発売日: 1995年8月15日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、エレクトロニック・ロック、ポスト・グランジ
90年代オルタナティブの新機軸——Garbageが築いた革新的デビュー作
1995年、Garbageはセルフタイトルのデビューアルバム『Garbage』をリリースし、オルタナティブ・ロックの新たなスタンダードを打ち立てた。本作は、グランジの熱が冷めつつあった90年代中盤に登場し、ギター・ロックとエレクトロニック・ミュージックを融合させた独自のスタイルで、ポスト・グランジ時代のオルタナティブ・ロックの新たな方向性を提示した。
Garbageは、プロデューサーとして名高い**ブッチ・ヴィグ（Nirvana『Nevermind』のプロデュースで有名）**を中心に結成されたプロジェクトであり、彼に加えてデューク・エリクソン、スティーヴ・マーカーの3人のプロデューサーがメンバーとして参加している。そして、スコットランド出身のカリスマ的女性ボーカリスト、シャーリー・マンソンの加入によって、Garbageのスタイルは完成された。
本作の特徴は、グランジの生々しさを持ちながらも、エレクトロニカやインダストリアルの要素を巧みに取り入れたサウンドにある。ドラムマシンやサンプリング、ダークなシンセといった要素を導入しながらも、キャッチーなメロディを前面に押し出しており、**「オルタナティブ・ロックとエレクトロの完璧な融合」**を実現している。
シングル「Only Happy When It Rains」や「Stupid Girl」のヒットにより、アルバムは世界的に大成功を収め、1990年代を象徴するオルタナティブ・アルバムのひとつとなった。
全曲レビュー
1. Supervixen
アルバムの幕開けを飾る、パワフルなギターリフとエレクトロニックなビートが印象的な楽曲。シャーリー・マンソンの妖艶で挑発的なボーカルが、曲のエネルギーを倍増させている。 ライブでもオープニングとしてよく演奏される人気曲。
2. Queer
ミステリアスな雰囲気を持つ楽曲で、エレクトロニカとトリップホップの要素を取り入れた斬新なサウンドが特徴。シンセベースとダークなリズムが絡み合い、独特の浮遊感を生み出している。
3. Only Happy When It Rains
Garbageを代表するアンセムのひとつ。「私は雨が降るときだけ幸せなの」という皮肉めいた歌詞が、90年代オルタナティブ・ロックのシニカルな精神を象徴している。 キャッチーなメロディとヘヴィなギターリフのバランスが絶妙。
4. As Heaven Is Wide
インダストリアルな要素が強い楽曲で、ダークなビートとメタリックなギターが融合。レイジーで冷ややかなボーカルが、楽曲の攻撃性を際立たせている。
5. Not My Idea
グルーヴィーなリフと、力強いシャーリー・マンソンのボーカルが特徴。歌詞は、自己決定と支配されることへの反抗をテーマにしており、アルバム全体の反骨精神を象徴する。
6. A Stroke of Luck
メランコリックなムードを持つスローな楽曲。ダークな雰囲気と、幽玄なシンセサウンドが幻想的な世界観を作り上げている。
7. Vow
デビューシングルとしてリリースされた曲。復讐心をテーマにした歌詞と、轟音ギター、ダークなビートが絡み合い、まるでインダストリアル・ロックのような重厚なサウンドを生み出している。
8. Stupid Girl
本作のハイライトのひとつであり、ダンスビートとロックが完璧に融合したGarbage流のアンセム。ベースラインはThe Clashの「Train in Vain」からのサンプリングで、エレクトロニカ的なループが中毒性を生み出している。
9. Dog New Tricks
グランジ色が強い楽曲で、リフとドラムのコンビネーションが力強い。歌詞は、裏切りや失望をテーマにしており、シャーリー・マンソンの感情的なボーカルが冴えわたる。
10. My Lover’s Box
ミステリアスで官能的な雰囲気を持つミッドテンポのナンバー。ボーカルの表現力が際立ち、楽曲のドラマチックな展開が印象的。
11. Fix Me Now
アリーナロック的な広がりを持つ楽曲で、キャッチーなコーラスが魅力的。シンプルながらも、アルバムの中で重要なポジションを占める。
12. Milk
アルバムを締めくくる静かで美しい楽曲。トリップホップ的な要素があり、アンビエントなシンセと繊細なボーカルが幻想的な空気を作り上げている。
総評
『Garbage』は、オルタナティブ・ロック、エレクトロニカ、ポスト・グランジの完璧な融合を実現した画期的なアルバムであり、1990年代の音楽シーンにおいて極めて重要な作品である。
本作のリリースにより、Garbageは一躍トップアーティストの仲間入りを果たし、以降のオルタナティブ・ロックに大きな影響を与えた。特にシャーリー・マンソンのカリスマ性、サウンドの革新性、プロダクションの緻密さは、同時代のバンドとは一線を画していた。
また、本作の成功により、エレクトロニック・ロックの潮流がより広がり、Garbage以降のアーティストたち（Metric、Yeah Yeah Yeahs、Nine Inch Nailsのポップ寄りの楽曲など）に影響を与えることとなった。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- No Doubt – Tragic Kingdom（1995年）
女性ボーカルのパワフルなオルタナティブ・ロック。Garbageのキャッチーさが好きな人におすすめ。 - Hole – Celebrity Skin（1998年）
90年代のオルタナティブ・ロックの代表作。 - Nine Inch Nails – The Downward Spiral（1994年）
インダストリアル・ロックの金字塔。Garbageのダークな要素と共鳴する。 - Portishead – Dummy（1994年）
トリップホップの名作。『Garbage』のエレクトロ的な側面に惹かれるなら必聴。 - Metric – Fantasies（2009年）
Garbageの影響を受けた女性ボーカルのエレクトロ・ロック。
『Garbage』は、90年代を象徴するオルタナティブ・クラシックであり、今なお新鮮な響きを持つ傑作である。
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