発売日: 1991年8月
ジャンル: インディーロック、ローファイ、オルタナティブロック
Sebadohの3枚目のアルバム『III』は、1990年代初頭のローファイインディーロックシーンにおける重要な作品の一つだ。バンドの中心人物であるルー・バーロウとジェイソン・ロウリー、そして新メンバーのエリック・ガフィーによる多彩な楽曲が詰まったこのアルバムは、感情の生々しさとDIY精神が前面に押し出された内容となっている。
バンドは、ハスカー・ドゥやダイナソーJr.（ルー・バーロウが元メンバー）から影響を受けた轟音ギターやポップなメロディを基盤にしつつ、独自の感傷的で荒削りなサウンドを作り上げている。アルバム全体には、ノイジーなギターサウンドとメロディックな美しさが混在しており、ローファイ特有の親密さと多様性に溢れている。
各曲解説
1. The Freed Pig
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、ルー・バーロウがダイナソーJr.を離れた後の複雑な感情を吐露したもの。辛辣な歌詞とキャッチーなギターメロディが印象的で、バンドの新たな方向性を示している。
2. Sickles and Hammers
アコースティックなイントロが特徴のトラック。静と動のコントラストが見事で、感傷的な歌詞がアルバム全体のムードを深めている。
3. Total Peace
ジェイソン・ロウリーによる短くもインパクトのあるトラック。ノイジーなギターとシンプルな構成がローファイの魅力を体現している。
4. Violet Execution
リバーブの効いたサウンドと暗い歌詞が印象的な楽曲。エモーショナルな歌唱が楽曲に深みを与えている。
5. Scars, Four Eyes
即興的で実験的な雰囲気が漂うトラック。曲全体がカオスの中にある秩序を感じさせる。
6. Spoiled
メロディックなギターリフが特徴の楽曲で、内向的なテーマを持つ歌詞が心に刺さる。
7. Smoke a Bowl
バンドの遊び心が感じられる一曲で、自由な精神が反映された構成が面白い。
8. Happily Divided
美しいアコースティックギターのアルペジオが印象的な楽曲。静かな中にも感情の波が感じられる。
9. Kath
短いながらも強烈な印象を残すパンク的なトラック。疾走感のある演奏が耳に残る。
10. Perverted World
アルバムの中でも特に内省的な楽曲で、暗いテーマと幻想的なサウンドが独特の雰囲気を作り出している。
11. As the World Dies, the Eyes of God Grow Bigger
アルバムの中でも最も実験的なトラック。音響的な冒険心が感じられ、バンドの多様性を象徴している。
12. Rockstar
タイトル通り、ロックンロール的なエネルギーが炸裂する楽曲。ダイナミックな構成が楽しめる。
13. Downmind
沈鬱な雰囲気と反復的なメロディが印象的な一曲。ノイジーなサウンドの中に漂う美しさが際立つ。
14. Supernatural Force
アルバムの後半を引き締めるダイナミックなトラック。荒削りながらも力強い演奏が魅力的だ。
15. Three Times a Day
温かみのあるアコースティックギターが主体の楽曲で、シンプルながらも心に響く歌詞が特徴。
16. Got It
パンクの影響が感じられる短いトラックで、勢いのある演奏がアルバムの流れを加速させる。
17. Slave
エモーショナルな歌詞とメロディが光るトラックで、アルバムを感動的に締めくくる。
アルバム総評
『III』は、SebadohのDIY精神と感情的なアプローチが存分に詰まったアルバムだ。多様な楽曲構成とローファイの荒削りな音質が、親密でありながらも実験的な音楽体験を提供している。特に「The Freed Pig」や「Spoiled」のような楽曲は、キャッチーでありながらも深い感情を秘めており、Sebadohの魅力を象徴している。オルタナティブロックのファンだけでなく、感情的で個人的な音楽を求めるリスナーにとっても必聴の一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Bee Thousand by Guided by Voices
ローファイインディーロックの代表作で、Sebadohと同様のDIY精神が感じられる。
Bakesale by Sebadoh
『III』に続くSebadohの名作。より洗練されたサウンドとキャッチーな楽曲が揃っている。
Crooked Rain, Crooked Rain by Pavement
ローファイとキャッチーさを融合させたアルバムで、『III』のファンにぴったり。
Pinkerton by Weezer
感情的な歌詞とローファイ要素が感じられるアルバムで、Sebadohの内向的な魅力と重なる部分がある。
On Fire by Galaxie 500
ミニマルで感傷的な音楽性が特徴のアルバムで、『III』の静かな瞬間に共通点を感じる。
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