発売日: 2022年11月18日
ジャンル: アートポップ、バロックポップ、ドリームポップ
Weyes Blood(ナタリー・メリング)の5作目『And in the Darkness, Hearts Aglow』は、彼女の代表作である『Titanic Rising』の続編とも言えるアルバムで、現代社会の混乱と孤独、そしてその中に見出す希望を壮大な音楽で描いている。本作は、「技術による孤立がもたらした孤独感」というテーマを中心に据えながらも、リスナーに対して深い癒しと救いを提供する内容となっている。
サウンドは引き続きクラシックなバロックポップとドリームポップを融合させたもので、ストリングスやシンセサイザーを駆使した豪華なアレンジと、Weyes Bloodの透明感あるボーカルがアルバム全体を貫いている。壮大さと親密さが絶妙に交差するこの作品は、聴き手に深い感情の旅を提供し、現代の不安や喪失感に静かに寄り添う。
トラック解説
1. It’s Not Just Me, It’s Everybody
アルバムの幕開けを飾る壮大なバラード。ピアノとストリングスが織り成す穏やかなサウンドに乗せて、孤独感とつながりの希求をテーマに歌う。繰り返される「It’s not just me, it’s everybody」というフレーズが、現代の孤独感に共感を呼び起こす。
2. Children of the Empire
アップテンポなリズムと幻想的なシンセサウンドが印象的な一曲。歌詞には、技術や資本主義によって形作られた現代社会のアイデンティティが問いかけられている。開放的なメロディがアルバムに活気を与える。
3. Grapevine
ゆったりとしたテンポとノスタルジックなメロディが特徴の楽曲。過去の思い出や失われた愛を振り返るような詩的な歌詞が印象的。Weyes Bloodの柔らかなボーカルが胸を締め付ける。
4. God Turn Me Into a Flower
神秘的で瞑想的なトラック。アンビエントなサウンドとコーラスが融合し、楽曲全体にスピリチュアルな雰囲気を与えている。自然との一体感や自己変容のテーマが込められた歌詞が深い余韻を残す。
5. Hearts Aglow
タイトル曲にふさわしい感情的な楽曲。ストリングスとピアノを中心としたアレンジが美しく、愛と希望をテーマにした歌詞がリスナーの心を温かく包み込む。
6. And in the Darkness
アルバム中でも特に実験的なトラックで、アンビエントサウンドが広がりを持たせる。タイトルの「Darkness」が象徴する内省と孤独を音楽で表現している。
7. Twin Flame
ディスコやエレクトロポップの影響が感じられる楽曲。軽やかなリズムとシンセサウンドが特徴的で、アルバム全体に変化をもたらす。
8. In Holy Flux
短いインタールード的なトラックで、アルバム全体のムードをつなぎ合わせる役割を果たしている。アンビエントなサウンドスケープが印象的。
9. The Worst Is Done
軽快なテンポと暗い歌詞の対比が際立つトラック。世界の混乱を俯瞰しつつも、それを受け入れるような歌詞が印象的。アルバムの中でも特にメッセージ性が強い。
10. A Given Thing
アルバムのラストを飾る静かなバラード。Weyes Bloodのボーカルが前面に出たシンプルなアレンジが、アルバム全体を感動的に締めくくる。希望と再生を象徴するかのような歌詞が余韻を残す。
アルバム総評
『And in the Darkness, Hearts Aglow』は、Weyes Bloodが描く壮大で感情的な音楽世界の新たな章を示すアルバムである。孤独や現代社会の混乱といったテーマを扱いながらも、美しいアレンジと詩的な歌詞で希望と癒しを提供している。『Titanic Rising』の持つ壮大さとクラシックな美しさを引き継ぎつつも、さらに深く内面的なテーマに踏み込んだ本作は、Weyes Bloodの音楽的成熟を感じさせる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Titanic Rising by Weyes Blood
本作の前作で、クラシックなポップサウンドと現代的なテーマが融合した作品。壮大なアレンジと感情的な歌詞が魅力。
Norman Fucking Rockwell! by Lana Del Rey
現代社会をテーマにした感情的でドラマチックなアルバム。『And in the Darkness, Hearts Aglow』と同様に、美しいアレンジが楽しめる。
Have You in My Wilderness by Julia Holter
ドリーミーでアートポップ的なサウンドが特徴。Weyes Bloodの音楽性と共鳴する作品。
Divers by Joanna Newsom
詩的な歌詞とクラシックなアレンジが特徴のアルバム。『And in the Darkness, Hearts Aglow』の持つ物語性に通じる。
Carrie & Lowell by Sufjan Stevens
内省的なテーマと美しいメロディが印象的な作品。静けさの中に深い感情が宿る点で共通している。
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