1. 歌詞の概要
「Never Fight a Man with a Perm」は、イギリスのポストパンクバンドIDLES(アイドルズ)が2018年にリリースしたセカンドアルバム『Joy as an Act of Resistance』の収録曲であり、バンドの代表曲のひとつです。この楽曲は、マッチョ文化への痛烈な批判をユーモアと怒りを交えて表現した、IDLESらしい攻撃的かつ風刺的な作品です。
タイトルの「Never Fight a Man with a Perm(パーマの男とは戦うな)」は、筋肉自慢のナルシストな男との争いは無意味だ、という意味合いを持ち、現代社会に蔓延する有害な男らしさ(Toxic Masculinity)への皮肉を込めています。歌詞では、そんな暴力的で自信過剰な男たちの典型的なイメージを戯画的に描きながら、その愚かしさをあざ笑うようなスタイルで語られています。
2. 歌詞のバックグラウンド
IDLESは、ポストパンク、ハードコアパンクの影響を受けた攻撃的なサウンドと、社会的メッセージを込めた歌詞が特徴のバンドです。彼らのアルバム『Joy as an Act of Resistance』は、男らしさの固定観念、人種差別、移民問題、社会の分断といったテーマに真正面から取り組んだ作品であり、その中でも「Never Fight a Man with a Perm」は、特に「有害な男らしさ(Toxic Masculinity)」を風刺する楽曲となっています。
ボーカルのジョー・タルボット(Joe Talbot)は、この曲について、自身の過去の経験に基づいていると語っています。彼は若い頃、イギリスのバーやクラブ文化の中で、見栄を張り、力を誇示し、暴力的になることで「男らしさ」を証明しようとする男性たちを目の当たりにしてきました。この曲は、そんな暴力的なマッチョ文化に対する彼の嘲笑と嫌悪感をストレートに表現したものです。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に「Never Fight a Man with a Perm」の歌詞の一部を抜粋し、日本語訳を添えます。
原文:
You look like a walking thyroid
You’re not a man, you’re a gland
和訳:
お前はまるで歩く甲状腺だな
男じゃない、ただの腺だよ
原文:
A heathen from Eaton
On a bag of Michael Keaton
和訳:
イートン校出身の野蛮人
マイケル・キートンの粉をキメてる
(※「Michael Keaton」は俳優の名前だが、ここではコカインを暗示している可能性あり。)
原文:
Concrete to leather
You’re a wasp’s nest, you’re a cherub’s chest
和訳:
コンクリートからレザーへ
お前はスズメバチの巣、天使の胸
原文:
I was done in on the weekend
You were done in on the bar
和訳:
俺は週末にやられた
お前はバーの中でやられた
歌詞の完全版は こちら で確認できます。
4. 歌詞の考察
「Never Fight a Man with a Perm」の歌詞は、有害な男らしさの象徴のような人物像を嘲笑し、攻撃的な言葉で風刺する内容となっています。
特に、「**You’re not a man, you’re a gland(お前は男じゃない、ただの腺だよ)」**というラインは、マッチョな男たちの肉体を誇示する様子を「単なるホルモンの塊」と皮肉っているとも解釈できます。
また、「**Concrete to leather(コンクリートからレザーへ)」**というラインは、社会的地位を誇示するためにスーツを着てブランド品を身に着けるナルシストな男たちを象徴しているとも考えられます。
楽曲のタイトル「パーマの男とは戦うな」は、ジムで鍛えた筋肉を見せびらかし、髪型まで完璧にセットするような自己陶酔型の男とは、そもそも争う価値がないというメッセージを込めているとも受け取れます。
この曲は、ジョー・タルボットが若い頃に見てきた「暴力的な男らしさ」を嘲笑しながら、そんな価値観から解放されるべきだというメッセージを込めた楽曲です。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Mother” by IDLES
有害な男らしさに対する怒りをストレートに表現した代表曲。 - “Danny Nedelko” by IDLES
移民問題をテーマにした、社会的メッセージの強い楽曲。 - “Shame” by Fontaines D.C.
ポストパンクの鋭い視点で社会問題を描く作品。 - “Big Man” by Turnstile
マッチョ文化を批判する攻撃的なハードコアパンク。
6. 「Never Fight a Man with a Perm」の影響と評価
「Never Fight a Man with a Perm」は、IDLESの中でも特にユーモアと攻撃性を兼ね備えた楽曲のひとつであり、2018年のアルバム『Joy as an Act of Resistance』の中でも最も印象的な楽曲となっています。
このアルバムは、音楽メディアや批評家から絶賛され、NMEやThe Guardianなどの媒体で高評価を獲得しました。IDLESは、この作品を通じて社会的な問題に真正面から向き合い、ポストパンクの枠を超えたメッセージ性の強いバンドとしての地位を確立しました。
ライブでは、この曲が演奏されると観客が一斉にシンガロングし、モッシュピットが生まれるほどの盛り上がりを見せることでも知られています。
まとめ
「Never Fight a Man with a Perm」は、IDLESの持つユーモアと社会批判のセンスが詰まった楽曲であり、有害な男らしさを痛烈に皮肉るポストパンクの名曲。攻撃的なサウンドと風刺的な歌詞が融合し、アルバム『Joy as an Act of Resistance』を象徴する楽曲のひとつとなった。IDLESの社会への鋭い視点と、音楽を通じたメッセージ性が最大限に発揮された作品として、多くのリスナーに響き続けている。」
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