発売日: 2001年10月1日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、エレクトロニック・ロック、パワーポップ、トリップホップ
ポップへの挑戦——Garbageが新境地を切り開いた意欲作
1995年のデビューアルバム『Garbage』、1998年の『Version 2.0』でオルタナティブ・ロックとエレクトロニカの融合を極めたGarbageは、2001年の3rdアルバム『Beautiful Garbage』で大きな変化を遂げた。これまでのダークで冷たいイメージを一新し、よりオーガニックでポップな要素を取り入れた実験的な作品へとシフトしている。
アルバムのタイトルは、**「ゴミのように汚くて、それでも美しいもの」**を意味し、Garbageが持つエッジーなサウンドと、よりキャッチーでカラフルな音楽性の融合を象徴している。パワーポップ、ドリームポップ、トリップホップ、R&B、エレクトロニカなど、幅広いジャンルを取り入れ、バンドの新しい側面を提示した作品となっている。
しかし、本作はリリース直後に9.11テロ事件が発生し、音楽業界全体が混乱していた時期と重なったこともあり、商業的には前作ほどの成功を収めることができなかった。それでも、ファンの間ではカルト的な人気を誇り、バンドのキャリアの中でも最も多様な音楽性を持つアルバムのひとつとして評価されている。
全曲レビュー
1. Shut Your Mouth
アルバムの幕開けを飾る、エネルギッシュで攻撃的な楽曲。「口を閉じろ、世界が崩壊するのを見届けよう」という挑発的な歌詞が、アルバムの反骨精神を象徴している。グルーヴィーなリフとキャッチーなコーラスが特徴的。
2. Androgyny
本作の代表曲のひとつで、R&B、トリップホップ、エレクトロニカの要素を取り入れた、当時としては異色のナンバー。 「アンドロジニー（両性具有）」というタイトルが示す通り、ジェンダーの流動性をテーマにした先駆的な楽曲でもある。
3. Can’t Cry These Tears
60年代のガールグループのようなポップなメロディを持つ楽曲。オルタナティブ・ロックの枠を超えた、ヴィンテージな雰囲気が印象的なナンバー。
4. Til The Day I Die
ヘヴィなギターリフとエレクトロニカ的なアレンジが融合した楽曲。ロックとダンスミュージックの境界線を曖昧にするGarbageの特徴がよく出ている。
5. Cup of Coffee
アルバムの中でも最もエモーショナルな楽曲のひとつ。別れの後の喪失感を描いた歌詞がリアルで、シャーリー・マンソンのボーカルが痛切に響く。 シンプルながらも深い感情を込めた名曲。
6. Silence Is Golden
ダークでヘヴィなサウンドを持つ楽曲。静と動の対比が印象的で、「沈黙は金」というタイトルとは裏腹に、内なる怒りが爆発するような構成がユニーク。
7. Cherry Lips (Go Baby Go!)
本作の中でも最もポップでキャッチーな楽曲。パワーポップとエレクトロニカの融合による新しいGarbageのスタイルを示した一曲。 トランスジェンダー作家J.T.リロイの小説にインスパイアされた歌詞も特徴的。
8. Breaking Up The Girl
シンプルでストレートなロックチューン。アコースティックギターとエレクトロニックなアレンジが融合し、バンドの新たな側面を感じさせる楽曲。
9. Drive You Home
ダークなバラードで、マンソンのボーカルが際立つ楽曲。静かでミニマルなアレンジが、楽曲の切なさをより引き立てている。
10. Parade
エレクトロポップ的なサウンドが際立つナンバー。ポストパンク的なエッジと、エレクトロの軽快さがバランスよく共存している。
11. Nobody Loves You
トリップホップ的なムードが漂うダークな楽曲。エレクトロニカとロックの融合が見事で、アルバムの中でも特に実験的な一曲。
12. Untouchable
ダウンテンポのビートと浮遊感のあるシンセが絡み合う、ドリームポップ的な要素を持つ楽曲。
13. So Like a Rose
アルバムを締めくくる、美しくも悲しいバラード。シンプルなピアノとストリングスが、マンソンのボーカルを際立たせる。 アルバム全体を締めくくるにふさわしい、静かな余韻を残す楽曲。
総評
『Beautiful Garbage』は、Garbageが自らのサウンドを大胆に進化させた意欲作であり、オルタナティブ・ロックの枠を超えて、ポップ、エレクトロニカ、トリップホップ、パワーポップといった多様な要素を融合させた作品となっている。
当時の音楽シーンにおいては、このアルバムのスタイルはやや時代を先取りしすぎていた面もあり、商業的には前作ほどの成功を収めることはできなかったが、現在ではGarbageのディスコグラフィの中でも特に多様な音楽性を持つ作品として再評価されている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- No Doubt – Rock Steady（2001年）
オルタナティブ・ロックとエレクトロニカを融合させた作品で、Garbageのポップな側面と共鳴する。 - Bjork – Vespertine（2001年）
エレクトロニカとドリームポップの美しさが融合した作品。 - Goldfrapp – Black Cherry（2003年）
エレクトロニカとロックの融合をよりダンサブルに発展させたアルバム。 - Metric – Old World Underground, Where Are You Now?（2003年）
インディーロックとエレクトロニカの要素を持つ作品。 - Lana Del Rey – Born to Die（2012年）
ダークなポップとエレクトロニカの融合が、Garbageの『Beautiful Garbage』と通じる部分がある。
Garbageの音楽的探求心を感じさせる異色作であり、時間が経つほどに評価が高まるアルバム。
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