発売日: 1993年10月18日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、アート・ポップ、ポップ・ロック
1993年にリリースされたTogether Aloneは、Crowded Houseの4枚目のスタジオアルバムであり、バンドのキャリアにおいて非常に重要な作品として知られる。本作では、新しいプロデューサーとしてユース（Youth、元Killing Jokeのベーシスト）を迎え、これまでのポップ・ロック中心の作風からより壮大で深遠な音楽性に踏み込んでいる。アルバムはニュージーランドのピハという海岸沿いの孤立したスタジオで録音され、自然環境や土地のスピリチュアルな影響が作品全体に色濃く反映されている。
アルバムのテーマは、孤独や再生、人生の儚さといった深い人間的な問題に根差している。フィンの歌詞はますます詩的かつ象徴的になり、サウンドもこれまで以上に重層的だ。アコースティックギターやピアノといったクラシックな楽器に加え、トライバルな打楽器やコーラスが使用され、神秘的で瞑想的なムードを生み出している。リードシングル「Distant Sun」やアルバムタイトル曲「Together Alone」など、静寂と爆発力が同居するこのアルバムは、バンドの音楽的なピークの一つとされている。
トラックごとの解説
1. Kare Kare
アルバムのイントロは、ニュージーランドの自然と文化に根ざした、静謐で美しい楽曲だ。ミニマルなギターと静かなボーカルがリスナーを引き込み、曲が進むにつれて広がりを見せる。タイトルはレコーディング地近くの地名に由来しており、アルバム全体のスピリチュアルなトーンを設定する役割を果たしている。
2. In My Command
力強いリズムとエッジの効いたギターリフが特徴的なアップテンポのロックナンバー。リリックでは権力とコントロールをテーマにしており、「You’re in my command」という繰り返しが威圧的でありながらもエモーショナルだ。
3. Nails in My Feet
シンプルなアコースティックギターから始まる、深い内省を感じさせるバラード。自己疑念や苦悩をテーマにした歌詞が心に刺さる。「Everywhere you go, you always take the weather with you」という有名なフレーズの内向的な進化形とも言える。
4. Black and White Boy
タイトルが示す通り、この曲はモノクロームな世界観を描きながら、エネルギッシュなロックサウンドが特徴的。リフレインのリズミカルなボーカルが、聴き手を鼓舞する。
5. Fingers of Love
叙情的で詩的なバラード。ギターのリバーブとフィンの感情豊かなボーカルが際立つ楽曲で、特に「Fingers of love move down」というラインが、感情の流れや愛の触覚的な表現を美しく描いている。
6. Pineapple Head
奇妙なタイトルとユーモアあふれる歌詞が特徴の楽曲。軽快なリズムと遊び心のあるメロディが、アルバム全体のシリアスなトーンを和らげる。フィンの息子の寝言がインスピレーションになったと言われる。
7. Locked Out
ギターが前面に出た、スピード感のあるロックナンバー。エネルギッシュな演奏と繰り返されるコーラスが耳に残る一方、歌詞には不安や混乱が垣間見える。
8. Private Universe
アルバムの中心的な楽曲で、自然と個人の内なる世界をテーマにしている。ゆったりとしたテンポとミニマルなアレンジが、瞑想的な雰囲気を生み出している。「I am in a private universe」という歌詞は、孤独と安らぎの両方を感じさせる。
9. Walking on the Spot
ピアノが美しいメロディを奏でるバラードで、停滞感や無力感をテーマにした歌詞が心に残る。シンプルながらも奥深い構成が特徴。
10. Distant Sun
アルバムの代表曲で、愛や喪失をテーマにしたエモーショナルな楽曲。「I don’t pretend to know what you want」というラインが、曖昧で複雑な感情を見事に捉えている。力強いギターとキャッチーなメロディが絶妙に融合した傑作だ。
11. Catherine Wheels
夢幻的で多層的なアレンジが特徴の曲。メロディラインが滑らかで、ボーカルのハーモニーが楽曲に幻想的な魅力を与えている。
12. Skin Feeling
ドラマーのポール・ヘスターがリードボーカルを務めるユニークな一曲。ロック的な要素が強く、バンド全体のダイナミズムが感じられる。
13. Together Alone
アルバムのタイトル曲であり、壮大でスピリチュアルな雰囲気が漂うエンディング。ニュージーランドのマオリのコーラスとトライバルな打楽器が楽曲を彩り、まるで儀式のような深い感動を与える。「Together alone」というフレーズが、孤独と繋がりの二重性を象徴している。
アルバム総評
Together Aloneは、Crowded Houseの音楽的冒険の集大成とも言える作品だ。これまで以上に多彩なアレンジとテーマに挑戦し、アルバム全体に深い内省と壮大さが漂う。本作は、単なるポップ・ロックアルバムを超え、スピリチュアルな体験を提供してくれる。特に「Distant Sun」や「Together Alone」のような楽曲は、バンドの成熟した音楽性を象徴しており、リスナーに強い印象を残す。このアルバムを通じて、Crowded Houseは聴き手をより深い音楽の世界へと誘っている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Automatic for the People by R.E.M.
深い内省と感情豊かなサウンドが共通。特にバラードの美しさが、Together Aloneと共鳴する。
Hounds of Love by Kate Bush
芸術性と感情表現が融合したアルバム。トライバルな要素や壮大なアレンジが、Together Aloneのファンに響く。
The Division Bell by Pink Floyd
瞑想的なトーンと壮大なテーマが共通。静と動が共存する音楽体験を楽しめる。
Avalon by Roxy Music
美しく洗練されたサウンドスケープが特徴。Together Aloneの神秘的な雰囲気に惹かれるリスナーにおすすめ。
Graceland by Paul Simon
多文化的な音楽要素と深いテーマが共通しており、Together Aloneのようなスピリチュアルな旅を感じられる。
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