発売日: 2019年6月14日
ジャンル: サイケデリック・ポップ, インディー・ロック, ドリームポップ
CrumbのデビューアルバムJinxは、2019年にリリースされ、バンドが築き上げたサイケデリックでドリーミーなサウンドの世界観をさらに広げた作品だ。リラ・ラミーニックの浮遊感あるボーカルが、ゆったりとしたベースラインと絡み合い、幻想的でノスタルジックなムードが漂っている。Jinxには、ジャズ、ファンク、ドリームポップの影響が巧みに融合されており、サイケデリックな音楽性が深まるとともに、ダークで内省的なテーマが楽曲に反映されている。
このアルバムは、エモーショナルでミステリアスな音楽体験をリスナーに提供し、時に不穏で神秘的な雰囲気が聴く者を引き込む。前作のEPに比べ、Jinxではより構築されたサウンドスケープが展開され、Crumbのアーティスティックな成長が感じられる。
曲ごとの解説
1. Cracking
アルバムのオープニングを飾るこの曲は、静かなビートと緩やかなベースラインが特徴的。ラミーニックのソフトなボーカルが、壊れそうなほど繊細に響く。重層的なサウンドが、心の内側に潜む感情を掘り起こすようで、アルバムのミステリアスな雰囲気を早々に提示している。
2. Nina
軽やかで浮遊感のあるリズムが、聴く者を夢の中に連れ込むような一曲。歌詞には人間関係の曖昧さや不確実さがテーマにされ、リラのボーカルが透明感をもってその心情を伝えている。控えめなギターリフが幻想的で、曲全体が柔らかく包み込むようなサウンドに仕上がっている。
3. Ghostride
ファンキーなリズムと重厚なベースラインが特徴のナンバー。日常の中で感じる孤独や不安が歌われており、歌詞とサウンドが一体となって聴き手を魅了する。サイケデリックなエフェクトと、どこかスリリングな展開が印象に残る楽曲である。
4. Fall Down
ギターのリフがメロディを引っ張り、夢見心地な雰囲気が漂う曲。ラミーニックのボーカルが、静かで控えめながらも情緒的に響き、崩れ落ちるような感覚が表現されている。柔らかいサウンドが心地よく、リスナーに安らぎを与える一曲だ。
5. M.R.
ダークでメランコリックな雰囲気が漂う一曲で、内省的な歌詞が特徴的。ジャズの要素が盛り込まれたサウンドは、ゆったりとしたテンポの中に緊張感が漂い、リスナーを心の深みに引き込むような感覚を生む。
6. The Letter
この曲は、心の中の葛藤や思い出が歌われており、淡々としたギターのフレーズとともに進行する。リラのボーカルが静かに語りかけるようで、懐かしさと切なさが交錯する。シンプルな編曲が楽曲のメッセージを引き立て、聴く者の心に訴えかける。
7. Part III
アルバムのハイライトとも言える曲で、サイケデリックなサウンドが全体を包み込む。軽やかなリズムとエフェクトがかかったギターが浮遊感を生み出し、どこか遠く離れた場所にいるような錯覚を起こさせる。ラミーニックのボーカルが切なく響き、深い余韻を残す。
8. And It Never Ends
ダークで不穏な雰囲気が漂う一曲で、アルバムのクライマックスにふさわしい構成。日常の繰り返しと変わらない現実を歌う歌詞が心に響く。ギターとベースが重なり合い、圧倒的な静寂の中に浮かぶような感覚が印象的だ。
9. Jinx
アルバムのタイトル曲であり、最後を締めくくる一曲。呪い(Jinx)を象徴するような重苦しい雰囲気が漂い、エフェクトがかかったギターと低音が不穏な空気を醸し出す。フォガティの低く穏やかなボーカルが、不安と共感をリスナーに与える。アルバム全体を通じて描かれたテーマを集約し、Crumbの音楽的な進化と独自のスタイルを印象付けるエンディングとなっている。
アルバム総評
Jinxは、Crumbが持つサイケデリックな魅力と内省的なテーマをより深く探求した作品であり、彼らの音楽的成長が感じられるアルバムだ。ラミーニックの繊細なボーカルと浮遊感のあるサウンドが、日常の憂鬱や心の不安を表現し、ミステリアスでありながらも心地よい感覚をリスナーに与える。このアルバムは、夢と現実の境界線を曖昧にし、聴き手を深い音の世界へと誘う。Crumbが創り出した音楽的な旅は、リスナーにとっても新しい発見と共感を提供するだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
メランコリックで夢見心地なサウンドが魅力の一枚。Jinxの内省的な雰囲気が好きなリスナーには、深い共鳴が感じられる。
ポップでありながらも幻想的なサウンドが特徴。Jinxのドリーミーでサイケデリックな要素に共通点があり、耳に残るメロディが印象的。
リラックスしたサウンドと独特の浮遊感が魅力。Jinxと同様にメランコリックな歌詞とサウンドが心に残る。
サイケデリックポップの代表的な一枚。Crumbと同様、幻想的で深い音の世界が楽しめる。
- Hot Dreams by Timber Timbre
ダークでミステリアスな雰囲気が漂うアルバムで、Jinxの持つ不穏さや内省的な側面と共通する一枚。
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