発売日: 1975年2月21日
ジャンル: ブギー・ロック、ハード・ロック
概要
『On the Level』は、Status Quoが1975年にリリースした8作目のスタジオ・アルバムであり、彼らのブギー・ロック路線が商業的にも音楽的にも円熟期に入ったことを示す重要作である。
本作は、全英アルバムチャートで1位を獲得し、Quoサウンドの王道が確立されたアルバムとして現在も高く評価されている。
前作『Quo』の重厚でライブ感あふれるアプローチを受け継ぎながら、『On the Level』ではさらにキャッチーな楽曲構成や、ミドルテンポ中心の安定したグルーヴが強化された。
ハードなブギーとポップなメロディのバランスが良く、バンドとしての成熟と多彩さが際立つ一枚である。
全曲レビュー
1. Little Lady
アルバムはこのハードでスピード感あふれる一曲で幕を開ける。
ランカスターの骨太なベースと、ツイン・ギターの絡みが繰り出すリフが鮮烈。
ライブ定番曲としても人気が高く、Quoのエネルギーを象徴するトラック。
2. Most of the Time
ミディアムテンポのブギーで、ソリッドな演奏が冴える楽曲。
「いつだってほとんどはうまくいってる」と歌われる日常的なメッセージが、Quoらしい庶民的な魅力を感じさせる。
3. I Saw the Light
メロディアスでポップ寄りな一曲。
ロッシのボーカルが柔らかく響き、アルバム中でも最も聴きやすいトラックの一つ。
カントリー風のアクセントも感じられる。
4. Over and Done
分厚いリフと渋いボーカルが特徴の骨太なナンバー。
疲弊と回復の反復をテーマにしたリリックが、反復されるブギーの形式と美しく連動している。
5. Nightride
軽快なテンポと親しみやすい旋律が魅力のロックンロール。
夜のドライブをテーマにした楽曲で、バンドの陽気な一面が表れている。
パーフィットのヴォーカルが爽快に響く。
6. Down Down
アルバムのハイライトにして、Status Quo初の全英シングルチャート1位を記録した代表曲。
反復するリフと、抑揚の効いたアンサンブルが中毒性を生む。
「Down down, deeper and down」というサビのコーラスが圧倒的な印象を残す名曲。
7. Broken Man
哀愁を帯びたメロディが特徴の、ややメロウなブギー・ロック。
感情を抑えつつも滲み出る歌唱が印象的で、アルバム全体の中で陰影を添えるトラック。
8. What to Do
グルーヴ感あるベースとタイトなドラムが牽引する楽曲。
「何をすべきか分からない」という不安を、力強い演奏で打ち消していくような構造。
演奏の一体感が際立つ。
9. Where I Am
アコースティックなイントロが印象的な中テンポの楽曲。
自己探求的な歌詞と、繊細なコード進行が、アルバムの中で異色の存在感を放つ。
10. Bye Bye Johnny
チャック・ベリーのカバーで、ライブでの盛り上がりを意識した痛快なロックンロール。
ロッシのギターが火を吹き、観客を煽るような勢いで突き抜ける。
本作を祝祭的に締めくくる好トラック。
総評
『On the Level』は、Status Quoが自らのスタイルをさらに洗練し、“ロック界の職人”としての立ち位置を確かなものにしたアルバムである。
ヘヴィで硬派なブギー・ロックと、親しみやすいメロディの融合は、彼らの真骨頂を見せると同時に、チャート上でも最大の成功を収める要因となった。
Quoのアルバムとしては特にバランスが良く、ハードな面とポップな面の両方が楽しめる内容に仕上がっている。
飾らず、構えず、ただひたすらに“ロックンロールを鳴らす”という信念が全編に通底しており、そのストイックな美学こそが、彼らを時代を超えた存在たらしめている。
おすすめアルバム(5枚)
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Status Quo – Quo (1974)
より重厚なサウンドで、ブギーの強度を追求した前作。『On the Level』との対照が興味深い。 -
Slade – Old New Borrowed and Blue (1974)
英国的なポップロックとハードなリフのバランス感が共通。 -
Thin Lizzy – Fighting (1975)
メロディアスなギターと男臭いロックサウンド。Quoのソウルフルな側面に共鳴。 -
Lynyrd Skynyrd – Nuthin’ Fancy (1975)
サザン・ロック的なブギー感覚。泥臭さとキャッチーさのバランスが近い。 -
Faces – A Nod Is As Good As a Wink… (1971)
自由奔放なロックンロール美学。Quoのルーツ的要素を感じさせる。
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