発売日: 2021年4月30日
ジャンル: サイケデリック・ポップ, インディー・ロック, ドリームポップ
Crumbの2枚目のフルアルバムIce Meltは、2021年にリリースされ、バンドがさらに深みを増したサイケデリックでドリーミーな音世界を展開している。このアルバムでは、環境や人間の脆さといったテーマが強く打ち出され、Jinxからさらに進化した多層的なサウンドが特徴だ。リラ・ラミーニックの柔らかなボーカルは、空間を漂うようにエフェクトが効かされ、ダークなベースラインやゆったりとしたドラムが、幻想的でありながらも冷たく鋭いムードを醸し出している。
アルバム全体に、変わらない日常とそこに潜む不安、自然への恐れと畏敬の念が反映されており、どの楽曲にも緊張感が漂う。Ice Meltは、Crumbが環境や自己と向き合い、夢のようなサウンドスケープの中で現実世界のテーマを映し出している作品で、聴き手を深い思索へと誘う。
曲ごとの解説
1. Up & Down
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、ミニマルでダークなビートにのせて、浮遊感のあるボーカルがゆっくりと展開される。リズムがシンプルながらも力強く、ラミーニックの囁くようなボーカルが不安感をかき立てる。日常の揺れ動く心情が反映された一曲。
2. BNR
ファンキーなベースラインが印象的なトラックで、エフェクトの効いたギターが幻想的なサウンドを作り出す。ラミーニックのボーカルが曲全体を包み込み、周囲のノイズから逃れることをテーマにしたような歌詞が、非現実的でメランコリックなムードを生み出している。
3. Seeds
ゆっくりと流れるメロディと静かなビートが心地よく、成長や変化を象徴する歌詞が浮かぶ。ラミーニックのボーカルが柔らかく響き、自然の力とそこに潜む不安を感じさせる。シンプルでありながらも深いメッセージが伝わる一曲。
4. L.A.
アルバムの中でも特に軽快なナンバーで、リズムの変化が心地よい。都会の喧騒や孤独感がテーマで、ギターとベースの絡みが絶妙。歌詞には都会での孤独と疎外感が感じられ、リズミカルでありながらもメランコリックな雰囲気が漂う。
5. Gone
ダークでスローなテンポが特徴で、不安感と静寂が共存する一曲。エフェクトが効いたベースとリズムが重なり合い、ラミーニックの囁くようなボーカルが、存在の儚さや消え去るものへの悲しみを表現している。
6. Retreat!
テンポが速く、ファンキーなリズムとサイケデリックなギターが曲を彩る。逃避や現実からの距離感がテーマで、エネルギッシュなサウンドが異彩を放つ。異世界に入り込むような錯覚を起こさせる、不安と興奮が交錯する楽曲。
7. Tunnel (all that you had)
静かでダークな曲調が心に残る一曲で、トンネルの中を進むような感覚が味わえる。閉塞感と解放感の間で揺れるメロディが、不安や焦燥感を映し出している。ミステリアスでありながらも心に響く歌詞が印象的だ。
8. Elevation
エレクトロニックなサウンドが強調され、浮遊感のあるリズムが心地よい。高みを目指す気持ちと現実の厳しさが歌われており、シンプルなメロディとラミーニックの優しいボーカルがアルバムの雰囲気を引き立てている。
9. Ice Melt
タイトル曲であり、アルバムのテーマを象徴する一曲。静かで冷たいサウンドが曲全体を包み込み、環境の変化とそこに生きる人間の脆さが描かれている。サウンドスケープが広がり、緩やかに崩れゆく自然や自己を感じさせる、深く考えさせられるトラック。
アルバム総評
Ice Meltは、Crumbがサイケデリックなドリームポップのスタイルをさらに深化させ、環境問題や人間の脆さといったテーマに向き合ったアルバムだ。浮遊感のあるサウンドとラミーニックの内省的なボーカルが、現実と夢の境界を曖昧にしながら、リスナーを冷たい幻想世界へと誘う。前作Jinxからの進化が感じられ、バンドの音楽的な視野が広がった一枚である。Crumbの作品の中でも特にダークで深い内面に迫るIce Meltは、リスナーに新たな発見と深い余韻を残す。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- No Shape by Perfume Genius
内省的でドラマティックなサウンドが特徴の作品。Crumbのダークで深い音楽性が好きな人に響く。
- Mild High Club by Skiptracing
ジャズとサイケデリックを融合させた独特のサウンドが魅力で、Crumbファンにとっても心地よい一枚。
- Hot Dreams by Timber Timbre
ダークでミステリアスな雰囲気が漂う作品で、Ice Meltの持つ内省的なサウンドと共通する部分がある。
エモーショナルで深みのあるサウンドが印象的で、Crumbのファンにも共感を呼ぶ内面性が表現されている。
- I’m All Ears by Let’s Eat Grandma
サイケデリックとエレクトロポップが融合した作品。Crumbと同様に多層的なサウンドが楽しめる。
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