
発売日: 2010年9月14日
ジャンル: インディー・ロック、オルタナティヴ・ロック、ポップ・パンク
2. 概要
『Majesty Shredding』は、ノースカロライナ州チャペルヒル出身のインディー・ロック・バンド、Superchunk が2010年に発表した9作目のスタジオ・アルバムである。
2001年の『Here’s to Shutting Up』以来、約9年ぶりとなる“復活作”であり、活動ペースを落としていたバンドが本格的にスタジオへ戻ってきたことを告げる一枚なのだ。
レーベルはもちろん、自身たちが運営する Merge Records。
レコーディングはノースカロライナ州ダーラムの Overdub Lane スタジオで行われ、エンジニア/プロデューサーは Scott Solter。
バンドは週末ごとにスタジオへ入り、ほぼライヴに近い形で一気に録っていくという手法を採用した。
その結果生まれたサウンドは、“若返った”というより、“かつての勢いを大人の精度で再構築した”と言うべきものだろう。
90年代初頭の『No Pocky for Kitty』『On the Mouth』を思わせるスピード感と、00年代以降のオルタナ〜インディー文脈を踏まえたアレンジの両方が、違和感なく同居している。
アルバム・タイトルの “Majesty Shredding” は、レコーディング時の内輪ネタから生まれたものだという。
バンドがテイクのチェックをしている際、ミスや粗さが気になったメンバーに対して、「そのへんは Pro Tools の “Majesty Shredding” プラグインで直せるよね」と冗談を言い合っていた。
“全部をそれっぽくカッコよくしてくれる架空のエフェクト” の名前が、そのままアルバム・タイトルになったわけである。
とはいえ、このアルバムは決して“修正だらけ”の作品ではない。
むしろソルターの提案により、曲の多くはライヴ一発録りの空気感を残したままテープに収められている。
その上で、ホーンやゲスト・ボーカル、ビオラなどを適度に加え、楽曲ごとの個性とスピード感を際立たせているのだ。
オープニングの「Digging for Something」には、The Mountain Goats の John Darnielle がコーラスで参加し、ホーン隊も加わる。
他にも「Fractures in Plaster」ではビオラが、いくつかの曲では厚めのコーラスがさりげなく配置され、90年代パンク寄りだった Superchunk のイメージに“広がり”を与えている。
批評家からの評価も高く、Metacritic では平均スコア83点の “universal acclaim” を獲得。
Pitchfork も8.0の高得点を与え、「10年ぶりとは思えないテンションのポップ・パンク・アンセム集」と評している。
さらに『Rolling Stone』誌の “2010年のベスト・アルバム30枚” にも選出されるなど、“ただの懐メロ的再結成”に終わらない現役感を見せつけた作品なのである。
3. 全曲レビュー
1曲目:Digging for Something
ブラス・セクションとコーラスを伴った「Digging for Something」が、アルバムの幕開けを高らかに告げる。
16ビート寄りに跳ねるドラム、タイトなギター・リフ、その上を滑っていくホーンが、夏の夜のストリートのような開放感を生み出している。
歌詞は、どこか中途半端な大人たちが、“何か”を探し続けて夜をさまよう姿を描いているように読める。
10代の焦燥ではなく、40代を目前にした人間の、“まだ終わりたくない”という執着とユーモアが滲むのだ。
The Mountain Goats の John Darnielle がコーラスで参加していることも象徴的である。
90年代オルタナ〜インディーを支えた顔ぶれが、2010年代の入り口で再び同じザ・バンドではなく“シーン”として鳴っている――そんな連帯感を感じさせるオープナーなのである。
2曲目:My Gap Feels Weird
「My Gap Feels Weird」は、タイトルからして少しひねくれている。
“ギャップが変な感じ”という曖昧な言葉は、心の距離、年齢差、あるいは時代とのズレなど、さまざまな差異を連想させる。
サウンドはまさに Superchunk 印のポップ・パンク。
ストレートなドラムと疾走するギター、そこに乗るメロディはキャッチーなのに、どこか “擦り傷のようなロマンチックさ” を帯びている。
Pitchfork がこのアルバム全体を「snarky bruised-romantic pop-punk anthems(皮肉と打ち身だらけのロマンティックさを湛えたポップ・パンク・アンセム)」と表現したのも、この曲を聴けば納得がいく。
歌詞世界では、軽口と自己ツッコミが混ざった一人称視点が続き、“ちょっとだけ居心地の悪い幸せ”のような感触が描かれている。
ここで鳴っているのは、若者の「こんな世界イヤだ」ではなく、経験を重ねた後の「それでもまだ好きなんだよな」という感情なのだ。
3曲目:Rosemarie
「Rosemarie」は、テンポをやや落とし、ギターのアルペジオと分厚いコードを組み合わせた中速ナンバーである。
ここでは、Mac の声の“少ししゃがれた甘さ”が存分に引き出されており、サビでの伸びやかなメロディはアルバム屈指のフックと言っていい。
主人公が語りかける “Rosemarie” は、特定の恋人とも、過去の自分自身とも読み取れる。
やや記憶のフィルターを通したような情景描写の中で、「あの頃の輝きはどこへ行ったのか?」という問いが静かに立ち上がる。
楽曲構成としては、前半のタメから後半にかけてギターが重なっていく王道のギター・ロックだが、
轟音にまで行き切らず、あくまで“歌が中心”に据えられているあたりに、2010年の Superchunk のバランス感覚がよく現れている。
4曲目:Crossed Wires
「Crossed Wires」は、タイトルそのまま “行き違った配線=コミュニケーション不全” をテーマにした疾走曲である。
2009年には同名シングルとしてもリリースされており、復活後の Superchunk を象徴する1曲と言ってよい。
イントロからいきなり走り出すギター・リフは、初期作を思わせるラフさを持ちながら、リズム隊のタイトさによって現在進行形のロックとして鳴らされている。
サビでのハモりはシンプルだが、声が重なる瞬間、長年のバンドならではの“身体で覚えたハーモニー”が立ち上がる。
歌詞では、電話線やケーブルといったモチーフが、気持ちの行き違いのメタファーとして用いられる。
過去の恋愛、バンド内のコミュニケーション、あるいはオーディエンスとの距離――どれに当てはめても成立する、多層的なテキストなのだ。
5曲目:Slow Drip
アルバム前半の山場の一つが、「Slow Drip」である。
タイトルが示すのは、“一気に崩壊するのではなく、少しずつ垂れ落ちていく何か”。
サウンドはミドル〜ややスロー寄りで、ギターはクランチ気味に抑えられ、ベースがじわじわとフレーズを刻む。
ドラムは細かいフィルで曲を煽るというより、むしろ淡々としたビートで“静かな焦燥”を支えている。
日常の中で少しずつ積もっていく不安や疲労、関係性のほころび。
それらはドラマチックな事件として爆発するのではなく、気づいたときには大きな染みになっている――
そんな感覚を、“Slow Drip” というコーヒーや水漏れを連想させる言葉で捉えている点が、いかにも Mac 的なセンスなのだと思える。
6曲目:Fractures in Plaster
「Fractures in Plaster」は、アルバムの中でもっとも内省的な1曲である。
タイトルを直訳すれば“石膏のひび割れ”であり、壊れかけた壁や仮の補修を連想させる。
テンポはゆったりしており、ギターのクリーンなアルペジオの上に、Kristen Beard のビオラが重なっていく。
このストリングスの導入は、70年代シンガーソングライター的な陰影をアルバムに持ち込んでおり、『Here’s to Shutting Up』のしっとりしたムードとも響き合う。
歌詞世界では、時間の経過とともに入ってしまった“ひび”をどう扱うかが描かれる。
完全に壊して建て直すのか、それとも誤魔化しながら住み続けるのか。
人生やバンド活動を、そのまま家のメタファーとして読めるところが面白い。
アルバム全体の“走る”印象の中で、ここで一度立ち止まり、これまでの9年間を振り返る――
そんな役割を担っている楽曲である。
7曲目:Learned to Surf
「Learned to Surf」は、2009年のEP『Leaves in the Gutter』で既に発表されていた曲のアルバム・ヴァージョンである。
サウンドは再びテンポを上げたギター・ロックで、シンプルなコード進行と、耳に残るコーラスが心地よい。
“波乗りを覚えた”というタイトルは文字通りのサーフィンというより、“変化の激しい状況の中でバランスを取る術を身につけた”という意味合いが強いように思える。
長いブランクを経て、再びツアーやレコーディングを行うバンドにとって、“Learned to Surf” はまさに自己紹介的なテーマソングといえる。
昔と同じ海に戻ってきたのではなく、別の潮目の中で、もう一度波に乗るやり方を身につけた――そんな再起のニュアンスが込められているのだ。
8曲目:Winter Games
「Winter Games」は、タイトル通り“冬”の情景が漂うナンバーである。
ギターはややリヴァーブ多めに響き、ドラムはタムのニュアンスを生かしたビートで、冷たい空気とにじむ街灯のようなイメージを作り出す。
歌詞は、スポーツの大会をそのまま描くというより、“冬のあいだに繰り広げられるささやかなゲーム=人間関係”を描いているようにも読める。
もしくは、“シーズンが終わるまでの仮初めのルール”としての恋愛や友情、と言い換えてもいいかもしれない。
サビでのメロディは抜けが良く、どこかアンセミックにも響くが、壮大な大合唱にまでは広げず、あくまでバンド4人のスケールのまま鳴らしている。
そこに、このアルバム全体の“等身大のスケール感”がよく現れている。
9曲目:Rope Light
「Rope Light」は、アルバムでもっとも短い部類の、ギュッと凝縮されたパンク・チューンである。
タイトルにある “Rope Light” は、パーティーの飾り付けにも使われる細長い照明のことだが、どこか危なっかしい電源コードや首に絡まるロープなど、よりダークなイメージも想起させる。
その多義性ゆえに、楽曲のスピード感と相まって、一瞬のきらめきと危うさが同時に立ち上がるのだ。
サウンド面では、90年代初期の Superchunk に直結するようなラフなギターと前のめりのリズムが復活している。
しかし録音やミックスは格段に洗練されており、“昔と同じではないが、昔の良さを理解した上での再訪”という印象を残す。
10曲目:Hot Tubes
「Hot Tubes」は、タイトなビートと軽く歪んだギター・リフが絡むロック・チューンで、アルバム終盤の加速ポイントになっている。
“Hot Tubes” という言葉は、真空管アンプの“熱いチューブ”など音楽機材を連想させると同時に、
高温のジャグジーや、熱気に包まれたライヴハウスの空気など、“温度の上がりすぎた空間”のイメージとも重なる。
歌詞では、勢いに任せて突っ走ってきた時間の代償や、身体のきしみもちらりと顔を出す。
それでもバンドは“もう一度ボリュームを上げる”ことを選ぶ――そんな諦めきれない感覚が、この曲のドライヴ感に刻み込まれているように思える。
11曲目:Everything at Once
ラストを飾る「Everything at Once」は、アルバム全体のテーマを総括するようなアンセムである。
“全部を一度に”というフレーズは、若い頃の「全部欲しい」という欲望とも、
大人になってからの「時間も体力も有限なのに、まだやりたいことが山ほどある」というジレンマとも読み取れる。
サウンドは、これまでの楽曲で提示してきた要素――スピード感、ギター・オーケストレーション、コーラス、少しだけ滲むセンチメント――を
バランスよく凝縮したギター・ロックで、最後のサビに向けて緩やかに高まっていく構成になっている。
アルバムは、派手な終幕ではなく、「まだやれる」「まだ終わらない」という感覚を残したままフェードアウトする。
それは、“復活作”としての『Majesty Shredding』の決意表明そのものなのだろう。
4. 総評
『Majesty Shredding』は、Superchunk のキャリアにおいて非常に重要な、そして少し特別な位置を占めるアルバムである。
90年代にインディー・ロックの象徴的存在として走り続けたバンドが、2000年代前半に活動ペースを落とし、
EP やシングルを挟みながらも長らくフル・アルバムを出さなかった――その空白を埋める形で登場した作品だからだ。
通常、長いブランクの後にリリースされる作品には、“昔の焼き直し”か“無理な路線変更”という二極化した評価が付きまといやすい。
だが『Majesty Shredding』は、そのどちらにも安易に転ばない。
Merge のオンライン解説が述べるように、“決して完全な原点回帰でもなく、かといって大胆な変身でもない、20年分のキャリアを41分に圧縮した作品”として機能しているのである。
サウンド面での特徴は、まずテンポの速さと曲順の密度にある。
Scott Solter とともに Overdub Lane で進められたレコーディングは、ライヴ感を重視したもので、曲間やアレンジの“間延び”が徹底的に削ぎ落とされている。
Washington Post は本作について「パンク・ロック然としたサウンドと relentless pacing(息つく暇のないペース)を狙った」と Mac のコメントを紹介しているが、実際その言葉通りのアルバムに仕上がっている。
一方で、ただスピードに任せたラフなアルバムかといえば、そうではない。
「Fractures in Plaster」のビオラや、「Digging for Something」でのホーンと John Darnielle のコーラスに象徴されるように、
必要最小限の装飾が的確なポイントで差し込まれており、“成熟したインディー・バンド”としての耳の良さが発揮されている。
2000年代後半〜2010年代初頭のインディー・ロック・シーンを振り返ると、
Dinosaur Jr.『Beyond』、ポスト・ハードコア勢の再始動、Pavement 再結成ツアーなど、“第二幕”を迎えるバンドが数多く存在していた。
その中で Superchunk は、『Majesty Shredding』を“回顧”ではなく、“今のシーンの中で普通に戦えるロック・アルバム”として提示した点で、非常にユニークである。
実際、Metacritic での高得点や、Rolling Stone/The Guardian/Drowned in Sound などからの好意的なレビューは、
単なる“90年代の英雄へのご祝儀”ではなく、2010年の作品として純粋に評価された結果といえるだろう。
歌詞面でも、初期のような青春の爆発や片想いの焦燥ではなく、
家庭や仕事、加齢、社会との折り合いといった、より“アフター30”なテーマが自然に織り込まれている。
それでも曲の多くがアンセムとして機能しているのは、Mac の書くメロディが相変わらず強く、
しかもそのメロディが、年齢を重ねたリスナーに対しても“いまの自分事”として響く言葉を伴っているからだ。
また、チャート面で見ると、本作は Superchunk にとって初めて Billboard 200 にチャートインした作品となり、
インディー・シーンでの評価に加え、ある程度の商業的成功も手にしている。
これは、Merge Records のレーベル運営経験と、00年代インディー・ブームの蓄積が結びついた結果とも言えるだろう。
『Majesty Shredding』は、“伝説的バンドの復活作”というラベルだけでは語り尽くせない。
むしろ、“長く続けてきたインディー・バンドが、ある地点でどのように自分たちのフォーミュラをアップデートしうるのか?”という問いに対する、一つの模範解答のような作品なのである。
現在 Superchunk に興味を持ったリスナーが、90年代の名盤群と並べて最初に手に取るべき1枚として、非常におすすめできるアルバムだ。
5. おすすめアルバム(5枚)
- No Pocky for Kitty / Superchunk(1991)
Superchunk 初期の代表作。
『Majesty Shredding』のスピード感やパンク寄りの衝動の“原石”がここにあり、両者を聴き比べると、バンドが20年かけて粗さをどのように洗練へ変えていったかがよく分かる。 - Here’s Where the Strings Come In / Superchunk(1995)
メロディ重視のギター・ポップ路線が押し出された中期の名作。
『Majesty Shredding』に通じるキャッチーさと、もう少し若さゆえの不安定さが共存しており、バンドの黄金期を知るうえで外せない一枚である。 - I Hate Music / Superchunk(2013)
『Majesty Shredding』以降の“復活第二幕”のなかでも特に評価の高い作品。
加齢や喪失といったテーマをより正面から扱いながら、サウンドはなおもポップ・パンク的な勢いを保っており、本作との連続性が強い。 - Beyond / Dinosaur Jr.(2007)
同じく90年代オルタナの雄による“見事すぎる再始動作”。
歪んだギターとメロディ・センスが、ブランクを感じさせないどころか、むしろ研ぎ澄まされて帰ってきた例として、『Majesty Shredding』と並べて聴くと面白い。 - The Monitor / Titus Andronicus(2010)
2010年前後のインディー・ロックが持っていた“過剰な熱量”を象徴するアルバム。
Superchunk のようなベテランと、こうした若いバンドが同じ年に名盤を出していたことを知ると、この時期のロック・シーンの豊かさが見えてくる。
6. 制作の裏側
『Majesty Shredding』のレコーディングは、ノースカロライナ州ダーラムの Overdub Lane スタジオにて行われた。
バンドは日々の仕事や家族との生活をこなしながら、週末ごとにスタジオへ集合し、短期間のセッションを積み重ねる形で制作を進めたという。
プロデューサー/エンジニアを務めた Scott Solter は、ポストロックやインディー・フォーク周辺の作品でも知られる人物で、
彼の手腕により、Superchunk のラフなエネルギーと、現代的な音像のバランスが巧みに取られている。
Overdub Lane での録音後、ミックスはノースカロライナ州 Unionville の Baucom Road スタジオで行われ、
マスタリングはボストンの Peerless Mastering(Jeff Lipton)で仕上げられた。
録音方法としては、“可能な限りライヴに近い状態で録る”ことが重視された。
いくつかの曲はほぼ一発録りで、その上に必要最低限のオーバーダブを乗せていくというスタイルである。
バンド自身も、「ライヴで演奏しているような勢いをそのままパッケージしたかった」と語っており、“Majesty Shredding” というタイトルの冗談とは裏腹に、
実際には Pro Tools 的な編集よりも、演奏そのもののダイナミクスに賭けた作品なのだ。
ゲスト参加も興味深い。
「Digging for Something」における John Darnielle のコーラスやホーン隊は、単なる“豪華ゲスト”ではなく、
チャペルヒル〜ダーハム周辺のインディー・コミュニティのつながりを象徴する存在として機能している。
ビオラの Kristen Beard も含め、“ローカルの信頼できる仲間たち”を集めて録ったアルバムという側面が強い。
さらに、このアルバムは Superchunk にとって初めて、歌詞がライナーノーツとしてフル掲載された作品でもある。
Mac はインタビューで、「今回は歌詞を読んでもらうことをより意識した」と語っており、
そのことが、日常描写や人生の機微により踏み込んだテキストへとつながっているのかもしれない。
9. 後続作品とのつながり
『Majesty Shredding』の成功は、単に一枚のアルバムの評価に留まらず、その後の Superchunk の活動を大きく方向付けた。
2013年には10作目『I Hate Music』がリリースされ、加齢や喪失、死といったテーマを扱いながらも、依然として高いテンションのギター・ロックを響かせた。
2018年の『What a Time to Be Alive』では、政治的な不安や社会情勢への苛立ちが前面に出てくる。
ここでも、『Majesty Shredding』で再確認された“パンキッシュな勢い”が、プロテスト・ソング的な文脈に接続されている。
2022年の『Wild Loneliness』、そして2025年の『Songs in the Key of Yikes』に至るまで、
Superchunk は現役のまま時代と向き合い続けており、その最新作についてのレビューでも、
“この連鎖は2010年の『Majesty Shredding』から始まった”と位置づけられている。
また、シングルやレア音源を集めたボックスセット『Misfits & Mistakes: Singles, B-Sides & Strays 2007–2023』では、
『Majesty Shredding』期のアウトテイクやB面曲も含め、復活以降の軌跡がまとめられている。
こうして見ると、『Majesty Shredding』は決して“たまたま上手くいったカムバック作”ではない。
むしろその後10年以上にわたるクリエイティブな活動の土台となる、“第二章の第1話”として機能しているのだ。
Superchunk の近作から好きになったリスナーにとっても、ここへ遡って聴き直すことで、バンドの現在進行形のモードがどのように始まったかを確認できるはずである。
参考文献
- Wikipedia “Majesty Shredding”(作品基本情報、リリース日、プロデューサー、評価、チャートなど)
- Superchunk Bandcamp “Majesty Shredding”(トラックリスト、録音/ミックス/マスタリング・クレジット、ゲスト・ミュージシャン)
- Wikipedia “Superchunk”(バンドの活動史、ディスコグラフィ、EP『Leaves in the Gutter』との関係)
- Bandcamp “Leaves in the Gutter”(「Learned to Surf」の先行EP収録情報)
- Pitchfork “Superchunk: Majesty Shredding Album Review”(アルバムの評価、サウンドと歌詞への言及)
- Drowned in Sound “Album Review: Superchunk – Majesty Shredding”(ポップ・パンク的側面の評価)
- The Guardian “Superchunk: Majesty Shredding – review”(パンク的直接性とツイン・ギターの緻密さに関する指摘)
- Washington Post “Shredding Expectations: Superchunk, ‘Majesty Shredding,’ at 9:30 Club”(Overdub Lane での週末セッション、サウンドの狙いに関するインタビュー)
- Delaware Public Media “Superchunk: Rock ’N’ Roll For Young And Old”(歌詞が初めてライナーノーツに全文掲載された経緯)
- One Good Minute “Superchunk’s Majesty Shredding – The Truth Behind the Title”(“Majesty Shredding” というタイトルの由来となった Pro Tools ジョークについて)



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