挑発的なパフォーマンス、バンドのシンプルながらも攻撃的な楽曲構成は、当時のロックシーンにおいて異端的存在だった。
プロデュースはThe Velvet Undergroundのジョン・ケイルが担当。全8曲、わずか34分という短さながら、エネルギーと反骨精神が凝縮されたアルバムで、ガレージロックとプロトパンクの新境地を切り開いた。ヒットチャートでの成功には至らなかったものの、後に伝説的な評価を得て、パンクやオルタナティブロックの礎を築いた作品として語り継がれている。
トラック解説
1. 1969
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、カウントの後に炸裂するギターリフが印象的。歌詞では「1969年」という時代を反映しつつ、若者の焦燥感と反抗心が込められている。「It’s another year for me and you」というフレーズがシニカルだ。
2. I Wanna Be Your Dog
The Stoogesを代表する名曲で、重いギターリフと不協和音が織り成すシンプルかつ強烈なサウンドが特徴。「I wanna be your dog」という挑発的なフレーズが繰り返され、執拗で原始的な衝動を体現している。ピアノのミニマルな音がさらに楽曲のダークなムードを強調する。
3. We Will Fall
10分を超える異色の楽曲で、サイケデリックかつドローン的なアプローチが新鮮だ。反復するメロディと呪術的なコーラスが不気味な雰囲気を醸し出しており、アルバム全体の中でも異彩を放っている。
4. No Fun
後にSex Pistolsがカバーしたことで知られるパンクロックのアンセム的楽曲。キャッチーなギターリフと「No fun」というシンプルな歌詞がリスナーの心を掴む。無気力感と反抗心を同時に感じさせるサウンドが魅力。
5. Real Cool Time
直球のロックンロールナンバーで、パーティー感と攻撃性が融合した一曲。イギー・ポップの挑発的なボーカルが全体を引き締める。
6. Ann
サイケデリックなムードを持ちながら、切なさを感じさせるスローな楽曲。ヴォーカルとギターが絡み合う展開が印象的で、アルバムの中では感傷的な瞬間を提供する。
7. Not Right
歪んだギターとイギーのエネルギッシュなボーカルが際立つ楽曲。荒々しい演奏とシンプルな構成が、The Stoogesの本質を凝縮している。
8. Little Doll
アルバムの締めくくりを飾るミッドテンポの楽曲。リズムの反復が中毒性を生み出し、ギターとボーカルのシンクロが秀逸だ。アルバム全体の余韻を残すようなラストトラックだ。
アルバム総評
The Stoogesは、その荒削りでプリミティブなサウンドによって、パンクロックの精神をいち早く体現した作品だ。シンプルでありながらも強烈なメッセージ性を持ち、イギー・ポップの反抗的なボーカルとバンドの圧倒的なエネルギーが際立つ。
当時の商業的成功には恵まれなかったものの、後の音楽シーンに与えた影響は計り知れない。特に「I Wanna Be Your Dog」や「No Fun」といった楽曲は、今なお多くのバンドによってカバーされるなど、その存在感は色褪せていない。このアルバムは、ロックのルーツを探る上で欠かせない作品であり、ガレージロックやパンクファンには必聴の一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Fun House by The Stooges
2枚目のアルバムで、よりカオスでエネルギッシュなサウンドが楽しめる。サックスの導入が新鮮。
Kick Out the Jams by MC5
同時代のデトロイト発ガレージロックの名盤。攻撃的なサウンドと反骨精神が共通している。
Raw Power by Iggy and The Stooges
イギー・ポップ率いるThe Stoogesがさらなる進化を遂げたアルバム。パンクロックの源流として必聴。
White Light/White Heat by The Velvet Underground
ジョン・ケイルがプロデュースした本作と同様、前衛的で挑発的なサウンドが特徴。
Ramones by Ramones
シンプルで原始的なパンクロックの美学を極めたアルバム。The Stoogesの精神を継承している。
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