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発売日: 2018年4月13日
ジャンル: ダンス・ポップ、エレクトロ・ポップ、インディー・ダンス
アルバム全体のレビュー
オーストラリアのダンス・ポップ・ユニット、Confidence Man のデビューアルバム Confident Music for Confident People は、そのタイトルが示す通り、自信に満ち溢れた音楽でリスナーをダンスフロアへと誘う。ダンサブルなビート、シンプルかつキャッチーなリリック、そして何より「楽しむこと」に全振りした姿勢が、このアルバムを特別なものにしている。
Confidence Man は、オーストラリアのインディー・バンド The Jungle Giants や Moses Gunn Collective のメンバーから派生したプロジェクトで、フロントを務める Janet Planet(ボーカル)と Sugar Bones(ボーカル)の圧倒的なキャラクター性、そして裏方である Reggie Goodchild(キーボード)と Clarence McGuffie(ドラム)のタイトなプロダクションが特徴的だ。彼らの音楽は、90年代のハウス・ミュージック、80年代のシンセ・ポップ、そして LCD Soundsystem や The Ting Tings を彷彿とさせるシンプルなインディー・ダンスの要素を融合させている。
このアルバムは、理屈抜きで「踊れる音楽」を求めるリスナーに最適だ。過剰なまでのポップネスと、中毒性のあるフックが全編に散りばめられ、わずか数秒で体を揺らしたくなるようなグルーヴが炸裂する。歌詞には深い意味など求める必要はなく、むしろそのシンプルさこそが魅力だ。「クールなことを考えるよりも、まずは踊ろう」と言わんばかりの、純粋なエネルギーに満ちた一枚である。
トラックごとのレビュー
1. Try Your Luck
アルバムのオープニングを飾るこの曲は、シンプルながらもクセになるベースラインと、まるで呪文のように繰り返される Janet Planet のボーカルが特徴的。「I must confess, I’ve been sleeping with your ex ‘cause I heard he was the best」という、挑発的な一節から始まり、その瞬間からリスナーの心を掴む。
2. Don’t You Know I’m In a Band
自信満々のタイトルが示す通り、この曲はバンドマンとしてのステータスを皮肉たっぷりに歌い上げるナンバー。シンプルなギターリフと、The B-52’s を彷彿とさせるユーモラスなボーカルスタイルが絶妙にマッチしている。ライブでは観客がシンガロングすること間違いなしのアンセム的な楽曲。
3. Boyfriend (Repeat)
このアルバムの中でも特にキャッチーな一曲。ミニマルなビートとリフレインするボーカルが、まるで The Ting Tings の “That’s Not My Name” のような中毒性を生み出している。ダンスフロア向けの完璧なポップ・ソング。
4. C.O.O.L. Party
この曲の最大の魅力は、その “ふざけたクールさ” である。語り口調のボーカルが、「最高のパーティーがここにある」ということを断言し、無条件に楽しい気分にさせる。
5. Out the Window
アルバムの中では比較的ポップなメロディを持ち、夏のロードトリップにもぴったりな軽快なナンバー。少し哀愁のあるコード進行が、シンプルながらも心地よい。
6. Catch My Breath
ハウス・ミュージックの影響を強く感じるトラックで、クラブでも映えそうな仕上がり。シンセの波が押し寄せ、ビートが徐々に構築されるプロダクションが秀逸。
7. Bubblegum
その名の通り、まるでバブルガムのように甘くてカラフルなポップ・チューン。シンプルな歌詞とポップなサウンドが絶妙にマッチし、アルバムの中でも特に無邪気な雰囲気を持つ。
8. Sailboat Vacation
サイケデリックなシンセと、不思議なリズム展開が印象的な一曲。アルバムの中では異色の楽曲だが、遊び心のあるアレンジが楽しい。
9. Better Sit Down Boy
アルバムのハイライトのひとつ。シンセ・ベースが強調されたファンキーなトラックで、DAFT PUNK や LCD Soundsystem の影響を感じさせる。ライブでの爆発力も高い楽曲。
10. Kinda Feel Like
アルバムの締めくくりにふさわしい、やや落ち着いた雰囲気の楽曲。とはいえ、ダンサブルなグルーヴは最後まで崩れることなく、エネルギッシュな余韻を残す。
アルバムの意義と影響
Confident Music for Confident People は、ダンス・ミュージックの持つ純粋な楽しさを最大限に引き出したアルバムであり、過度なコンセプトや深みを求めるのではなく、ただ「踊ること」に焦点を当てている。その潔さが、このアルバムの最大の魅力だ。
また、オーストラリアの音楽シーンにおいて、Confidence Man は特異な存在であり、ポスト・パンクやインディー・ロックが主流の中で、あえてダンス・ポップを選んだ彼らのスタンスは新鮮だった。本作の成功によって、彼らはヨーロッパやアメリカのフェスにも進出し、ライブバンドとしての評価も高まった。
アルバム総評
Confident Music for Confident People は、「とにかく踊って楽しめるアルバム」として完璧な一枚である。過度なメッセージ性やドラマ性を排除し、ひたすらにポップでエネルギッシュな楽曲を詰め込んだ結果、無敵のダンス・アルバムが誕生した。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- The Ting Tings – We Started Nothing
ミニマルでキャッチーなダンス・ロックの名盤。シンプルなビートと繰り返されるフレーズが、Confidence Man に通じるものがある。 - LCD Soundsystem – Sound of Silver
ニューヨークのインディー・ダンスの最高峰。リズム重視のサウンドとユーモアのある歌詞が共通点。 - Justice – Woman
フレンチ・エレクトロのグルーヴが好きならハマるはず。ファンキーなシンセとダンサブルなビートが魅力的。 - Basement Jaxx – Rooty
90年代~2000年代のダンス・ポップの金字塔。カラフルでエネルギッシュなサウンドが共通。 - CSS – Cansei de Ser Sexy
ブラジル発のエレクトロ・パンクバンド。シンプルで楽しいダンス・ミュージックが満載。
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