発売日: 1969年5月14日
ジャンル: ロック、カントリーロック、ハードロック
アルバム全体の印象
『Everybody Knows This Is Nowhere』は、Neil Youngがソロキャリアで発表した2枚目のアルバムであり、バックバンドとして初めてCrazy Horseと共演した記念碑的な作品だ。このアルバムでは、Youngの作曲の妙とCrazy Horseのラフで生々しい演奏が融合し、特有の荒削りな魅力を持つサウンドが確立された。
前作のフォーク色の強いデビューアルバムから一転し、カントリーロックとハードロックが共存する骨太なアルバムとなった本作。特に、ジャムセッションの要素を取り入れた長尺の楽曲が印象的で、ギターリフの大胆さと感情的なボーカルが聴き手を引き込む。また、「Cinnamon Girl」や「Down by the River」といった代表曲が収録されており、Youngの音楽的アイデンティティがここで確立されたと言っても過言ではない。
アルバム全体に漂う孤独感と荒涼感は、カントリーとロックが混じり合ったサウンドと共鳴し、リスナーに強い感情的な訴求力を持つ。『Everybody Knows This Is Nowhere』は、ニール・ヤングのキャリアを象徴するアルバムであり、ロック史においても重要な一作として評価されている。
トラックごとの解説
1. Cinnamon Girl
アルバムのオープニングを飾る代表曲。シンプルながらも力強いギターリフと、キャッチーなメロディが印象的だ。歌詞にはYoungの個人的な想いが込められており、演奏のエネルギーが曲全体を引き締めている。Crazy Horseの重厚なコーラスが、楽曲に温かみを加えている。
2. Everybody Knows This Is Nowhere
タイトル曲で、カントリー風のリズムが心地よい一曲。都会生活への倦怠感と、自然との繋がりを求めるYoungの感情が、メロディと歌詞から伝わってくる。穏やかだが心に染み入るトラック。
3. Round & Round (It Won’t Be Long)
スローで美しいフォーク調の楽曲。ロビン・レインの甘美なハーモニーがYoungのボーカルと絡み合い、哀愁漂うムードを作り出している。楽曲全体に漂う寂寥感が心に残る。
4. Down by the River
9分を超える長尺のジャムセッション的なトラックで、ギターソロが中心となる構成。歌詞には暗くミステリアスな物語が含まれ、「I shot my baby」という衝撃的なフレーズが象徴的だ。ギターのリフレインがリスナーをトランス状態へと導く。
5. The Losing End (When You’re On)
カントリーの要素が強い楽曲で、シンプルな構成ながらも歌詞の切なさが際立つ。Crazy Horseのリズムセクションが楽曲をしっかりと支え、演奏のまとまりが感じられる。
6. Running Dry (Requiem for the Rockets)
バイオリンが主役となる異色のトラックで、楽曲全体に漂う悲壮感が印象的。Youngのボーカルが一層感情的に響き、アルバムの中でも特にドラマチックな一曲。
7. Cowgirl in the Sand
アルバムを締めくくる、10分を超える名曲。イントロのギターから圧倒的な存在感を放ち、Crazy Horseとのジャムセッションが楽曲を壮大に仕上げている。歌詞は抽象的だが、Youngの内なる感情が色濃く反映されている。
アルバム総評
『Everybody Knows This Is Nowhere』は、Neil Youngがソロアーティストとして本格的にそのスタイルを確立したアルバムだ。フォークとロック、カントリーとブルースが融合した楽曲は、独特の荒々しさと繊細さを兼ね備えており、Crazy Horseとのダイナミックな演奏がその魅力をさらに引き立てている。
特に「Cinnamon Girl」「Down by the River」「Cowgirl in the Sand」といった長尺の名曲は、ロックの新たな可能性を提示し、Youngのギタープレイとボーカルの表現力を存分に感じさせる。孤独や憂鬱といったテーマがアルバム全体を貫きながらも、どこか力強さや希望を感じさせる点も本作の大きな魅力だ。
このアルバムは、ニール・ヤングの多彩な音楽性を味わう上での必聴作品であり、彼のキャリアの中でも屈指の名盤として位置付けられる。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
After the Gold Rush by Neil Young
ニール・ヤングの名作で、フォークとロックのバランスが秀逸。『Everybody Knows This Is Nowhere』の進化系とも言える。
Harvest by Neil Young
よりカントリー寄りのアプローチで、シンプルながらも感動的な楽曲が揃ったアルバム。
Déjà Vu by Crosby, Stills, Nash & Young
ニール・ヤングが参加した名盤で、グループでのハーモニーが美しい。
The Band by The Band
カントリーロックの名盤で、Neil Youngのファンにとっても親しみやすいサウンドが特徴。
Exile on Main St. by The Rolling Stones
ブルースやカントリーの要素を取り入れたロックアルバムで、荒々しい魅力が共通している。
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