発売日: 1985年8月5日
ジャンル: ハートランドロック / アルバムロック / ルーツロック
『Scarecrow』は、ジョン・クーガー・メレンキャンプがリリースした8枚目のスタジオアルバムであり、彼のキャリアにおける重要な転機を象徴する作品である。本作は、彼のハートランドロックのスタイルを確立すると同時に、社会的メッセージや農村文化への深い思い入れを描き出した意欲作だ。「Small Town」や「Rain on the Scarecrow」を含むこのアルバムは、ジョン・メレンキャンプの代表作の一つであり、彼の音楽的な成熟を示している。
アルバム全体を通して、アメリカ中西部の農村の衰退や労働者階級の現実といったテーマが取り上げられており、ジョン自身のルーツへの回帰が強く感じられる。サウンド面でも、シンプルながらも力強いギターリフと控えめなプロダクションが特徴で、メッセージ性を際立たせている。アルバムは商業的にも成功を収め、アメリカでマルチプラチナの売り上げを記録した。
- 全曲解説
- 1. Rain on the Scarecrow
- 2. Grandma’s Theme
- 3. Small Town
- 4. Minutes to Memories
- 5. Lonely Ol’ Night
- 6. The Face of the Nation
- 7. Justice and Independence ‘85
- 8. Between a Laugh and a Tear
- 9. Rumbleseat
- 10. You’ve Got to Stand for Somethin’
- 11. R.O.C.K. in the U.S.A. (A Salute to ‘60s Rock)
- 12. The Kind of Fella I Am
- アルバム総評
- このアルバムが好きな人におすすめの5枚
全曲解説
1. Rain on the Scarecrow
アルバムの幕開けを飾るパワフルな楽曲。農場経営者が直面する経済的な困難をテーマにした歌詞は、ジョンの社会的意識を象徴している。激しいギターリフとダークなサウンドが、曲のテーマと見事に調和している。
2. Grandma’s Theme
短いインストゥルメンタルトラックで、ノスタルジックなアコースティックギターが中心。アルバムのテーマである過去への回帰や家族の絆を示唆するイントロダクションとして機能している。
3. Small Town
ジョン・メレンキャンプの代表曲の一つで、彼自身の故郷であるインディアナ州の小さな町での生活を歌った楽曲。シンプルでキャッチーなメロディと、希望に満ちた歌詞が聴く者の心に残る。
4. Minutes to Memories
人生の旅路と年老いることの意味を描いた楽曲。語りかけるような歌詞とシンプルなアレンジが、深い感動を呼ぶ。特に「An honest man’s pillow is his peace of mind」というフレーズが印象的だ。
5. Lonely Ol’ Night
恋愛の孤独と希望を描いたミッドテンポのロックバラード。ブルースの要素を取り入れたギターリフと、メレンキャンプの力強いボーカルが楽曲を引き立てている。
6. The Face of the Nation
政治的メッセージを込めたナンバー。失業や経済的な不安が広がるアメリカ社会を批評する内容で、力強い演奏とシリアスな歌詞が印象的。
7. Justice and Independence ‘85
アメリカの建国理念と現代の現実とのギャップを描いた楽曲。軽快なリズムとシンセサウンドが曲の中に彩りを加えつつも、テーマはシリアス。
8. Between a Laugh and a Tear
フォーク調のバラードで、リッキー・リー・ジョーンズとのデュエットが特徴。感傷的なメロディと歌詞が心に響き、アルバムの中でも特に叙情的な一曲。
9. Rumbleseat
軽快なテンポのロックナンバーで、ジョン・メレンキャンプのエネルギッシュな一面を感じさせる。サウンドの楽しさとは対照的に、歌詞はノスタルジックである。
10. You’ve Got to Stand for Somethin’
力強いメッセージ性を持つ楽曲。人生における信念の重要性を歌った内容で、ジョンの真摯な人間性が伝わる。
11. R.O.C.K. in the U.S.A. (A Salute to ‘60s Rock)
1960年代のロックへのオマージュを捧げた楽曲。明るくノリの良いロックンロールサウンドが特徴で、アルバムの中でも特に軽快で楽しい一曲。
12. The Kind of Fella I Am
ブルース色が濃いトラックで、ジョンのパーソナルな一面を垣間見ることができる。楽器の控えめなアレンジが歌詞にフォーカスを当てている。
アルバム総評
『Scarecrow』は、ジョン・メレンキャンプがアーティストとしての信念を確立し、アメリカの現実に真正面から向き合った作品である。特に「Rain on the Scarecrow」や「Small Town」といった楽曲では、彼の故郷や労働者階級への思いが深く刻まれており、社会的メッセージ性と個人的な物語が見事に融合している。ハートランドロックの金字塔といえる本作は、ジョン・メレンキャンプのキャリアにおける最高傑作の一つとして語り継がれている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Lonesome Jubilee by John Mellencamp
『Scarecrow』の後にリリースされたアルバムで、さらにフォークやカントリーの要素を取り入れた作品。
Born in the U.S.A. by Bruce Springsteen
アメリカの中流階級の現実を描いたアルバムで、ジョン・メレンキャンプの社会的テーマと共鳴する。
Full Moon Fever by Tom Petty
ハートランドロックの名盤。シンプルでキャッチーなサウンドがジョン・メレンキャンプのスタイルに似ている。
Harvest by Neil Young
アメリカの田園風景と労働者階級を描いたアルバムで、『Scarecrow』のノスタルジックな要素が好きな人におすすめ。
Wrecking Ball by Emmylou Harris
フォークやカントリーの深みを感じさせる作品で、ジョン・メレンキャンプのルーツ志向のサウンドに近い。
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