発売日: 2005年4月11日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、ポスト・グランジ、インダストリアル・ロック
混乱と再生——Garbageがロックバンドとしての原点に回帰した作品
2005年、Garbageは4作目となるアルバム『Bleed Like Me』をリリースした。本作は、バンドが内部分裂の危機を乗り越えて制作したアルバムであり、Garbageにとって最も激動の時期に生まれた作品である。
前作『Beautiful Garbage』（2001年）は、オルタナティブ・ロックの枠を超えて、エレクトロニカやパワーポップなどを取り入れた実験的なアルバムだった。しかし、本作ではその方向性を180度転換し、ギターを前面に押し出したストレートなロックサウンドへと回帰している。これは、2000年代前半に起きたガレージ・ロック・リバイバルや、ポスト・グランジの流れと呼応する形となった。
また、このアルバムは制作段階でバンドが解散寸前にまで追い込まれたことでも知られている。長年のツアー疲れ、メンバー間の緊張、そして音楽業界の変化に対するフラストレーションから、一度は制作が中断。しかし、再び集まり、ロックバンドとしての原点に立ち返ることで、Garbageは新たなサウンドを築き上げた。
商業的には全米4位を記録し、バンドにとって最高のチャート順位を達成。「Why Do You Love Me」がヒットし、オルタナティブ・ロック・シーンに再びGarbageの名を轟かせた。
全曲レビュー
1. Bad Boyfriend
アルバムの幕開けを飾る、パワフルで攻撃的な楽曲。ドラムはデイヴ・グロール（Foo Fighters / ex-Nirvana）が担当しており、その圧倒的なビートが楽曲をさらに引き締めている。 シャーリー・マンソンの挑発的なボーカルが炸裂し、バンドのエネルギーが復活したことを感じさせる。
2. Run Baby Run
メロディアスなギターと疾走感のあるリズムが特徴の楽曲。サビのキャッチーさが際立ち、アルバムの中でも比較的ポップな要素を持つ。「逃げて、生き延びて」という歌詞が、バンドの葛藤と重なる部分もあり、力強いメッセージを感じさせる。
3. Right Between the Eyes
ガレージ・ロック的なリフと、パンキッシュなアティチュードが魅力のナンバー。シンプルながらも力強いビートが印象的で、ライブ映えする楽曲。
4. Why Do You Love Me
本作のリードシングルであり、Garbageが再びオルタナティブ・ロックのメインストリームに戻るきっかけとなった曲。ポスト・グランジ的なヘヴィなギターリフと、シャーリー・マンソンのエモーショナルなボーカルが特徴的。 「私はこんなにもめちゃくちゃなのに、なぜあなたは私を愛するの？」という歌詞が、混沌とした人間関係を描いている。
5. Bleed Like Me
アルバムのタイトル曲であり、最もダークで内省的な楽曲のひとつ。「あなたも私と同じように血を流している」というリリックが象徴するように、精神的な痛みや自己破壊をテーマにしている。 スローなビルドアップと、激しいクライマックスが印象的なトラック。
6. Metal Heart
インダストリアル・ロックの要素が強い楽曲で、Nine Inch Nailsの影響を感じさせる。デジタルノイズとヘヴィなギターが絡み合い、ダークで鋭いサウンドを生み出している。
7. Sex Is Not The Enemy
フェミニズム的な視点を持つ、挑発的なナンバー。「セックスは敵ではない」というタイトルが示す通り、性に対する社会のタブー視を批判する歌詞が特徴的。 パンク的なエネルギーと、キャッチーなメロディが融合した楽曲。
8. It’s All Over But the Crying
シリアスでエモーショナルなバラード。ダークな雰囲気を持ちつつも、美しいメロディが際立つ。シャーリー・マンソンの繊細なボーカルが、楽曲に深みを与えている。
9. Boys Wanna Fight
パンキッシュでアグレッシブな楽曲。ギターリフとシンセのコンビネーションが特徴的で、ガレージ・ロック的な勢いを持っている。
10. Why Don’t You Come Over
ファズのかかったギターと、エネルギッシュなビートが絡み合う楽曲。全体的にシンプルな構成ながら、バンドの勢いが感じられる。
11. Happy Home
アルバムの締めくくりにふさわしい、壮大な楽曲。静かに始まり、徐々にスケールが広がる構成が印象的。ロックバンドとしてのGarbageのダイナミクスを最大限に活かしたトラック。
総評
『Bleed Like Me』は、Garbageが原点に立ち返り、オルタナティブ・ロックバンドとしてのアイデンティティを再確認したアルバムである。エレクトロニカや実験的な要素を抑え、ギター主体のストレートなロックサウンドへと回帰したことで、バンドの持つ生々しさやエネルギーが際立つ作品となった。
同時に、バンドの崩壊寸前の状況で制作されたこともあり、歌詞には人間関係の混乱、精神的な痛み、自己破壊といったダークなテーマが色濃く反映されている。
商業的には一定の成功を収めたものの、このアルバムを最後にバンドは一時解散状態となり、活動休止に入る。その後、2012年に復活し、新たなフェーズへと向かうこととなる。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Foo Fighters – One by One（2002年）
デイヴ・グロールが参加していることもあり、Garbageのロック路線と共鳴する。 - Hole – Celebrity Skin（1998年）
シャーリー・マンソンと同じく、女性フロントのロックバンドによるパワフルな作品。 - Nine Inch Nails – With Teeth（2005年）
インダストリアルな要素を含むロック作品で、『Bleed Like Me』のダークな雰囲気と相性が良い。 - The Kills – Midnight Boom（2008年）
ガレージ・ロックとエレクトロの融合が魅力的。 - Yeah Yeah Yeahs – Fever to Tell（2003年）
パンク的なエネルギーを持つオルタナティブ・ロック作品。
『Bleed Like Me』は、Garbageの持つロックバンドとしての純粋な衝動を感じられる、パワフルなアルバムである。
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